『Fate』シリーズとはなんぞや?『Fate/Grand Order』に至る聖杯戦争の系譜を改めて紐解く

SPICE

2018/3/13 18:00


大人気のゲーム『Fate/Grand Order』を含む『Fate』シリーズについては、おそらくはこの記事をお読みの皆様もご存知だろう。しかし、このシリーズはそれぞれ異なる設定の無数の作品によって構成されており、個々がどのような内容でどういう順番で触れていけば良いのかわからず、困惑しておられる方も少なくないものと思われる。そこで、この記事では『Fate』シリーズの全貌について簡単に説明していこうと考えている。『Fate』について詳しくない方はもちろん、『Fate』ファンの方もどうかご一読いただきたい。



さて、いまや膨大な作品を内包するに至った『Fate』シリーズは、2004年、PCユーザー向けに18歳以上向けのゲームとして発売された『Fate/stay night』に始まる。これは『月姫』で同人ゲーム史上に残る大ヒットを記録したサークルTYPE-MOONの初商業作品であり、18歳以上向けゲームとしてはやはり記録的なヒット作となった。

主に物語を綴ったシナリオライターは奈須きのこ。『Fate』シリーズは彼が高校時代にノートに書いていた物語からスタートしていると言われている。その舞台となるのは、西暦2000年ごろ、日本の地方都市である冬木市だ。この平凡な町に七人の魔術師「マスター」と同数の使い魔「サーヴァント」が集まってきたことから物語は始まる。

『Fate』シリーズの全般的な基本設定として、マスターとサーヴァントがペアを組んで戦うというシステムがある。『Fate/stay night』の場合、マスターによって召喚されたサーヴァントはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七つのクラスとして地上に現れる。各々のクラスには特徴があり、またマスターは「令呪」と呼ばれる特殊な魔術を用いて自分のサーヴァントを三回だけ強制的に従えることができる。

基本的にはマスターはサーヴァントを支配する立場にあるわけだが、サーヴァントたちは「アーサー王」や「クー・フーリン」といった歴史上の英雄たちが使い魔としてこの世によみがえった強力な存在であり、ときにはマスターに反旗をひるがえすこともある。また、サーヴァントは「宝具」と呼ばれる強力な得意技を使うことができるのだが、それを使用することは秘密になっている正体の発覚につながり、弱点が相手にバレることもありえる。この緊張感に満ちた設定が『Fate』シリーズのひとつの見どころだろう。

『Fate/stay night』では、冬木市に集結した七組のマスターとサーヴァントたちは、どのような願いでも叶えられるという「聖杯」というアイテムを巡って、「第五次聖杯戦争」と呼ばれる壮絶な戦いを繰り広げることになる。この作品の主人公である衛宮士郎はほとんどまともに魔術を使えない未熟な魔術師に過ぎないのだが、ささやかな偶然から召喚に成功した女性騎士セイバーとコンビを組んで聖杯戦争のただなかへ乗り出していく。彼女の正体が何者であり、どのような背景を持っているのかも知らないまま。



『Fate/stay night』は「Fate」、「Unlimited Blade Works」、「Heaven's Feel」の三つのルートから成り立っており、それぞれセイバー、遠坂凛、間桐桜がメインヒロインとなっている。のちにこの三つのルートはすべてがアニメ化されることとなる。なかでも「Heaven's Feel」は三部作の劇場版アニメとして製作され、2017年に公開された第1章はこの種のアニメとしては爆発的といっていい観客動員数を記録しているようだ。

『Fate/stay night』発売から2年後、そのファンディスクとして『Fate/hollow ataraxia』が発売されることになる。これは壮絶を極めた第五次聖杯戦争から半年後を舞台に、同じ四日間が延々とループする世界での生活を描いた作品である。言ってしまえばファンディスクに過ぎないとはいえ、その内容は単なる『Fate/stay night』の補完という次元を超え、独立した作品として楽しめるものに仕上がっている。『Fate/stay night』ではシリアスに戦っていたマスターやサーヴァントたちが時にお笑いに走り、時にほのぼのとした日常を演じているあたりが見どころだろうか。

ここまでが『Fate』シリーズのいわば「正編」。ここから、『Fate』シリーズはさまざまな作家たちによって多様に展開していくことになる。たとえば、のちに『魔法少女まどか☆マギカ』のシナリオライターとして広くその名が知られることになる虚淵玄による小説『Fate/Zero』。この作品、ひとことで語ってしまうなら外伝、あるいは番外編ということになるのだが、虚淵の才能と筆力を得て、実に凄まじいまでの壮絶な物語が展開している。



物語の主人公は衛宮士郎の義父である切嗣。そしてその背景となるのは『Fate/stay night』からさかのぼること10年前に繰り広げられた「第四次聖杯戦争」だ。この聖杯戦争には、のちの第五次聖杯戦争でも活躍することになるセイバーや、英雄王ギルガメッシュのほか、豪放磊落な征服王イスカンダルなども登場し、その面白さは『Fate/stay night』に勝るとも劣らないとも言って良いだろう。実際、この小説もまたアニメ化され、絶大な人気を博している。

そして、この作品以降、『Fate』シリーズは複数の作家の手によって「シェアードワールド」的に展開していくことになる。シェアードワールドとはつまり「シェア(共有)された世界」の意味で、同じひとつの世界を舞台に複数の書き手が作品を生み出すことを指す。海外ではロバート・アスプリンの主導にる『Thieve's World』、ジョージ・R・R・マーティンが編纂者となった『ワイルドカード』などが有名だ。

