SHE'Sのツアーファイナルに観た、ライブバンドとしての成長ぶりとその理由

SPICE

2018/4/10 17:00

SHE'S Tour 2018 “Wandering” 2018.4.1 EX THEATER ROPPONGI


2017年、SHE'Sは2枚のフルアルバムと1枚のミニアルバムをリリースし、全国ワンマンツアーとストリングスを迎えた編成での東名阪ツアーを行った。この事実だけでも彼らの多作ぶりは分かるだろうし、2017年がどれだけ濃密な一年だったのかということは想像に難くないだろう。そしてその勢いに待ったをかけず開催した今回のツアーは、先輩アーティストをゲストに迎えたツーマンライブ10公演+ワンマンライブ10公演を行う形式。おそらくこの2ヶ月間、バンドはインプットとアウトプットをかなり積極的に行ってきたのではないだろうか。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
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ツアーの度に毎回観させてもらっているが、アルバム『Wandering』の曲順を踏襲した冒頭「All My Life」~「Blinking Lights」からして明らかに違っていた。端的に言うと、音がいつになく生々しい。広瀬臣吾(Ba)と木村雅人(Dr)によるリズム隊のサウンドの重心がグッと低くなっており、それによって井上竜馬(Vo)の歌や鍵盤、服部栞汰(Gt)のギターフレーズが積極的に前に出てくるようになっているのだ。片寄明人(GREAT3)をプロデューサーに迎えて制作された『Wandering』がSHE'Sのロックバンドとしての側面を前面に出したような作品だったためか、それを鳴らすバンドサウンドも前のめりさが感じられるダイナミックなものに。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

そういう意味では例えば『プルーストと花束』からの「Freedom」「Say No」、『She’ll be fine』からの「遠くまで」など、“強い意志”のようなものがソングライティングの軸となっている曲が多めに選曲されていたこと、全体的にコーラスの声量が大きくなったこと、それから後に演奏される「White」の後半に井上が演奏を同期に任せ、ハンドマイクで前へ出る場面があったことも象徴的といえるだろう。綺麗に演奏することや楽譜通り楽器を弾くことよりも、多少荒くなってしまったとしても、より強く“伝える”ことを優先していくようなやり方だ。「Freedom」のあと、最初のMC。相変わらずのフランクさを交えながらも、木村はとにかく気合い十分なのだということを伝え、井上は「今日はみんなとたくさん一緒に歌を唄いに来たんです」とオーディエンスへ語りかけた。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

5曲目「Getting Mad」から13曲目「Flare」までは、ほぼMCなしでぶっ通し。この中盤セクションではライブならではの工夫も多く、ライブバンドとしてのSHE'Sの成長を明確に読み取ることができたため、駆け足になってしまうが、一つずつ流れを追っていきたい。井上がエレキギターに持ち替えての「Getting Mad」、同期とリズム隊の精巧な絡みが見事だった「Running Out」のあと、井上がキーボードで弾いていた連符を転調させ、インターリュードへ。他3人も徐々に音を重ね、ジャーンと一発コードを鳴らしたあとに「White」がスタート。同曲を終えると今度は、木村のリズムをきっかけに軽いセッションが始まり、ギター、キーボード、ベースそれぞれの見せ場を経て「Beautiful Day」へと繋げた。跳ねるリズムによる軽快さをそのまま残しつつ、高音を張り上げてのスキャット、そしてギターとキーボードが掛け合いにより力強さを増していく終盤は特に圧巻。そのまま間を空けずに「Back To Kid」に入り、マイナーコードの響きとトーンを落とした照明が「Remember Me」の始まりを告げていく。続く「Say No」でシンガロングを巻き起こしたあとは、キーボードとギターが曲間を繋げ、木村が大きく上げたスティックを振りかざすのと同タイミングで、4人一斉に「Ghost」のイントロを鳴らし始める。アウトロを目一杯延ばし、熱量の高いアンサンブルを繰り広げたあとは、イントロのSEを経て「Flare」へと繋げたのだった。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
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アグレッシブなアッパーチューン「Running Out」と清廉なミディアムバラード「White」が連続して演奏された箇所が特にそうなのだが、この9曲は似通った曲調をしているわけではない。そういう時は例えばMCを挟んで次の曲に向けての空気を作ってしまった方が簡単かもしれないし、実際これまでの彼らもそういう手法を使っていたことがあった。しかし今回に関しては、そういう部分でさえもすべて演奏が担っていた。それは自信の表れだろうか、“挑戦しなければならない”という覚悟めいた意志の表れだろうか。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

「Flare」「C.K.C.S.」「Over You」「Time To Dive」と続け、ライブもいよいよクライマックスへ――という場面で、井上はこのようなことを話していた。対バンしてきた先輩アーティストや各地のオーディエンスからもらった「いってらっしゃい」の言葉を背負ってファイナルを迎えたのだということ。今日が楽しみだという気持ちもあったし“絶対いい時間にせな”という想いもあったのだということ。このライブハウスは、一歩一歩歩んできたみんなとともに作った“お家”みたいな場所なのだということ。そのMCを締め括った「家を大きくするために強くなりたいなあと思ってます。みんなは何も気にせず来てもらえれば」「自分のために曲作ってきたけど、もう自分だけのためにバンドやってないです」という言葉には、メジャーデビューからもうすぐ3年目を迎える、このバンドの頼もしさが滲み出ていた。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
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「最後に一緒に、自分たちの居場所を作るための歌を!」(井上)。本編を締め括ったのは「Home」の壮大なシンガロングで、アンコールを締め括ったのは「あなたの歌です!」と告げてから始めた「Curtain Call」。そのどちらでも、歌はオーディエンスに託された。SHE'Sのライブでは以前から井上がオーディエンスに「唄おう!」と呼びかけることが多かったが、「Home」という曲が生まれ、ツアーの各地で演奏を重ねてきたことにより、おそらくそれがバンドの“心”なのだと改めて実感したのではないだろうか。だからこそ、音楽家としての“技”を磨き、家(=バンド)という名の“体”を守る必要もある。そういう“心技体”にあたる部分が明確に打ち出されていたからこそ、この日のライブはより核心的で、バンドの成長を強く感じさせるようなものになった。怒涛の日々の中で道に迷わず、芯を持って進路を選べたことはすごいことだなと純粋に思う。

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA

この日の終演後発表されたように、この夏にはニューシングルのリリースも予定しているというSHE’S。ここから繰り出される次の一手に期待が膨らむ一方だ。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=MASANORI FUJIKAWA

SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
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SHE'S 撮影=MASANORI FUJIKAWA
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