上坂すみれ、フランス絵画を語る!?「プーシキン美術館展」独占インタビュー

Walkerplus

2018/3/12 17:00

「プーシキン美術館展―旅するフランス風景画」が、2018年4月14日(土)から7月8日(日)まで東京都美術館で開催されます。エルミタージュ美術館をはじめ、世界規模の美術館や博物館が多数存在する芸術大国・ロシア。中でもプーシキン美術館は、フランスの印象派やポスト印象派の名画が多く収蔵されています。

本展では、初来日となるクロード・モネ≪草上の昼食≫をはじめルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ルソーなどの巨匠が描いた風景画65点が集結。パリの変遷、南国へのあこがれ、果ては想像上の場所まで、描かれた風景をまるで旅するかのように巡る展覧会です。

そのプーシキン美術館展の公式サポーターに、声優の上坂すみれさんが就任。プーシキン美術館展の音声ガイドでコラム解説も務める上坂さんは、大のロシア好きとして知られています。今回、音声ガイドの収録を終えた上坂さんに、ロシア通ならではの展覧会の見方や、旅を通したロシアという土地の魅力を語ってもらいました。

――まずは音声ガイドの収録を終えての感想を聞かせてください。

今回、私は音声ガイドのコラムの方を担当させていただきました。この絵を買った人が誰であるとか、絵に出てくる路面電車の説明、プーシキン美術館とはどういうところかなど、そういった豆知識のような部分をやらせていただきまして、すごく楽しい収録でした。

――メインのナビゲーターは俳優の水谷豊さんが務められるんですよね。

今日は(水谷さんの収録音源を)少し聞きながら収録させていただいたのですが、水谷さんの音声ガイドの後に私の声が流れるということですごく緊張しました。

――音声ガイドとアニメのお仕事などのアフレコ時との違いはどのようなところでしょうか?

アニメのキャラクターは少し大げさに喋ったり感情の起伏が激しかったりと、いろいろキャラクター付けを声に乗せたりするんですけれど、音声ガイドはたくさんの方が聞かれるので誰にでも聞き取りやすい話し方を意識しました。説明が分かりやすいよう、ちょっと落ち着いたトーンで、聞いて不快にならないようなガイドを目指すのがポイントでした。

――普段とは少し違った上坂さんの声が楽しみになります。さて、上坂さんと言えばロシア文化に精通しているというイメージなのですが、絵画などの美術史にもお詳しいのでしょうか。

専門というわけではないですが、たとえばロシアの貴族が西洋文化にあこがれてフランスの美術品を収集した、といった歴史については大学で勉強してきました。後は、ドストエフスキーなどロシアの小説に出てくるような貴族はフランス語をしゃべっていて、そういった貴族のたしなみとしてフランスの文化があったんだなと理解していました。

モスクワのプーシキン美術館にはまだ行ったことはなかったのですが、ロシア貴族の様子を今に伝える美術館、その展覧会のサポーターを務めることになって今回はすごく光栄です。

――ということは、収録作をご覧になるのも今回がはじめてなんですね。

そうですね。あまりフランスの風景画の歴史はあまり詳しくないんですけれども(笑)。ただ、私が主に勉強してきたロシア・アヴァンギャルド的な美術とは対照的な絵が多かったので、見ていて新鮮でした。

――今回の展覧会の目玉とも言えるクロード・モネの≪草上の昼食≫は、上坂さんと同じ26歳の時のモネが描いた絵画です。

この絵はすごく貴族的というか、ブルジョア感が漂っていますね。女子のお洋服がめちゃめちゃかわいくって。こういう人々はソ連では生きていけないんですけれども(笑)。こもれびの雰囲気といい、ロシアの実業家など富裕層が憧れるのも分かるような気がします。

――上坂さんから見て、本展覧会の見どころはどこだと思いますか?

モロゾフやシチューキンというコレクターたちが、列車で45時間かけてわざわざ買いに行ったというこのコレクションは、とにかく暖かそうな風景が多いですね。

ロシアではすがすがしい晴れ間はあまり見たことがないのですが、絵画に描かれた青空の感じや自然の色の美しさ、熱帯のジャングルといった行くことのできないところ、そういったものに対するロシアからの憧れのまなざしを感じます。当時のロシア絵画にも素晴らしいものがたくさんあったんですけれども、たとえばそれは農民の生活を描いたものであったりするので。そういった部分で対比になるかなと感じますね。

――“旅するフランス風景画”というタイトルにもあるように、本展は“旅”がテーマのひとつとなっています。そこで、上坂さんのこれまでのロシアでの思い出を聞かせていただければ。

