「別れの博物館」初の日本巡回。スマホからゴム手袋まで世界中から集まった“別れのアイテム”を展示

ウレぴあ総研

2018/4/10 17:10



■恋愛、友情、家族……。さまざまな「別れ」を展示

国籍、宗教、文化にかかわらず、全ての人間が経験しているものといえば「出会い」であり「別れ」でしょう。

そんな「別れ」に焦点を当てた『「別れの博物館」あなたとわたしのお別れ展』が、アーツ千代田3331にて4月14日まで開催中です。

愛する人との何らかの関係が終わりを迎えた時、その時間を思い出すようなアイテムとそれにまつわるお話を展示しているのが、世界で唯一の「別れの博物館」。始まりは2006年で誕生地はクロアチアの首都ザグレブです。

世界各国から人々から別れにまつわる品々が寄せられるこの博物館は、各地を巡回しており日本では今回が初の開催となります。

3月30日に開催されたレセプションパーティーには、創設者であるオリンカ・ヴラシュティツァさんとドラジェン・グルビシッチさんがクロアチアからやって来てくれました。そういえば、2018年は日本・クロアチア外交関係樹立25周年です。

4年間恋愛関係にあった元カップルのおふたり。共に過ごした大事な時間を心の奥底にしまい込まず、「思い出の品物とお話」を展示してみてはどうだろう?と考え、小さなコンテナで博物館を始めたのです。

それにしても、元カレと元カノ同士が別れた後で一緒にプロジェクトを続けるだなんて、かなりハードな作業だと思うのだけど……。

「もちろん始めはとても難しい部分があったんですが、そのうち関係性が変わり今では新しい関係性を築けたようです」(オリンカさん)

■やはり恋愛にまつわる「別れ」が多い

会場内に入ると、白を基調としたディスプレイが目を引きます。

「別れ」と言ったらドロドロしたイメージになりがちだけど、こんな風に展示されると美しき思い出に昇華しそう! ちなみに、フロアデザインを手掛けているのはドラジェンさんです。

もちろん、「別れ」は綺麗事だけでは済みません。例えば、『優柔不断なセーター』なる展示品にまつわるストーリーは、完全に悲哀です。

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“付き合い始めるや「究極のセーターがほしい」とリクエストしてきた彼。「ヘンリー編みがいい。いやいや、ケーブル編みかな」「色はグレーで。いや、やっぱりチャコールグレーかな」と常に変化する要望。彼とは3年間共に過ごしました。私より20歳も若い子と付き合うため、突然私を捨てるまでは……。”

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展示品『食べるダイエット』は、一見するとただの書籍。これにどんなストーリーがあるというのでしょう?

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“最後は憎しみに変わってしまった元婚約者への感情の原因を、この本は表している。彼は、最後まで私の体型が許せなかった。あんな男と結婚しなくてよかった!”

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『指輪』は、結婚へ至る前に別れを選んだ女性からの展示品です。

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“浮気をした私に彼は暴力を振るうようになった。親友から別れを進言されても、依存心が邪魔をしてできなかった。その後の彼は自分を改め、私達は愛し合うようになる。

そして、彼からプロポーズをされた。本当は彼の暴力はまだ治っていないだろうと思った私。結婚すると離れられなくなる。愛していたが、ようやく別れる決断をした。”

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展示品『ゴム手袋』には、ある意味でポジティブな「別れ」が込められています。

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“結婚し、夫の両親と生活することになった。その日から、家族の為に家事をするだけの囚われ人となった。そして遂に、私達は夫の両親の家から引っ越すことになった。家事労働に勤しんだ証としてゴム手袋を送ります。”

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■■創設者が特に印象深い「別れ」は何?