『Fate』シリーズもこれらの例に倣ってか、ひとつの設定のもとで複数の作家が書いているわけだが、特徴的なのはそれぞれの作品は並行世界的な関係にあって、決定的な関連があるような、ないような、微妙なところだという点だろう。アルトリア・ペンドラゴンやロード・エルメロイ二世など、共通する登場人物が出てくる場合もあるが、多くの場合、それぞれの作品は異なる主人公と登場人物によって成り立っている。

また、アニメ、マンガ、ゲーム、小説と、さまざまなメディアにわたって成立していることがもうひとつの特徴で、おそらくその意味では日本で最も成功した「シェアードワールド」ということができると思う。いまではこのシリーズの作品数はちょっと数えるのも大変なほどで、しかもひとつひとつの作品がマンガ化、アニメ化されるなどして人気を博している。

それでは、このシリーズの何がそれほど面白いのだろうか。ひとつには、「歴史上の登場人物が現代に召喚されて戦い合う」という基本設定の妙がある。これはつまり、歴史人物の数だけ物語が作れることになるわけで、事実上、無限のパターンが約束されているといえる。理屈の上ではソクラテスだろうがナポレオンだろうがサーヴァントとして登場する可能性があるわけだし、実際、シリーズが進むととても戦闘力があるとは思わない作家やら音楽家までが物語に登場している。

さらに、これらの人物は当然ながら過去の悲劇的な物語を背負っている。たとえばアーサー王なら、自分の王国を救うことができなかったという設定が背景にあるわけである。多くの場合、こういったバックグラウンドが英雄たちを戦いに向かわせる動機となっていて、そのため、きわめて重厚な物語世界が成立している。



もちろん、ただ異なる過去の人物を召喚して戦わせれば面白いというものではない。それぞれの作品では、「聖杯戦争」に対しその作品なりのオリジナルな解釈がほどこされていて、ひとつとして完全に同じ設定の作品はないといって良い。

たとえば東出祐一郎による小説『Fate/Apocrypha』は、「赤」と「黒」というふたつの陣営にそれぞれ七組ずつ、合計十四組のマスターとサーヴァントが属し、戦い合うという設定になっている。ここまで登場人物の数が多いと作者も読者も混乱してしまいそうなものだが、そうはならず、きちんと完結しているあたりはさすが『Fate』シリーズというべきだろう。ひとつひとつのシリーズが過剰に長くならず単行本数巻、ゲームなら一作で完結しているあたりもこのシリーズのとっつきやすさの原因かもしれない。

『Fate』シリーズの核となる設定を作ったのは奈須きのこだが、このシリーズはもはや彼ひとりの作品ではない。たとえば『ガンダム』シリーズがそうであるように、ひとりの作家が生み出したコアを中心に無限に広がっていく無数の世界が成立しているのだ。それぞれの作品がひとつの「根」を共有しながら、どこまでも枝をのばしていく、そんなイメージが『Fate』シリーズのイメージに最も近いことだろう。

さて、数ある『Fate』シリーズのなかでも、いま最も人気を集めているのがソーシャルスマートフォン向けゲームRPGである『Fate/Grand Order(以下:FGO)』だ。いったいなぜ『FGO』はここまで成功したのだろう?まずは例によって奈須きのこが生み出した気宇壮大な初期設定の魅力が挙げられる。この作品は数ある『Fate』シリーズのなかでも最も壮大と言っていい設定を持っている。ひとりのサーヴァントと契約することが限界だったいままでのマスターたちと違い、この作品の主人公は無数のサーヴァントを従えることができる。





そして、彼/彼女は滅びに瀕した人類を救うため、本来は存在しないはずの過去で、人類滅亡の原因とされている七つの「特異点」へ向かうのだ。その先では、さまざまなサーヴァントたちが彼の仲間として、あるいは敵として待っている。

サーヴァントはいままでの『Fate』シリーズで登場したことがあるものたちも数多くいる。つまり、有名な『ポケモンGO』が『ポケットモンスター』の長い歴史を背景にしているように、『FGO』は『Fate』シリーズの十年以上にわたる展開をもとに初めて成立する作品なのである。

10年以上にわたって作品を展開してきただけに、いままで『Fate』シリーズに登場してきたサーヴァントたちは膨大である。その種類にしても、アンデルセンもいれば切り裂きジャックもいるという調子で、実に多彩としか言いようがない。また、世紀末ロンドンを震撼させた切り裂きジャックが幼く可愛い少女の姿であったりするあたりもこの作品の魅力のひとつだろうか。

その上、奈須きのこが書いたベストセラー小説である『空の境界』の主人公もゲスト出演していたりして、もうほとんど何でもありという雰囲気だ。その意味では、『FGO』は『Fate』シリーズの総決算、究極のクロスオーバー作品と言えるかもしれない。

とは言え、『FGO』はそれ単体でも完成しているゲームだ。『FGO』を楽しむために過去の作品をすべてチェックする必要はないと思う。『Fate』シリーズの個々の作品はあくまでそれぞれが独立している。気になる作品から手を付けていっても何の問題もないだろう。いまから楽しむなら『FGO』から入っても良いし、『Fate/stay night』や『Fate/Zero』のアニメから入るのも良いだろう。とにかく気負わずにつまみ食いする感じで楽しんでもらえればそれで良い。どの作品も面白いことは保証する。

シリーズのなかには、『Fate/stay night』のヒロインのひとりであるイリヤスフィールを主人公に、『Fate』が、なんと魔法少女ものになった『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』や、そもそも聖杯戦争から離れ、料理マンガを展開している『衛宮さんちの今日のごはん』といった作品もある。何なら、これらから『Fate』を体験していっても特に問題はない。『Fate』の宇宙は広大だが、決して外に対し閉ざされてはいないのだ。

それでは、健闘を祈る。良き聖杯戦争を!
文:海燕

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