ロシアへは大学のころに行ったのがはじめてで、声優のお仕事を始めてからモスクワとサンクトペテルブルク、サハリンに行きました。サンクトペテルブルクはちょうど白夜の時期に行きまして、ネバ川をボートで下ったりしました。また、私はロシアのスーパーや本屋さんが好きで、モスクワに「ドムクニーギ」という大きな本屋ではたくさん本を買いました。

後は、ノヴォデヴィチ修道院という、ロシアにまつわる多くの著名人のお墓があるところや、ミコヤン・グレビッチ(ミコヤン・グレヴィッチ設計局、MiGシリーズなどの航空機を多数設計した)やエリツィン(ボリス・エリツィン元大統領)の記念碑を見て回りました。サハリンでは、ちょっと遠出して海辺にある日露戦争の記念碑の近くまで行きました。

――多くの土地を回られたんですね。その中で、上坂さんの心に残っている光景はありますか?

ロシアには、野良犬がすごくたくさんいたんですけれど、その犬がソファーぐらいの大きさがあって、しかも5頭ぐらい集まってきて(笑)。「わあ、なんて危険な場所なんだ」と最初は思ったんですが、彼らはすごく大人しい目をしていて、ひなたぼっこをしたり、ソ連時代から出てきたような酔っ払いのおじいさんの話を聞いたりしていて。こういう光景が未だに見られるんだというのがすごく印象的でした。

後、日本の地下鉄では見かけない光景として、スマホをやっている人が一人もいないのにはびっくりしましたね。

――えっ、そうなんですか。ロシアではあまりスマートフォンは普及していないのでしょうか。

みなさん持っているんですけれど、すごく読書が好きみたいで、大体本を読んでいましたね。後はフクロウを肩に乗せている人や、アコーディオンを弾いているお兄さんもいて、現代のような現代でないようなところがありました。東京にいるとなかなか見られない光景ばかりですね。

郊外のスーパーに行った時は、黒パンの袋が床に散らばっていて、それをどこかから入り込んだ子猫が食べていることがありました。そして店員さんがそれを片付けないのを見て、ほのぼのしているなー、と思いました。市街地での印象的な光景が多かったです。

――なるほど。実際に訪れてみて、ロシアへのイメージは変わりましたか。

もともと好きから入ったのであまりマイナスのイメージはなかったんです。でもやっぱり、ロシアの方は実際に会ってみると思っていたよりずっと優しかったです。ちょっと無口で寡黙なイメージがあるんですけど、すごく親切にしてくれたり、劇場のチケット売り場のおばさんが話しかけてきてくれたり。それと、ロシアにはあまり愛想笑いのような文化がないので、思ったことをちゃんと言うようなパーソナリティがすごく素敵だなと思いましたね。

――上坂さんにとって一つの理想郷かもしれないですね。

ロシアで暮らせるかというとハードルが高いんですけど(笑)。ロシア滞在中はディナーの時にあまりお冷が出てこなくてウォッカだけ飲んでいるので酔いが早くまわってしまったり。後は、あまり職業声優さんがいない国なので、住むとなると難しいかもしれません。

――そうなんですか。アニメーション文化はロシアではどのくらい根付いているんでしょうか。

まだまだ本当に一部だとは思うんですけれども、すごく好きな方はたくさんいらっしゃいます。地域ごとに主催してるアニメイベントも、モスクワだけではなく各地にありますし。やっぱりインターネットを介して、世界中の人が日本のアニメを知ってくれているというのが実感できました。ロシアの大学で日本語を勉強してる方も、アニメで覚えたという人が多いみたいで。すごい影響力があるんだなって思いました。

――上坂さんはロシアで日本文化を、そして日本ではこうしてロシア文化を紹介する架け橋のようなお仕事も多くなされています。こういったお仕事をされていることにはどう思われていますか?

少しずつロシアにいいイメージを持ってくださる人が増えてきてすごくうれしいです。やっぱり、ニュースなどではロシアってどうしても怖い印象が多いかもしれないんですけれども、文化的には懐の広い、奥が深い国であることを文化的な面から広げていくことで、ロシアへの見方が一面的にならないようにできるお手伝いができたらいいなと思っています。

――最後に、展覧会を訪れる方へメッセージをお願いします。

プーシキン美術館展はフランスの絵画が中心となった展覧会ですが、その背景にあるロシアのコラムも私が音声ガイドとして紹介しています。ぜひぜひ足を運んでいただいて、ガイドも聞いていただければと思います。(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)

https://news.walkerplus.com/article/140034/

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