Kalafinaが超えた10年、その先に何があるのか?初の劇場版ドキュメンタリー映画完成を受けて思う2017年と「夢の行方」

SPICE

2018/3/14 18:00


2018年3月30日から、Kalafina初のドキュメンタリー映画となる『Kalafina 10th Anniversary Film ~夢が紡ぐ輝きのハーモニー~』が上映される。栃木・日光東照宮、奈良・興福寺という世界遺産で行ったライブ。更に怒涛の9周年イヤーであった2017年後半と10周年記念で行った日本武道館公演の裏側を追い続けた本作の公開を前に、Kalafinaに話を聞きに行った。何故ドキュメントを撮ろうと思ったのか、そして10周年を超えたKalafinaの夢の行方は?

――まず率直に映画をご覧になったご感想をお願いします。

Wakana:どんなふうに仕上がっていて、どれぐらい恥ずかしいのかなってドキドキしていたんですけど、あの時こうだったとかを笑いながら3人で見させてもらいました。半年しか前じゃないのにすごく懐かしい部分もあったりして、1月23日の武道館が本当にあっという間に終わったライブだったんですが、こんなに色んな表情を私たちはしていたんだなって思ったり、客観的に見るということはとても面白いというのを改めて実感しました。

Keiko:自分たちとしてはライブをするにあたって準備してきたこの過程というのは、今回の10thアニバーサリーだからやっているわけではなくて、いつもどおりの裏側だったんです。「いつもどおり、そのまま準備段階が映し出されているな、描いてもらっているな」ということと、思った以上にライブ映像が多くて。劇場の良い音響で聴きたいなと思いましたね。

Hikaru:ソロのインタビューのところとか、それぞれが自分にゆかりのある場所を歩いているところは、一緒にいない間に撮ったものだったからちょっと新鮮な感じがしました。

――今回のドキュメント映画のお話を、受けた理由やきっかけは何だったんですか?

Wakana:最初に聞いた時は、自分たちが自分たちを客観的に見るというのはすごく面白いと思ったんです。ずっとカメラに撮ってもらうというのは不安もあったんですけど、それが見てみたいと思ったんです。Keikoが言ったように、普段どおりの自分たちを見ることはなかなかないし、逆に普通のことを見るのが特別なので、すごく面白そうと思いました。

――ちょうど取材期間は半年程ですが、普段いないカメラが居続ける状況はいかがでしたか? 地元に行かれる時もカメラがあったかと思いますが。

Keiko:お話をいただいた時から、カメラの存在が不安でしたね。カメラを意識した行動とか、意識した言葉とかになったらイヤだなと。それだとドキュメンタリーにならないなと。なかなか慣れないし。

――慣れてくるタイミングはありましたか?

Keiko:途中で諦めました(笑)。 諦めてもういいかな、と思ってから、わりと自然になったかな。

――自分で見返してみても、まだこの時は緊張していたな、というものがありましたか?

Keiko:世界遺産の時とかは特にデリケートなライブだったので、すごくカメラを避けていましたね。慣れたのはどこらへんだろうな……でも10thアニバーサリーの準備をしだしてからは諦めたというか。没頭して制作したいし、取り繕うと変わっちゃうから、もうこの熱量をそのまま届けてもらうのでいいかなと思って。そこまではずっと意識していました。

――Kalafinaは今までこうしたプライベートや裏側を見せないでステージで表現する方々の印象がありました、それを見せてもいいかなと思われたきっかけはあったんでしょうか。

Keiko:割り切るしかなかったんですよね。裏側を見せたいとかそういう意識に変わったとかでは実はなくて。自分たちはステージに上がった完成されたものを見ていただきたいという、そこの軸は変わってないんです。でも今回はこういう機会を、10thアニバーサリーという使命のために作っていただけるというところで、ならばちゃんと見せたほうがいいという、どちらかと言うとそういう割り切り方ですね。
撮影:大塚正明
撮影:大塚正明

――拝見した感じ、すごく活発に活動された2016年から17年でしたが、今振り返ってこの1年間はどんな年でしたか? 良かったこと、大変だったこと、それぞれあったと思いますが。

Wakana:そうですね。2017年は9周年を迎えた時に、10周年への現実味を帯びた年だったんですね。8周年はまだ10周年まであと2年ある、という気持ちだったんですけど。9周年を迎えた時にもうカウントダウンが始まって、この1年が終わったら10年を迎えるんだという現実味がものすごく帯びてきて。

――ライブの数も多かった印象があります。

Wakana:はい、本当にたくさんライブさせてもらって、『9+ONE』ツアーはもちろんですけど、海外にも行かせてもらって、Kalafinaらしくライブ活動を活発にできた年でしたね。バンドサウンド、そしてアコースティックサウンド、というのがメリハリよくやらせてもらったのもあって、両方とも噛み締めることができた気がします。

