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『ニンゲン御破算』に再び挑む阿部サダヲにインタビュー! 松尾スズキ唯一の伝説の時代劇が再降臨

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大人計画主宰の松尾スズキが十八代目中村勘三郎(初演時は中村勘九郎)とタッグを組み、初めて時代劇の舞台作品に挑んだ『ニンゲン御破算』(2003年の初演時のタイトルは『ニンゲン御破産』)が、大幅にキャストを変えて15年ぶりに蘇ることになった。幕末を舞台に、元・侍で狂言作者を志す加瀬実之介を中心にした、笑いあり、ドラマあり、チャンバラあり、ファンタジーあり、愛も毒も切なさも哀しさもあらゆる感情を盛りだくさんにして構成する松尾流のエンターテインメントとなる。かつて勘三郎が演じた主人公・実之介に今回扮するのは、大人計画の看板役者である阿部サダヲだ。初演時は侍に憧れて故郷の村を出てきたマタギの兄弟の弟・灰次を演じていた阿部、今回の再演では勘三郎とは一味も二味も違う魅力を輝かせ、まったく違うアプローチで実之介役に取り組もうと意気込んでいる。


――初演で勘三郎さんがやった役をやることになり、まずどんなことを思われましたか。

なにしろ、思ってもいないことでしたからね。だってもともと実之介という役は松尾さんが、勘三郎さんに演じてもらうことを想定して書いたものじゃないですか。それを再演するなら一体誰がやるんだろうなあなんて、まるで他人事のように考えていたんです。

――再演するらしいという情報だけが、先に耳に入っていたということですか。

事務所から言われるより先に、外部の人から『ニンゲン御破算』をまたやるらしいねーと言われたので。あれは確か、多部(未華子)ちゃんだったと思います。「また舞台でご一緒できますねー」と言われて、「え、なになに、なんの話?」って(笑)。

――多部さんもビックリしたでしょうね、「知らないんだ?」って(笑)。

でも「松尾さんの作品で時代劇っぽいもの」って言われたら『ニンゲン御破算』しかないですからね。「へえー、そうなんだ!」って思っていました(笑)。実之介をやると聞いたのは、それからずいぶんたってからでしたね。

――じゃ、その間は初演と同じ役なのかなと?

そうです、また灰次役をやるのかと思っていたので、まさかこうなるとは!と驚きました。だけど、勘三郎さん、あの時は勘九郎さんでしたが、当時は48歳だったんですよね。僕も今年、ちょうど同じ年齢になったので。このタイミングで挑戦できるというのは面白いな、と思い始めているところです。

――まさに同い年というのは、本当にいいタイミングでしたね。

その時期に松尾さんが、僕にやらせようと思ってくれたというのがなんだか嬉しいです。これはがんばらなきゃいけない、と思っています。それも、勘三郎さんがやったものを単に焼き直すのではない形でやりたいな、と。


――では初演とは、まったく違うイメージの作品に思えるように。

そういう風にしたいと思っていたんですけど、でも松尾さんは本格的に所作からきっちり稽古して、ちゃんとした時代劇を作りたいと言っていたらしくて。そうなると、僕が勝手に想像していた雰囲気とは違うのかもしれないので、今ちょっと怖いんですけど(笑)。

――もっと時代劇を壊していくタイプの舞台になるかと?

そう思っていたんですけどね。しかも、ちゃんとした所作ができない人達にやらせることになるので、どうなるんだろう?(笑) まあ、でも考えれば『キレイ』というミュージカルを初めてやった時も、ミュージカルなんてやったこともない人たちばかりだったわけですからね。それがまさに挑戦だし、そのことがある意味、常識を壊してることになるのかもしれないし。前回もそういえば毎日のように朝は殺陣、素振りの稽古をやっていましたからね。

――それまで、殺陣稽古なんてやったことなかったのに。

そうです、そうです。刀を抜いても、どうやって鞘に収めればいいかもわからなくて、「向きが逆になっちゃうんだよなー」なんて言ってるような人ばかりでしたから。やっぱり、不思議な作品ですよ。そういう意味では今回もまた、チャレンジなんだと思います。だけど、楽しみだなあ。15年前の作品なんですもんね。あれ以降、大人計画では時代劇の作品をやっていないわけで。

