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オタク研究の大家・吉田正高氏の急逝を悼んで…OVAとインディーズメタルの歴史を振り返る

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<文/山野車輪 連載第23回>

◆パンク専門誌が編集した『オリジナルビデオアニメ(OVA)80’S』が話題に

今年2月に『オリジナルビデオアニメ(OVA)80’S: テープがヘッドに絡む前に』(出版ワークス)が出版された。OVAとは、TVや映画での発表ではなく、ビデオでの販売を目的に製作されたアニメーションのことで、1983年に発売された『ダロス』が第1号作品となる。同書を契機に、80年代のOVAの話題が一部のアニオタの間で盛り上がっている。

同書の編集は、パンク専門誌『MOBSPROOF』が行なっているが、パンクとOVAの接点はどこにもない。あるのは、黎明期シーンにあった熱量、異常な衝動である。80年代のパンク・シーンとOVAシーンには、同書で言うところの「衝動的破壊」と「創造活動」の連鎖が起こり、“原始の炎”が燃え盛っていたのだ。

◆コンテンツ文化史学会会長の吉田正高氏が急逝

同書のメイン執筆者であり、コンテンツ文化史学会会長の吉田正高氏が3月31日に急逝した。ご冥福をお祈りいたします。今年初めに、BABYMETAL神バンドのギタリスト=藤岡幹大の早すぎる死去が世界的な話題となったが、それに続いての突然の訃報に、驚きを隠せない。今、オタク界隈では大きな話題となっている。筆者は、総合科学出版から出版予定されていた『80年代アダルトアニメの世界』を楽しみにしていたのだが、一体どこまで書かれていたのか……。

氏はツイッターで、本城未沙子『魔女伝説』、LOUDNESS「Gotta Fight」、NOVELA『最終戦争伝説』など、ジャパメタの音源についてもつぶやいていた。アニメとメタルのどちらも楽しむユーザーは少なくないが、大局的に見れば、交流は見られない。メディアや批評家、研究者がタコツボ化していることに起因するのだろう。そのような状況下で、アニメとジャパメタのつながりも意識する氏のようなオタク界隈の研究者は非常に珍しい存在だったし、筆者は個人的にシンパシーを感じてもいた。一度お会いして、そのあたりについての見解を伺いたかった。

◆OVAとインディーズメタルが本格的に活性化した1985年

さて、本連載のテーマはジャパメタである。ジャパメタはリアルロボットアニメと相性が良く、そして盛り上がった時期も重なる(連載第11回参照)。そしてOVAは、ジャパメタにおけるインディーズメタル・シーンの歴史とリンクする。

インディーズメタルの起点はSABBRABELLSの1stアルバム『SABBRABELLS』とされ、これは先述のOVA第1号作品の『ダロス』と同じく1983年に発表された。そして1985年、REACTIONの1stアルバム『INSANE』が激売れし、インディーズメタル・シーンは本格的に活性化する。OVAシーンは連載第11回で述べたように『メガゾーン23』で活性化し、OVAとインディーズメタル、どちらも本格的な起動は1985年だった。このように、OVAとインディーズメタルは非常に縁の深い市場だったと言える。

OVA『メガゾーン23』は、筆者は、当時クラスメイトになったばかりのオタクの友人から、このアニメの存在を知らされた。その彼は現在、人気マンガ家になっている。同ビデオを購入した同級生の家に連れてってもらい、同級生が10人近く集まって、『メガゾーン23』の鑑賞会が行なわれたのだった。余談となるが、その同級生の家で「くりいむレモン」シリーズも観た(笑)。あの頃、ティーン向けアニメは、OVAで燃え上がったのだ。

◆かつて、アニメの声優や主題歌の歌手は見下される存在だった

『メガゾーン23』の時祭イブ役を任された新人アイドル歌手の宮里久美は、アイドル声優の先駆けの一人で、ホリプロでは最初のアニメ歌手だった。今でこそアニメの声優と主題歌を任されることは非常に美味しいとされているが、この頃は、アニメおよびアイドル声優は見下される空気があった。正統派アイドル歌手を目指していた宮里は、『アートミック・デザインワークス(ビークラブ・スペシャル)』(1987年、BANDAI)にて、「えーっやりたくない!」という本音を漏らしていた。

1986年にTV放送されたロボットアニメは、『機動戦士ガンダムΖΖ』『戦え! 超ロボット生命体トランスフォーマー2010』『マシンロボ クロノスの大逆襲』だけになった。同様に、同年メジャー・デビューしたジャパメタ・バンドは、SABBRABELLS、REACTION、Sabrina、KUNIの4バンドにとどまった。ロボットアニメとジャパメタは、TVおよびメジャー・シーンでは沈静化し、新たに生まれたOVAとインディーズメタル、それぞれのシーンに移行したのである。

◆OVAに起用されたジャパメタ・アーティスト

80年代後半期、TVアニメでは、『聖闘士星矢』『超音ボーグマン』などでジャパメタ・アーティストが起用されていたが、OVAでももちろん起用されていた。『デビルマン』ではANTHEMが、高橋留美子原作の『1ポンドの福音』(1988年)では浜田麻里が、OVA『湘南爆走族5 青ざめた暁』(1989年)ではLOUDNESSが、そして『風魔の小次郎』(1989年)ではNIGHT HAWKSが起用された。

OVAに起用されたジャパメタのなかでも、アイドル路線の女性メタル・シンガーが目立っていた。“歌謡・メタル・エンジェル”早川めぐみは、OVA『ザ・ヒューマノイド』(1986年)に後期の楽曲「Dancin’ In The Rain ~昨日よりも愛しい人~」が起用されている。