――なるほど。

Wakana:それまでやってきたアコースティックの6年間があったし、デビュー2年目からスタートしたバンドスタイルでの9年間があったから、どっちのスタイルのライブでも切り替えていけた気がします。そして武道館という日がその集大成になったんですよね。当日はミュージシャンの皆さんが大集合して、言葉では言い表せないほどのものがありました。1月23日へのカウントダウンは、血が逆流するぐらいゾワゾワしてましたね(笑)。 その日が来るのが楽しみで仕方なくて、武道館の一曲目に歌った「ring your bell」は本当に興奮しましたね。待ちわびていたんですよ、2017年1月23日からずっと。

Hikaru:2017年は本当にたくさんライブさせていただいて。本来10周年で他のアーティストさんがやるような、今までの歩みを振り返ったりとか、ファンクラブイベントもやらせてもらったりして。改めて今までのKalafinaと自分の歩みを振り返ったうえで過ごせた1年だったので、よりお客さんとの距離感も考えたなと思っていて。

――確かに9周年で振り返り、新たなチャレンジというものは多かった気がします。

Hikaru:9周年の始まりにKeikoさんが、今年はお客さんのことだけを考えて作っていきますと言ってくれたのもあったし、年始のブログで皆様にご挨拶をさせてもらっているところでその年の目標を書くんですけど、「今年は向き合うことをテーマに1年を過ごしたいと思います」と書かせてもらったのも、2017年がすごく大事な1年になるんだなという自覚があったからこそ、そういうふうに思っていたのかなって。だからすごく濃い1年。まだまだ吸収することもあるし、放出しなきゃいけないものもあるし、人生学びだなとは思っているんですけど、その中でも自分にとって大切な1年にしたいと意識して過ごせましたね。

Keiko:まさしく音楽の旅という年でした。旅をしていくなかで、景色や空気、お客様を感じてその時々に伝えたい想いを歌に込めていく…ブレない音楽の軸があるからこそ、そこにその日の心を込めることができるんですよね…歌い手として、インプット、アウトプットのバランスがうまくできるようになりたかったので、2017年はそんな環境が常にある一年でした。本当の意味での音楽の旅のができた2017年は、感謝しかないですね。

――かなりハードな行程の部分もあったと思いますが、コンディションはいかがでしたか?ものすごい数を歌われて、ひとつのライブに対するエネルギー量もすごく集中度が高そうで、とても大変そうな印象がありました。

Wakana:『Kalafina “9+ONE”』ツアーは15公演あって、『Kalafina Acoustic Tour 2017 ~“+ONE” with Strings』が13公演。その間に世界遺産のライブだったり、ファンクラブイベントだったり、フェスとかにも出させてもらったり。そういう日々の中でふと気づいたことがあって。

――それはどんな事でしょう。

Wakana:よくKalafinaはボイストレーニングしてるんですか?と聞かれるんです。私達は別にボイストレーナーの先生がいるわけではないんですけど、でも常にライブがあって、歌っているから、それがもうトレーニングに繋がっている、そういうことなのかなとも思ったんです。やっぱりライブが多いとどうしても練習が疎かになりがちなんですけど、自分の中ではツアーというものは、初日と最後で変わらないようにしたいんです。でも初日で凄い力を入れていても、千秋楽で代わり映えがないのはつまらないというのも3人の中できっとあって。

――ああ、それはわかりますね、同じクオリティを保ちたいけど、まるで同じものを見せたいわけではないというか。

Wakana:それぞれがどんどん変わっていくものだと思うし、だからこそ常にライブがあることで練習をしなきゃいけないとは思っています。そのためには喉のケアは大事ですね。映画でも言っていましたが、喉ってあまりたくさん練習できるものではないので。イメージトレーニングとかもそうですし、もちろん筋力的なトレーニングで体力をアップさせる部分も大切にして、武道館に臨みました。私は2017年から10周年に向けて仕上げたな、と思いましたね。

――武道館は9曲連続歌唱などもも含む大ボリュームでした。

Wakana:27曲歌ったんですけど、身体は疲れなかったんですよ。それは喉は疲れます、人間だもの!(爆笑) でも身体は大丈夫だったので、それは1年間みんなでこうやって色んなライブができたおかげなんです。1年かけて仕上げるって楽しいなと。

