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実践のための「ニュー・ジャーナリズム」の復権 「スペクテイター」第33号

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 この連載は「100人にしかわからない本」と銘打っている。なので、この本について言及するには、少々申し訳ない気持ちもある。

2015年5月に発行された「スペクテイター」第33号(エディトリアル・デパートメント/幻冬舎)が、それである。

この雑誌は年3回の変則的な刊行形式で、各号ごとに、ひとつのテーマを突き詰めていく。

2月に発売された最新号では、つげ義春をテーマに、多方向から稀代の天才漫画家について探求している。

正直、あまりにもコアな雑誌。その第33号が特集したのは「クリエイティブ文章術」である。タイトルだけみれば、文章の描き方講座か何かを想像するかもしれない。

ところが、この号が多くのページを割いて紹介したのは「ニュー・ジャーナリズム」であった。

「ニュー・ジャーナリズム」という言葉を聞いて「ああ」と、納得できる人がどれだけいるだろうか。それは現代では、ほぼ忘却された言葉になっている。例えばGoogleで検索しても出てくるのは、Wikipediaなどの、ごくごく簡易的な解説くらいである。

1960年代後半にアメリカで生まれた「ニュー・ジャーナリズム」。それは、あえて客観性を放棄して、取材対象に関わり合うという方法論である……と、説明を始めれば字数はいくらあっても足らない。今では、もう忘却された「ニュー・ジャーナリズム」。それを21世紀にあって「スペクテイター」第33号は、真っ向から語り再生を図っている。

とりわけ、「Quick Japan」の初代編集長であった赤田祐一の筆による「ニュージャーナリズム小論」は、もっとも簡潔に「ニュー・ジャーナリズムとは何ぞや」を理解するに適した解説である。

ここで、赤田は「ニュー・ジャーナリズム」を、こう説明する。

***

ニュージャーナリズムについて知りたければ次の本を読めばいいと思う(翻訳書が出ています)

トルーマン・カポーティ『冷血』
ハンター・S・トンプソン『ヘルズエンジェルズ』
トム・ウルフ『ザ・ライト・スタッフ』
ゲイ・タリーズ『名もなき人々の街』『ザ・ブリッジ』

日本人の手によって書かれたノンフィクション本では、以下四本の表題作がいいのではないか。

沢木耕太郎『テロルの決算』『一瞬の夏』
立花隆『中核VS革マル』『日本共産党の研究』

***

論の冒頭で、こう記した赤田は「これでは単純化が過ぎる」「スペースが埋まらない」と、以降数ページを費やして丁寧に「ニュー・ジャーナリズム」の発生からを書き記している。その歴史性は、当然知っておかなければならない。でも、もしも実践のための糧とするならば、この冒頭の読書案内だけで十分である。

もしも読んでいないならば、ここに記された作品を読んでみるだけよい。何がしかの書き手として屹立したいと日々考えているなら、この9冊をパラパラとめくるだけで気づくのだ。自分には、深く取材する意志も技術も、取材対象への観察眼も洞察も、何もかもが足りていないということに。

ノンフィクションというジャンルが「冬の時代」といわれて長い。それでも、毎月のように、収支に見合わぬ努力を重ねた作品は、次々と発売される。「ルポライター」を肩書にしていると、当たり前のように「最近、どのような魅力的な作品に出会いましたか」と尋ねられる。容易にはたどり着くことのできない土地を目指したり、出会えない人にあったり、泥にまみれながら取材を重ねている姿が浮かび上がる作品は数限りない。それでも、私は、いつもこう答える。

「ずっと前の作品ばかりを読んでいるんです」

どれだけ現代を知ることができる作品に出会い、感動してもなお、赤田が挙げた作品群を超えているとは思えないからだ。

なぜ1960年代後半から70年代に頭角を現した、それらの書き手たちは、優れているのか。いくら考えても、その解答は出ない。それは、作品を作り上げているものが、理屈ではなく意志だからだと思う。だから、追いつく手段があるとすれば、模倣と実践との繰り返し、それを乗り越えるきっかけを探り出すしかないのではあるまいか。

そのためだろうか。何か、取材をする前になるとさまざまなものが頭をよぎるようになった。もしも、今日の取材をトンプソン風に描くなら、どうするのか。タリーズならどうか。

沢木ならば「私は」なのか「ぼく」なのか……。

取材を終えて、いざ執筆の段になっても回答はない。構成・文体が無数に沸きだしてくる……。

インターネットのメディア、SNSなどの普及は、簡潔に情報だけを求める読み手を拡大させてきた。けれども、その時代ももう終わる。

電子書籍の普及をひとつのエポックとして、人は次第に、スマホを用いて本と同じくじっくりと文章を読むことに慣れてきている。

21世紀において「ニュー・ジャーナリズム」が積み重ねてきた体験は、どう生かされていくのか。

……そんなことを評論チックに書いているよりも、さっさと取材に出かけたい衝動が、またわき上がる。
(文=昼間たかし)

外部リンク(日刊サイゾー)

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