また、のちにB’zを結成する松本孝弘がバックアップした女性メタル・シンガーの杉本誘里は、OVA『アモンサーガ』(1986年)、劇場用アニメ『GREY デジタル・ターゲット』(1986年)、OVA『デジタル・デビル物語 女神転生』(1987年)、OVA『真魔神伝 バトルロイヤルハイスクール』(1987年)などに起用されている。

このように、かつてはアニソンと女性メタル・シンガーが融合していたが、30年経った現在、そのことを知る者は多くない。80年代のOVAと、女性ヴォーカルメタルは、どちらも歴史のなかに埋もれ、忘れ去られていった。

◆OVAの金字塔『バブルガムクライシス』が遺した功績

男性歌手の方も見てみよう。ANTHEMのヴォーカリストで、のちにアニメタルでブレイクする坂本英三は、『力王』、『黄龍の耳』、『俺の空(三四郎編)』、『孔雀王』など、複数のOVAおよびアニメのイメージ・アルバムで歌っている。また、高崎と樋口と同じバンドのヴォーカリストだった影山ヒロノブは、OVA『装鬼兵M.D.ガイスト』の主題歌を任された。そして高崎と樋口の高校の後輩で、メタル・ソロシンガーの片山圭司は、OVA『バブルガムクライシス』1巻のエンディング(ED)テーマを歌っている。

『バブルガムクライシス』は8巻まで制作され、OVAシーンのなかでも重要な作品だが、アニソンや歌謡曲シーンでも面白い位置にある。同作は、アイドル歌手が物語の鍵となった『メガゾーン23』の後継作であり、主人公はロック・シンガーという設定。ここに、アイドルからロックへと進化していることが見て取れる。そういえば、『メガゾーン23』の続編である同PART IIでも、SLAYER、W.A.S.P.、炎(『BURRN!』)などの、ヘヴィメタル・バンドや雑誌名が散らばっていた。

主人公の声優と3巻までの主題歌を担当した大森絹子は、のちに『絶対無敵ライジンオー』などのロボットものTVアニメの主題歌を歌っている。彼女は、ミミ・ルミ・クミ3人組子どもアイドル(現在ならばチャイドルと称すのだろう)=ミルクのクミとしてデビューした。そしてルミはなんと、去年話題となったバブリーダンスに使われた「ダンシング・ヒーロー」の歌手=荻野目洋子だ。

そして4~6巻の主題歌を歌った坪倉唯子は、のちにNHK紅白歌合戦にも出場したTVアニメ『ちびまる子ちゃん』の1stEDテーマ「おどるポンポコリン」のB.B.クィーンズのシンガーである。

また、OVA『バブルガムクライシス』の声優で構成されたユニット=ナイトセイバーズは、女性声優アイドルユニットとしては原初の存在ではないだろうか。男女混成であれば、TVアニメ『超獣機神ダンクーガ』の声優で構成されたユニット=獣戦機隊がすでに活動していたのだが。

◆「メカと美少女」という鉄板の組み合わせ

メカと美少女という鉄板の組み合わせは、『超時空要塞マクロス』のヒロイン=リン・ミンメイが、アイドル歌手をやるという設定で可視化される。その手法は、『メガゾーン23』の時祭イブ、『バブルガムクライシス』のプリスへと受け継がれていく。『バブルガムクライシス』の続編『バブルガム・クラッシュ!』2巻のイメージソング「Fly Away」は、バリバリのネオクラシカルのスピードメタル・チューンで、同楽曲を歌った2代目プリス役の立川亮子は、ポスト浜田麻里と称されたシンガー。「マクロス」系譜の“歌”は、OVAシーンを舞台に、アイドルからロック、そしてヘヴィメタルへと進化していったのだが、この事実はあまり知られていない。

OVAシーンからは、『トップをねらえ!』(1988年)で初の監督を務めた庵野秀明が、のちに代表作『新世紀エヴァンゲリオン』を生み出し、アニメ・シーンに多大な影響を与えた。そしてインディーズメタル・シーンで1stアルバム『Vanishing Vision』(1988年)を発表したX(X JAPAN)が、のちにV系シーンを生み出し、また日本の音楽シーンをも変革した。世界的な知名度のクリエイター、アーティストを排出したOVAとインディーズメタル、今だからこそ、それぞれのシーンを振り返り、再評価すべきではないだろうか。今年はちょうど、『トップをねらえ!』と『Vanishing Vision』の発表から30周年の節目でもあるのだから……。

山野車輪(やまの・しゃりん)

昭和46(1971)年生まれ。平成17(2005)年『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)を出版し、日韓関係のゆがみを鋭く指摘。『ニューヨーク・タイムス』、『タイムズ』など海外の新聞メディアでも紹介される。同シリーズは累計100万部突破。平成22(2010)年『「若者奴隷」時代』(晋遊舎)で、いち早く世代間格差と高齢者の問題を取り上げ、社会に警鐘を鳴らす。他に『なる☆まん!』(辰巳出版)、『マンガ海の武士道』(原作:惠隆之介、育鵬社)、『革命の地図 戦後左翼事件史』(イースト・プレス)など著書多数。ヘビメタマニアとしても5ちゃんねるや一部メタラーの間で有名。本連載を大幅に修正・加筆してまとめた『ジャパメタの逆襲』が扶桑社新書より、いよいよ4月29日発売決定!

【山野車輪】



漫画家。1971年生まれ。嫌韓を世に知らしめた

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