「西郷どんスペシャル~鈴木亮平×渡辺謙の120日」で見えた男のドラマ、女のドラマ

エキレビ!

大河ドラマ「西郷どん」(原作:林真理子 脚本:中園ミホ/毎週日曜 NHK 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時) 
「西郷どんスペシャル 鈴木亮平×渡辺謙の120日」4月1日(日)放送


鈴木と渡辺が語る裏話
4月1日、「西郷どん」のドラマは放送されず、代わりにドラマの裏話を伝える「『西郷どん』スペシャル~鈴木亮平×渡辺謙の120日~」が放送された。これは大河ドラマで初の試みであるという。
今期から〈働き方改革〉によって、全話の話数を減らし、その分、本編をより楽しめる特別番組を入れるのだそうだ。
放送内容は、主人公・西郷吉之助役で、若くして大河ドラマの主役に抜擢された鈴木亮平と、彼を導いていく薩摩藩藩主・島津斉彬役のベテラン俳優・渡辺謙の対談と、12話までのふたりの印象的なシーンの裏話だった。

まず、5話の、相撲のシーン。

下級武士の吉之助が、殿である斉彬を倒してしまうところでは、渡辺がお互いの手の内を見せないように、本番まで会話をしないようにして臨んだという。その甲斐あって、渡辺のカツラがはがれてしまうほど、激しい取り組みが行われた。

演技の極意
とにかく、番組内で渡辺謙がしゃべる、しゃべる。演技について。
相撲では吉之助を倒すつもりだったこと。
4話では、確執激しい父・斉興(鹿賀丈史)との芝居で、予期せぬ感情が沸いたこと。

台本を読んだ時もリハーサルをやった時も感じなかったことが「ボロボロってこぼれてくる瞬間が ドラマの醍醐味だなって気がする」、それを鈴木亮平に「見つけていってほしい」と俳優の先輩として語る渡辺謙。
それを受けて鈴木も同じような体験を思い返す。7話、母が自分の背中で亡くなるシーンで、「子どもを背負っている」ような気持ちになったそうだ。

渡辺謙は1987年、大河ドラマ「独眼竜正宗」で若くして主役に抜擢されたとき、勝新太郎とぶっつけ本番で対面芝居をした経験があり、「脚本に書かれた台詞を語るだけでなく全人格で勝負することをじかに教わりました」(語り:三宅民夫)と言う。そのバトンを、まわりまわって、いま、「西郷どん」で、鈴木亮平に託しており、それを渡辺は「循環」と呼んだ。

そんな渡辺に、いま、先輩が後輩にわざわざアドバイスしてくれない、と鈴木は感謝。
時代劇ならではの所作も渡辺から学ぶ鈴木。
舞台劇もそうだけれど、ナチュラルな芝居だとさらっと流れてしまうところ、意識的に動きをひとつひとつしっかり見せることで、見る人に明確に伝わる。それを若い俳優が知ることは有意義なことと思う。

脚本にアイデアを加える
渡辺は、先輩の勝新太郎から「脚本に書かれた台詞を語るだけでなく全人格で勝負することをじかに教わりました」と語り、台本に台詞を足すことも厭わない。
9話では「なんでもかんでも命を賭けるな 命はひとつじゃ」と渡辺が足した台詞だということが明かされた。
さらに、動きも変える。
11話では、平手打ちと台本には書いてあったところを、大胆に蹴りに変えた。
この蹴りはドラマを見ていてもかなりインパクトがあった。ここはでも、鈴木亮平の、一時期流行ったジャンプする写真みたいにきれいにま後ろに飛んだ身体能力を讃えたい。体幹鍛えられているんだろうなあと思う。

とにかく、渡辺謙の芝居にかける気迫が伝わってくる特番であった。
かつて、渡辺の主演映画「明日の記憶」(06年)のとき、俳優としての活動のみならず、“エグゼクティブ・プロデューサー”としてクレジットされていて、渡辺は宣伝プランも考えて、アグレッシブに動き、映画をみごとにヒットさせた。つねに、ものすごく作品や役に思い入れ、アイデアを出していく人のようだ。

