「去年の冬、きみと別れ」ギョっとするほど大胆な原作アレンジと味の濃い出演者に掴まれるサスペンス

エキレビ!

2018/3/13 09:45

叙述トリックが多用されているがゆえに、映像化が難しそうな『去年の冬、きみと別れ』。だが、この映画版は見事なアレンジで着地した作品だった。味の濃い共演者に負けず岩田剛典はかなりの善戦ぶり。ガンちゃんさん大健闘である。


原作既読でもギョッとする、大胆な翻案
『去年の冬、きみと別れ』の原作は2013年刊行。2014年には本屋大賞にもノミネートされたミステリー小説である。通常の小説とちょっと異なり、断片的な書簡や資料、書いた人間が異なる文章などで構成された内容で、映像にするのが大変そうなタイプの作品だ。

映画では、この原作をかなり大胆に翻案している。ストーリーの根幹に関わる部分に手が入っているので、原作既読でも「大筋は見たことあるけど、なんかおれが知ってる話と違うぞ……」という感じで見られる。それでも主題は原作とそれほど変わっていないので、だいぶ頑張って脚本を練ったんだろうな……と感心してしまった。

フリーライターの耶雲恭介は、カメラマンの木原坂雄大の取材記事の企画を週刊誌編集部に持ち込む。木原坂は以前、モデルとして起用した盲目の女性を撮影中に焼死させるという事件を起こしていた。容疑者として逮捕されたが、執行猶予がつき釈放。現在も気鋭のカメラマンとして仕事を続けている。しかし、ネットではその事件の際に木原坂が撮影した写真が存在するという噂が広がっており、耶雲は真相を探るべく取材を敢行しようとしていた。

編集者の小林に担当され、木原坂本人や同級生、事件を担当した刑事などに取材する耶雲。しかし仕事にのめり込むあまり、耶雲は婚約者である百合子と険悪に。一方木原坂は百合子に接近し、自分の写真のモデルになるよう促す。

細かい演出を使い分け、原作の凝った構成を再現。謎めいた導入部、タイトルが出た後いきなり「第二章」の字幕が出て「ん? 第一章どこ行った!?」と始まる本編、執拗に映る北村一輝の背中の汗ジミなど、序盤から「これはなんかあるな……」というディテールが山盛りだ。画面に映っている全てが怪しく見える。

しかしストーリーに関しては、やはり原作からの改変が効いている。2時間の映画に収めるため、付け足されたり設定が改変された部分も多いが、個人的によかったと思うのは原作から削られた部分。小説版では「模倣がオリジナルを上回る場合にはどういう契機が必要か」という思索についてボリュームが割かれており、そのために「写真」や「人形」というモチーフが盛り込まれていた。だが、映画ではそのあたりはある程度カットされ、サスペンス映画としてスピーディーな作りに変更。これは英断だったと思う。謎めいたタイトルの意味がわかるシーンも、よりエモく映像ならではの処理に。全体的に「原作は原作でいいけど、映画にしかできないことをやったろうぜ!」という気持ちが感じられて好印象である。

イケメンもそれ以外も、全員味が濃い出演者たち
『去年の冬、きみと別れ』の主演はガンちゃんさんこと岩田剛典である。ハイローを見て頭がおかしくなって以来、「漠然とEXILEのイケメン」から「三代目J Soul Brothersの岩田剛典さん」という区別がつくようになった。本作では野心的なフリーライターの役。部分的に芝居がハイローの時みたいになっちゃっており、「ガンちゃん、その感じだと敬語が使えるようになったコブラにしか見えないよ!」という場面もあったが、難しい役なのに大変頑張っていたと思う。当然のように脱がされていたので、イケメンの裸が見たい人も期待して大丈夫だ。

しかし、さらに強烈だったのは謎のカメラマン役の斎藤工である。この人、勘違いしてアーティスト気分になっちゃったカメラマンの芝居が板につきすぎている。ガンちゃんさんに向かって「キミ、面白いね」とか言い出した時には「夢小説かよ!」と一人で盛り上がってしまった。言い回しが全て横柄でキザったらしく、聞いてないのに作品論めいたことを語り出す、無精っぽくカットされたヒゲの生えたアーティスト風の業界人……。いるよな~、こういう人! しかもこの「勘違いしてアーティスト気分になっちゃったカメラマン」という芝居はストーリーの根幹に関わっているのには唸らされる。おまけにこっちも当然のように脱がされており、乳首がスクリーンにドカンと大写しになっていた。なかなかあんなに巨大な乳首を見る機会はない。

更に言えば、この映画は脇役がなんだか妙に濃い。『冷たい熱帯魚』以来「登場するたびに人を殺しそうで心配になる役者」と化したでんでん(本作では人は殺しません)や、異常に胡散臭いけど別に悪人役ではないMummy-D、少ししか出てこないのに妙に存在感のある円城寺あや等、ちょいちょい味付けの濃い人が出てくるのが嬉しい。

『去年の春、きみと別れ』はサスペンスとしても充分ボリュームがあり、単なるガンちゃんさん頼みのアイドル映画ではない。が、やっぱりイケメンや味付けの濃い顔が出てくると画面がギュッと締まる。ストーリーだけではなく、出演者の顔や芝居も見応えのある作品なのだ。
(しげる)

【作品データ】
「去年の冬、きみと別れ」公式サイト
監督 瀧本智行
出演 岩田剛典 斎藤工 山本美月 北村一輝 浅見れいな 土村芳 ほか
3月10日より公開中

STORY
結婚を控えたフリーライターの耶雲恭介は、盲目のモデルを焼死させる事件を起こしたカメラマン木原坂雄大への取材を開始する。仕事にのめり込むあまり婚約者の松田百合子と険悪になる耶雲。一方木原坂は百合子に接近するが……

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