Keiko:すごく壮大で格好良いですね。
Wakana 撮影:大塚正明
Wakana 撮影:大塚正明

――今回映画を拝見して思ったのは、ハーモニーを紡ぐだけでなく、歌うことを諦めなかった3人が、ちょっと自分を振り返ったムービーになっていると思ったんです。その中でもうひとつ思ったのは、10周年に向けての衣装のチェックから選曲まで、打ち合わせ部分も全部入っている内容を見て、このポジションで武道館公演をやれるアーティストになっても、ひとつのライブを作るにはこれだけ時間や努力が必要なんだなと改めて実感したんです。

Keiko:ありがたいですね。

――歌うことを諦めないで努力した結果はこうなるけど、ここまで来ても、これだけ大変だというテキストにも思えて。今Kalafinaにあこがれて歌っている人やカバーしている人、歌手として生きていきたい人たちに、一言コメントを伝えるとしたらなんて声をかけますか?

Wakana:確かに昔のお話をさせてもらった時に、無我夢中だった10代というお話をしたんですけど、なにしたって絶対夢は叶えるという気持ちがあって、それだけ強いパワーを10代の時って持っていたんです。「誰が何と言おうと」とかじゃなくて、「いやいや、あのね!絶対叶うんだよ!もう決まってる事柄だから!」というぐらいの自信があった時期があって。それぐらいのパワーがあると、本当になんでも出来てしまうというか、とにかくやりたいことを全部やろうという風になるんです。

――その気持ちやパワーは今もWakanaさんの中にあるんですか?

Wakana:今もたまに思い出したりはするんですけど、さすがにそうやってそのパワーをもう一度、といったらすごく難しいです。今は今の自分でしかないので。だけど、もしこれをご覧になるお客様が何か一歩足が出ない方がいたとしたら、やりたいことがあるんだけど今の仕事があって挑戦できないという方がいるんだったら、挑戦してみるのも良いと思う、そういうふうに思えたらいいですよね。

――確かにそうですね。

Wakana:もし私たちの姿でそう思ってもらえたら嬉しいし、私たちは10年歌い続けて燃え続ける、燃やし続けることを絶やさなかったので、それはある意味頑張ったと思うし、努力なのかもしれないです。自分ひとりじゃ無理だったし、ふたりがいてくれたおかげで自分はそれを燃やし続けられた。諦めないでいられたというのは人が支えてくれたおかげだと思うので、ぜひ周りの皆さんを見回して、見渡して、自分がどうして今この仕事ができているのか、その夢をどうして追いかけたいのかを、人の大切さを一回考えたうえで挑戦してほしいかな。どれだけ支えられているか、ありがたい環境かも考えたうえで、本当は挑戦してほしいですよね。

――では、Hikaruさんはどうでしょうか。

Hikaru:自分を信じることですかね。映画の中でも話しましたが、誰に何を言われても自分の意思があれば、そこに向かう活力になるというか。何か自分の気持ちがぶれていたら何をしても結局途中で諦めちゃったり、何か失敗したとして誰かのせいにしちゃったりとか、そういうのはしたくなくて。自分がやると決めたことは自分の意思としてちゃんとまっすぐ向き合うというのは大事かもしれないですね。

――なるほど、Keikoさんは?

Keiko:……難しいですね。本当に100人いたら100通りの性格と考えと背景があるから、何かの言葉をかけるってすごく難しいんですけど。でも私は正直な話。ふたりとは違って幼い頃から夢を持っていたわけじゃないので、どちらかと言うとすごく引け目な部分でもあったんですよね。歌手になりたいとか、何をしたいとかいう気持ちが生まれるのも遅かったですし、どちらかと言うと大好きな姉について、姉がやることを一緒に自分も!ってところがありましたから。

――夢の芽生えが遅かった?

Keiko:はい、だからそんなに焦らなくて大丈夫だと思うんですよね。今Wakanaが言ったように、これだ!これだったら打ち込める!楽しくできる!ってことが見つかったら、それに向かっていけば、イコール自分にとっての夢が叶うということになるから。それでいいと思います。それがもし何か叶ったり、「夢叶ってるじゃん」と周りから言われたら、それでもう夢は叶ったってことだと思います。

――やりたいことが見つからないという若い人たちもいますが。

Keiko:よく言いますけどね、普通ですよそれ、私ずっとそうでしたよ。だからこそちょっと自分の身体が動く時とか少し余裕がある時に、色々やってみるんですよね。ただそのエネルギーがない場合は無理しないで、自分が求めさえすれば出会う人や何かで運ばれてくると思うから、焦らなくて全然大丈夫です、という感じかな。