ただ、脚本家によっては、脚本を一字一句変えないほしいと考える作家もいる。一方、あくまで、脚本は設計図であって、現場で変えてもらって構わないという作家もいて。中園ミホの場合、脚本協力に、小林ミカ、三谷昌登というふたりの人物を入れていることもあり、一字一句、自分の書いたものを変えてはならぬ!とは思はず、もうすこし合理的な考え方をしているかもしれない。

演出家の役割
緊張感あふれるリハーサル風景なども紹介された。
なんかもう演出家の存在などがまったくないと思って見ていたら、ようやく野田雄介チーフディレクターが登場。
こう見せたいという意図を伝えると、俳優のアイデアに任せる。俳優の意思を大事にしているように感じた。
野田Dは現在再放送中の朝ドラ「マッサン」の演出もやっていた。「マッサン」でも描かれた父と子の己の人生を賭けた真剣な相撲シーンは、偶然にも「西郷どん」の相撲回5話と同じ5話であるが、それは別の演出家の担当であった(でも制作統括は「マッサン」も「西郷どん」も同じ櫻井賢)。

「今からおまえはわしになれ」と
特番の趣旨としては、島津と西郷の関係を、渡辺と鈴木の関係にもなぞらえて描いたということであろう。
やがて、斉彬は吉之助に「今からおまえはわしになれ」と言うようだ。
「おれたちは駅伝だから」と、今回助演である渡辺謙は、鈴木亮平にあとを託す。
主役はひとりで完走しないとならないとも。

そしてついに渡辺謙がオールアップ。
これから、13、14、15話と、篤姫がいよいよ輿入れ、大久保正助も江戸へ、斉彬が幕府に建白書を提出し、一橋派と紀州派の対立は激化、井伊直弼大老に就任、日米通称修好条約を締結と話は風雲急を告げる(NHK大河ドラマ・ガイドのあらすじより)。
斉彬と吉之助の別れも近づいてきて・・・。
斉彬を失ったのち、吉之助はどうするのか。
まさに、ここから「チェスト、きばれ 西郷どん!」という感じだ。

ほかに、小道具や美術のこだわりなども紹介され、
エキレビ初回の鈴木亮平インタビューで見出しにもした、小さい草履のこだわりが紹介された。
インタビューで語られてはいたが、実際のドラマのなかで草履がしっかり映ることがないのでほんとうに小さい草履を履いているのかいまひとつわからなかったから、実際、地面に触れて泥だらけになっているかかとを見ることができて良かった。

特番は男の世界だった
特番は、あくまでも、若く大志を抱く薩摩武士・吉之助と、日本を憂い日本を改革しようと身を粉にして働く薩摩藩主・島津斉彬の骨太なドラマ部分を切り取っていた。
実際の1~12話は、その幹に、たくさんの枝葉が描かれていて、西郷どんの母・満佐(松坂慶子)、幼馴染・糸(黒木華)、貧しい家のために売られていくふき(高梨臨)、最初の妻・須賀(橋本愛)、斉彬の養女となって公方に嫁ぐことになる篤姫(北川景子)、篤姫を育てる幾島(南野陽子)のことが生き生きと描かれていた。
この時代、抑圧されていた女性の気持ちに寄り添って手厚く描く分、男の気持ちは俺達がと渡辺謙が頑張ったという印象が、特番にはあった。
そうやってドラマを相対化するのもいいと思う。

4月8日放送、13話「変わらない友」は、3年ぶりに吉之助が故郷・薩摩に戻るも、親友・大久保正助(瑛太)と溝ができて・・・という話。
公式サイトで鈴木は「あふれるエネルギーと熱き友情をたっぷり感じてください!!」と語っている。
(木俣冬)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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