アカデミー賞授賞式が史上最低の視聴率!視聴者が投げかけた現実[後編]

Movie Walker

2018/3/13 15:15

現地時間の3月4日に開催された第90回アカデミー賞授賞式の視聴者数は約2650万人と、2008年に次いで最低だった昨年から約20%もダウン。米調査会社ニールセンによれば、視聴者数が3000万人を割り込んだのは史上初で、最低視聴率を記録した。

ハーヴェイ・ワインスタインセクハラ問題をきっかけに、「Me Too」「タイムズ・アップ」のムーブメントが盛り上がる中で、なぜ、視聴率がここまで激減してしまったのか。

授賞式の前に、米ABCテレビ以外に恒例でレッドカーペットをオンエアするE!テレビのホスト、ライアン・シークレストにもセクハラ疑惑が浮上したことで(本人は否定)、視聴率は35%もダウン。これについてメディアは「セクハラの代償」としているが、今年ほど大物スター不在の年はなかった。更に5人の主演女優賞候補者がライアンのインタビューを拒否したことや、ドレスのデザイナーに関する質問がなかったことも手伝って、実際には「ライアンを見るのが不快」なのではなく「見てもつまらない」と判断した人々も多かったようだ。

多くの人々が「セクハラ撲滅などの精神は支持する」としているが、「元妻からDV疑惑を暴露されたゲイリー・オールドマン(本人は否定)が、主演男優賞を取りそうだから見ない」という声はあまり聞こえてこない。

もともとアカデミー賞の視聴者は、時間とお金に余裕のある中流階級(現在は死語)以上の人々が多く、結果として白人が多くを占めてしまっている。また、映画館で映画を鑑賞するためには1人平均15ドル(約1600円)以上のコストがかかるため『ワンダーウーマン』は観ても、ノミネート作品の多くを観ない、知らないというのが未だに現実だ。

『ゲット・アウト』は大ヒットを収めたが、黒人監督による『それでも夜は明ける』(13)が作品賞を受賞しても有色人種の視聴者数が伸びない一方で、アシュレイ・ジャッドなどセクハラの被害者が登場するなど、本来の映画とはかけ離れた激しい主張合戦に嫌気がさした従来の視聴者離れが顕著になっているという。

「一応見た」という人々の中でも、主演女優賞に輝いた女優フランシス・マクドーマンドが行った受賞スピーチは「受賞スピーチではなくアクティビストの講演だった」と賛否両論だ。

また、「『inclusion rider』という言葉を覚えておいて」というスピーチに、複雑な心境を吐露する人たちもいる。これは「映画に登場する人物やスタッフのうち、女性、マイノリティ、LGBTQ、障害を持つ人々がある程度の割合で入っていること」を条件とした要項のことで、出演交渉を行う際に保証されている付帯条件だという。

一般企業や政府にも適用されているこういった条件が映画界にも存在していたことを、業界に35年以上身を置くフランシスも知らなかったと断言しており、今後は徐々に普及していくだろう。

しかし「男女の賃金格差などはなくなるべき。でも娯楽としての映画の陰に賃金格差や付帯条件がちらついてなんか興ざめ」「せっかくの映画祭がピリピリムード。夢を感じない」「賛同しないと反逆者扱い。自由なはずの芸術に規制がかかるのはおかしい」「こんな世の中だから嫌でも色々なことを考える。社会派映画を観て自分で考えたり家族や友人と話せば十分だと思うし、とにかく押し付けられたくない」という本音が見えてくる。

今回の視聴率激減によって、新たなムーブメントの一方で、厳しい世の中でひと時の夢とロマンを求めて映画を観に行っている人々が、皮肉なことに“映画の魔法が半減してしまう”ことを恐れて授賞式を見ないという、新たな現実と課題を突き付けられた。(Movie Walker・NY在住/JUNKO)

https://news.walkerplus.com/article/139998/

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