――なるほど……

Keiko:私たちよりご年配の方がこの映画を見てくださった時は、逆に私たちががむしゃらに一個のステージを作り上げるのを見て、ああ懐かしいな、こういう時代もあったな、とか。年齢層によって、見る方によって視点が変わると思うので。Kalafinaとしては、今の自分たちはこうです、というあるべき姿を映してもらっただけなので、メッセージとしてはすごく難しいかなと思うんですよね、何か伝えるというのは。
Keiko 撮影:大塚正明
Keiko 撮影:大塚正明

――10周年を超えて、これからのKalafina、これからの3人は、2018年度をどう過ごしていきたいと思いますか。

Wakana:自分たちが経験してきた10年はもう宝物なので、今は最初デビューした時には想像できなかった未来なんですよね。まさか武道館で10周年を迎えてみんなで歌えるなんて思ってもいなくて。まずバンドさんの生演奏でライブをやるなんて思っていなかった。そういうところからスタートしたKalafinaという存在が色んな人に知ってもらえたというのは本当に嬉しくて。自分たちが見たい夢をちゃんと見れたのかなという気がしています。ツアーをやりたいとか、どこでライブしたいとかは、3人で燃やし続けた情熱があったから生まれた希望、願いだったと思うので、そうやってこれたのはすごく良かったなと思うし、続けていくことの難しさを身をもって体験している3人ですから。

――そうだと思います。

Wakana:今までって3人で同じものを見て生きたわけですよね。でもそれぞれが違うものを見るのはすごくまたドキュメンタリーと同じで興味がありますね。Kalafinaで見てきたたくさんの夢を私たちは全部いっしょに見てきているから、今度は違った夢を、ふたりの夢を私も覗いてみたいです。「I have a dream」の歌詞みたいになってるな。でもどんなものかなと思いますね。

――ずっと、三人は100%ではないにしろ、同じ視点に近いところで活動してますからね。

Wakana:ほぼ同じ視点だと思います。だからこそですよね、個人としての視点は興味があります。

Hikaru:そうですね。10年やってもまだまだだなとやっぱり思えるから、今年は自分磨きをしたいと思います。あとはなんだろうな……一人の人としてまだまだ色んなものを吸収したいな、という欲は尽きないですね。この仕事に就けて、夢叶いましたね、と言ってもらえるんですけど、それで一つ夢は叶ったけど、でもその先まだまだ夢を続けるには色んなことが必要なんだなって思うことだらけで。だからそれを一つずつ自分がやりたいことをできるような自分になれるように、自分磨きをしようかなって。あとは本当にプライベートはオタ活を充実させる!

Keiko:それは絶対できるよ(笑)

――Keikoさんもお願いします。

Keiko:Kalafinaとして活動した10年の環境が、すごく自分を変えてくれた年月だったので、逆にこれ以上自分が変化するのかな、という疑問が湧くぐらいです。この10年があっての今の自分だとするならば、この先の歩みというのはより本物の作品づくりだったり、本物の音楽だな、と自分が魅せられるものに触れて作っていきたいなと。梶浦(由記)さんの音楽と共にあったKalafinaの活動は、本物をみんなで掘り下げていった時間だったんです。やり甲斐ある何かを追求する人生って素敵ですよね!
Hikaru 撮影:大塚正明
Hikaru 撮影:大塚正明

――最後に映画は3月30日公開ですが、興味がある方々にメッセージをいただければと。

Wakana:今のKalafina、今の私たちを映画におさめてもらいました。自分たち自身もすごく面白かったです。それはやっぱり10年間を共にした3人を客観的に見れる、そしてその10年を支えてくれたお客様自身の映画でもあると思って。武道館ではお客様の映像もちゃんと入っているので、皆さんの笑顔が、この日にこうして集まってくれた人たちがたくさん映っているんです。そんな温かい映画だなと思ったのでぜひ、私たちを知ってくれている方にとっての映画でもあるし、知らない方にとったら、私たちの音楽というのは、この3人でしか歌えない音楽だということを本当に自信を持って言えるので、それをぜひ見ていただきたいです。

Hikaru:うーん、劇場に行ってほしい!なんだろう……もう言うことないです、見てください。2週間しかないので、情報チェックして劇場に行ってください。

――Hikaruさんのアニメファンならではのコメントですね(笑)。

Hikaru:アニメ映画だと2週間限定とかで、更に特典とかが付いていたりするのもあるんですよね(笑)。

Keiko:自分たちが思っている以上にライブ映像をふんだんに使ったドキュメンタリー作品になっているので、より音の良い環境で迫力のあるサウンドで、目でも楽しめますし、耳も楽しめると思うので、自分たちが自信を持って言える10年の歩みが音楽で届けられる、そんな作品になっていますので、ぜひ楽しんで御覧ください!

インタビュー・文:加東岳史 撮影:大塚正明

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