「別れ」は、なにも恋愛でのみ起こる出来事ではありません。『古い腕時計』には、親子の別れのストーリーがあります。

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“父と離婚し、妹を連れて出て行ってしまった母の腕時計。母が帰ってくる夢を毎晩のように見ました。母が亡くなる時、子どもたちを置いていく母の気持ちや、働いて私達を大学まで行かせてくれる援助をしてくれたのが分かり、今は心から感謝しています。”

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そして夢との「別れ」が込められた品も。

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“『shellacのレコード』には、オペラ歌手になりたかった父が18歳の時に吹き込んだ音源が収録されています。しかし彼は、その後に駆り出された戦地で砲弾の小さな破片が喉に刺さり、声帯が傷つけられてしまった。夢は儚くも消えた。”

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『オープンリールプレイヤー』の周辺には、童謡「チューリップ」を歌う女の子の声が響きます。

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“他界した父を弔う仏壇の中には、「絶対に開けてはならぬ」と母から言い聞かされていた包みがあった。その中身は、亡き父の声が収められたこのプレイヤー。母はある映画で、テープレコーダーを繰り返し聴く少年が誤操作で音を消してしまうワンシーンを目撃、トラウマになってプレイヤーを封印したのだった。

数十年後、これを再生すると、幼い私に寄ってたかって歌わせようとする父と母の声が聴こえてきた。“

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展示品『超音波写真』には、一枚の写真に「I’ll See you in Heaven」と書かれた手紙が添えられていました。

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“罪深い決断をしたがゆえに、突風のような恋は一瞬で消え去った。”

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親子以外の肉親との「別れ」も博物館には展示されています。例えば、『亡くなった姉の携帯と三枚の写真』。タイトルが全てを物語っているでしょう。

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“自ら命を絶った姉のスマホです。なぜそういう結論に至ったか、スマホの中を見れば全てわかりました。命を絶つ12時間前の写真が残されていました。”

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『宝くじ』なる展示品には、友情にまつわる悲しき逸話があります。

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“60年以上の付き合いがある大親友4人組。しかし、彼らは私に内緒で宝くじを買っていた(私の国/スペインでは友人と一緒に宝くじを買うことが多い)。くじが高額当選したことで事実を知った私は、傷付きました。「なぜ誘ってくれなかったのか?」と聞いても言い訳しかされず、以来、誰も電話さえくれなくなりました。”

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では最後に、創設者・オリンカさんから特に思い入れのある、ふたつの品をご紹介していただきましょう。

ひとつめは『ビニールの金魚』。天井から金魚が吊るされている展示物。

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“父が息を吹き込んで膨らませたビニール製の金魚。父の他界後、母は中の空気が漏れないようにと、触れることを禁じました。50年後の今も、金魚のお腹は父の息でわずかな膨らみを保っています。”

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ふたつ目は『Nの米』です。

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“教え子のNが44歳で逝った。亡くなる前のNは田植えをし、収穫を楽しみにしていた。訃報の直後、Nの母親は「あの子は田植えをしてくれました。やることをやって逝った。本当にあの子らしいです」と話してくれた。私はこの新米をNだと思って食べた。”

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■我々も博物館で「さよなら」できる

会場内の一角には「コンフェッション さよならを紙ひこうきにしよう!」なるコーナーが設置されていました。

好きな色の紙に各々の「さよなら」を書き、紙ひこうきにして飾れるスペース。展示品を見ていると、何かしら自分の経験と重なる部分があってモヤモヤしていたところです。これまで経験した「別れ」が、どうにもフラッシュバックしていたし! それらを心にしまい込まず、展示して「思い出の品」に変えてしまうのもありかもしれません。

もちろん、この博物館に展示されている品は全て一般の方々から募ったもの。今まで、北はノルウェーから南はケープタウン(南アフリカ)、東は日本、西はサンフランシスコと、世界各国で開催されており、世界中から集結した「別れ」を創設者2人が選定して展示しています。

今後、上海、コソボ、ニュージーランドでの開催も予定されている「別れの博物館」。様々な「別れ」を目の当たりにすることで、逆にポジティブに前を向くことができるでしょう。

(取材:寺西ジャジューカ/イベニア)

【概要】

「別れ」を展示する、世界で唯一の博物館 Museum of Broken Relationships

別れの博物館 あなたとわたしのお別れ展

<開催日時>

2017年3月31日(土) ~ 4月14日(土)

11:00~21:00(最終入場20:30)

<会場>

3331 Arts Chiyoda

(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

<入場料>

一般 1,300円 / 大学生 1,000円 / 中高生 500円 / 小学生以下 無料

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