「長寿貧困」回避で大注目の「トンチン年金」は入るべき?高齢者も加入可、死ぬまで支給


 前回は、長生きリスクとトンチン年金の概要についてご紹介してきた。今回は、トンチン年金のメリット・デメリットを見ながら本質的な意義について考えてみたいと思う。

●「トンチン年金」のメリットは?

トンチン年金の最大のメリットは、長生きリスクに対応できること。

かんぽ生命の「長寿のしあわせ」のみ年金受給期間最大30年の有期年金となっているが、それ以外の商品は、亡くなるまで年金が受け取れる終身年金(日本生命の「グランエイジ」と第一生命の「ながいき物語」は確定年金もある)である。一定年齢以上長生きすればするほど、オトクになるしくみだ。

設定可能年金額は商品や年金開始年齢などによって異なるが、最高3,000万円までの高額設定も可能。もちろんその分保険料も相当な額になるので、実際には公的年金を補完する上乗せ年金的に契約されるケースが多いようだ。

しかし極端なことをいえば、トンチン年金を契約しておけば、所定の年齢まで長生したとしても、それ以降、決められた年金が一生涯受け取れるわけだから、それまでに手持ちの預貯金を使い果たしてもよいということになる。

となると、リタイアするまでに準備しておけばよいのは、トンチン年金の受け取り開始年齢までに必要な金額のみで済む。リタイア後も安心して預貯金などを取り崩すことができる。もちろん、ストックが十分にあれば、これらの保険に加入する必要もないのだが、高齢になると不動産や株式などは管理や処分などが予想以上に大変だ。それに対して、定期的にフローとして入ってくるなら、それを使ってもまた次があると思えば安心だし、使い勝手も良い。

●「トンチン年金」でライフプランの常識が変わる?

要するにトンチン年金を上手に活用すれば、経済的な見通しや計画がしやすくなるわけだ。まさに、従来のライフプランの考え方を根本から変えてしまう商品となり得る。トンチン年金を取り扱う保険会社の担当者によると、トンチン年金に加入したのは、50代など、これから本格的に年金を準備しようと考えている人以外に、すでに年金生活に入っている60代も少なくないという。

この方々は、現役時代に10年や15年など有期型の個人年金で老後資金を準備しているケースが多い。そうなると75歳前後で収入が公的年金のみとなるため、その年齢が近づくにつれ経済的不安に駆られ出す。トンチン年金は、いずれの商品も告知や医師の診査なしでも申し込みできるので、持病があっても問題なし。高齢者でも加入しやすい(といっても、商品の特性からすれば、病気がちな方は加入しづらいだろうが……)。

●「トンチン年金」のデメリットは?

もちろんトンチン年金にもデメリットがある。長生きしなければ損をするという点だ。例えば、男性より長生きリスクの高い女性の場合、50歳で加入し、70歳で払い込み満了後、年金受け取りを開始する場合、元が取れる年齢は93~95歳。その前に亡くなると元本割れしてしまう。
さらに、現在のような低い料率では、貯蓄性商品としてのオトク度は決して高いとはいえない。

しかし、そもそもトンチン年金は加入者から集めた保険料を、亡くなった人の分まで生き残った人が懐に入れる「ゼロサムゲーム」のようなもの。それを、現在、発売されている商品は掛け捨て嫌いの日本人向けにアレンジされているものだから、いかんせん中途半端感が否めない(まったく新しいコンセプトの商品だけに、金融庁の認可の制約が非常に厳しいという事情もある)。

たしかにトンチン年金の考え方が日本人の気質や文化に馴染みにくいのは理解できるが、長生きリスクを保険でカバーするのであれば、元が取れるとか取れないとか、といった観点で検討するのはちょっと違うのでは、とも感じている。

とくに資産を残す必要の低いおひとりさまや子どものいない夫婦などのなかには、トンチン年金の意義や本質を正しく理解し、あくまでも長生きした場合の保障と割り切れる消費者もいるはずである。実際、周囲にトンチン年金のしくみを説明して、「死んだらゼロですが、長生きしても安心です。こんな年金に入りたいですか?」と尋ねてみると、入りたいという人は多かった。

●公的年金でも長生きリスクを軽減できる!

ただ、長生きリスクに対応できるのはトンチン年金ばかりでない。

身近な国民年金や厚生年金といった公的年金でも受給方法によって、リスクを軽減できることを知っておくべきだ。

本コラムの前編で、年金の繰上げ受給について少し触れたが、公的年金は65歳からの受給が原則。それを、60歳以上65歳未満の間で繰り上げたり、66歳以上70歳未満の間で繰り下げたりして受給できるしくみがある。この場合の年金額は、早くもらうと減額、遅くもらうと増額されて、それが一生涯続く。

したがって、年金が支給される前に「まだ長生きしそうだし、もう少し働けるので生活はなんとかなりそう」というのなら、繰下げ受給の手続きをすれば、年金額は1カ月繰り下げるごとに0.7%増える。70歳まで待てば、なんと42%もアップされた年金が一生受け取れる。

わかりやすく具体的な金額でオトク度を考えてみよう。例えば、65歳からの年金額が100万円だと仮定すると、70歳から繰下げ受給した場合、142万円になる。もしも65歳から70歳までに受け取ったとすると年金総額は500万円だから、その分は約12年で回収できる(500万円÷42万円=11.9年≒約12年)。つまり、82歳まで生きるなら、繰下げ受給したほうがオトクというわけだ。

平均寿命から考えると、男女いずれも繰下げ受給を選ぶほうが有利なはずだが、厚生労働省のデータによると、実際に繰下げ受給を選択する人はわずか1.4%にすぎない。一方、損をしてしまうのに、繰上げ受給を選択する人は、年々減少しているものの35.6%と、結構な割合だ(図表参照)。

しくみの認知度の低さもあるだろうが、このあたりにも「もらえるものは確実に早くもらっておきたい」という日本人の気質がよく表れているような気がする。

いずれにせよ、トンチン年金は社会的なニーズの高い分野だけに、今後も参入する保険会社が出てくる可能性は高い。さまざまなニーズに応じて、50歳未満からでも加入できたり、返戻率をアップさせたりといった、よりトンチン性を高めた商品が登場することを期待している。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

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