――時代物であるということは、やはりこの作品の大きな特長ですよね。

ここのところ大河ドラマに出演させていただくようになって、僕も時代物に興味を持ち始めたところだったので、それもちょうど良かったというか。

――確かに、昨年は劇団☆新感線(『髑髏城の七人』Season鳥)にも出られていましたから、時代物の作品が続いていましたね。

そうなんですよ。それで戦国のことをちょっと学んだり、今は『西郷どん』を放送しているから幕末も面白そうだなと思ったりして。『おんな城主 直虎』の時は井伊家の話だったのですが、その子孫の井伊直弼が『ニンゲン御破算』にもチラッと出てくるので、なんだか「俺、知ってる!」みたいな嬉しさがちょっとあるんです(笑)。初演の時は「何やってるんだろう」くらいにしか思えなかったので。


――前回は全然興味が。

なかったです(笑)。名前とか、“桜田門外の変”とかは知っていましたけど。でも松尾さんの作品でそういう、実在する歴史上の人物が登場するのって、とても珍しいですよね。

――それもこの作品の特長のひとつなのかなと思います。

ですよね。そのことを含めて、こうして時代劇に興味を持つようになってから改めて台本を読み直したら、どう感じるかなというのも楽しみなんです。松尾さんがどう書き換えてくれるかも、もちろん楽しみですけどね。

――さらに自分自身も15年経って変わっているはずですし。

はい。それに、灰次のセリフは全部すっかり忘れていますから。そのことも、ちょうど良かったかも(笑)。

――その灰次役を、今回は岡田将生さんが演じられますが。それもまた面白い経験になりそうですね。

しかも、荒川(良々)くんと兄弟の役というのもいいですよね。初演では吹越(満)さんと僕だったので見た目的にも全然違って、まったく新しいものになると思います。こうして僕が以前やった役を、別の人が演じるのを見ることも増えてきていて。以前、小池徹平くんが『キレイ』(2014年の再々演)で僕がやったハリコナ役を演じるのをそばで見るのも面白い経験でした。

――そういう時って、何か聞かれたらアドバイスしたりすることもあるんですか。

聞かれはしますけど、でも相手役も違ったりするので。そうするともうそれは新しいものになるから、アドバイスをすることはないですね。「松尾さんの言っていることをやれば間違いないから」って言うくらいです。岡田くんとは『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』(2016年)で共演しているんですけど、あの時は本当に何でも言うことを聞く人でしたね(笑)。「できません」なんて絶対言わずに何でもやっていたんですから。すごい人ですよ。一緒にやっていて、発散の仕方がちょっと似ているような気もしましたね。


――似たところがあるというのは、ご自分と?

はい。舞台に立ってセリフを言うことで、気持ちが発散するようなところが似ている気がして。ふだん、そんなにしゃべらないし、おとなしいし。

――『ゴーゴーボーイズ~』の時は初参加だったからあまりしゃべれなかったけど、今回はしゃべりたいみたいなことをおっしゃっていたようですよ。

ああー、でもそうやって“慣れ感”みたいなのを出してきた瞬間に、大人計画の人たちはサッと壁を作るんで、気をつけたほうがいいですね。

――それはアドバイスしてあげたほうがいいかも(笑)。

そうかもしれない(笑)。でも岡田くんだから、きっとそういう風にはならないでしょう、大丈夫だと思います。

――そして、多部未華子さんとも既に『キレイ』で共演されていますが、舞台上で阿部さんが感じる多部さんの魅力とは。

多部ちゃんって、なんか、つい目で追ってしまう人なんですよね。すごくいい意味で得体の知れなさがあるというか。一体、どこまでできるんだろうって、いつも思うんです。初めてのことに挑戦しても、全然平気なんですよ。『キレイ』の時も、あまり歌を歌う印象がなかったのに、そんなハードルも楽々と越えてましたから。今回も舞台では時代劇をやった経験がないって言っていますけど、すんなりいけちゃうんだろうな。多部ちゃんみたいな人、他に見たことがないもんなあ。稽古場での居方もすごくナチュラルで面白いし。なんだろう、あの感じ、不思議な魅力があるんですよね。多部ちゃん好きな人って、多いんじゃないかな。

――では阿部さんからお客様へ向けて、お誘いの言葉をいただけますか。

時代物の演劇では、なかなか見られない顔合わせのキャスティングだと思うので、ぜひ大勢の方に観ていただきたいですね。当時観た方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく全然違うものになるんじゃないかと僕は思いますので。松尾さんがどういうところを目指すのかは、今の時点では正確なところは分からないですけど(笑)。脚本を書き直して、上演時間も少し短くするらしいという話も聞いていますし。初演の『御破産』から『御破算』にタイトルも一文字変えて、リセットするとのことですからね。きっと、変わるはずです。その点もぜひ楽しみにしつつ、お越しいただければと思います。


取材・文=田中里津子  写真撮影=福岡諒祠

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