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超のつく名門・オックスフォード大学のカレッジは「村」そのものだった。

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多くの課題を抱えながらも、英国の経済状況はここ20年間右肩上がり。人口や資源において優位とは言えないはずのこの国が、なぜ国際社会においてこれほど高い地位を維持できるのでしょうか?

書籍『現役官僚の滞英日記』(PLANETS)の著者である現役官僚の橘宏樹氏が、自身が名門大学で過ごした2年間の滞英経験をもとに、英国社会の"性格"に迫ります。

前回は、英国社会の歴史とそのエリートたちが考える戦略について紹介しました。今回は、橘氏が留学の半分を過ごしたオックスフォード大学のカレッジ制度について。

ロンドンからオックスフォードへ



LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス)での修士課程を終えてすぐ、僕はロンドンからオックスフォードへと引っ越しました。ここはとてもコンパクトで静かな街。緑も非常に豊かです。

大学所有の庭園では、手入れの行き届いた植え込みに多種多様の花々が咲き、リスが走り回っています。象牙色とも蜂蜜色とも呼べる分厚い石造りの壁面のところどころを蔦の蔓がびっしりと覆い、古めかしさを際立たせています。

秋が深まるにつれて端から赤く染まっていく蔦の葉は大変美しい。学内の庭園やラグビーのグラウンドでは植え込みのブラックベリーやリンゴ、栗の実がなり、木々の間を猫がすりぬけていきます。

僕はカレッジの寮に入りました。ロンドンで住んでいた寮より少し安い家賃で、広さは2倍くらい。街の中心部から自転車で約10分の場所にあって、ひときわ静か。窓の外は植え込みに囲まれていて、蜘蛛が毎朝新しい巣をつくっています。

生活とコミュニティが、建物内だけで完結



さて、オックスフォード大学の「カレッジ制度」についてご説明しましょう。

オックスフォードでは、すべての学生は、学部やコースと同時に、38ある「カレッジ(学寮)」(または6つのキリスト教系の「ホール」)という組織のどれかに所属します。

カレッジとは、端的には、教育機能も備えた寮のようなもの。学生は学部とカレッジに二重に所属し、学部の指導教官とカレッジの指導教官から、それぞれ指導を受けることになるわけです。

オックスフォードとケンブリッジの、特に学部生の教育においてはこのカレッジが中心的な役割を果たしていて、全寮制の下で全人格的な教育が行われます。ちなみに、カレッジ間の経済力や施設の良し悪しなどには結構格差があります。

とはいえ、なんとなくですが、過去数百年に首相を何人も輩出したような最も伝統ある類のカレッジは、イギリス人でエリート高校を出ていないと入れなさそうですし、一方で設立年も新しく建物もコンクリートで、少し郊外に立地するカレッジは、多国籍文化でオープンな雰囲気がある、といったカラーの違いはかなりあるように思います。なお、オックスフォード大学はケンブリッジ大学よりは、こうした格差が小さいと聞きました。

僕も、カレッジはどういうものか、ある程度は事前に聞いていましたが、実際に入寮して約1ヶ月が過ぎたころ、あらためて体感したのは、ここだけでひとつの「村」だと感じられるということです。

生活とコミュニティがこのカレッジの建物の中だけでほとんど完結してしまえるのです。全体で何人が住んでいるのかはよくわかりませんが、数百人の老若男女が生活していると思います。学生のみならず、様々な持ち場で働く大学の従業員や大学の教職員が家族と一緒に暮らしています。

カレッジには多種多様な施設が揃っています。誰もがくつろげるコモンルームやランドリー、自販機などはLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)の寮にもありましたが、こちらは教育機関でもありますから、講演などが行われる大ホールのほか大小のゼミ室があり、カレッジの幹部の教授らのオフィスも並んでいます。

コモンルームでは無料でコーヒーが飲めますし、置いてあるテレビはスカイTVに加入しているので欧州サッカーを観ることができます。ピアノが置いてある音楽室、大小様々な工具が備え付けられた工作室、非常に整備されたサッカーグラウンドやテニスコートの他にも、バーベキュー場、さらに春夏は非常に美しかろう花園があります。

多目的室ではヨガの講習があったり、いろいろな宗教の儀式が行われていたりします。かなり大きな図書室もあって、24時間勉強に使えるのがとても便利です。書架のラインナップは専門書というより伝記や歴史、アート、文学小説など人文学系が大半です。

大きな食堂は、高くも安くもない値段ですが、毎日朝・昼・晩と食事ができますし、バーも併設されていて毎晩賑わっています。さらには全員が徒歩5分以内の病院と歯医者に登録して医療サービスを受けることも可能。特に、保育園まであることには驚きました。

無料のミニバスもほぼ丸一日20~30分おきに発着しています。寮では毎週金曜日に共有の台所やトイレのみならず自室まで掃除のおばさんが入ってきてくれます。このように環境は、LSEの寮生活よりもかなり恵まれていると言ってよいでしょう。


『現役官僚の滞英日記』著:橘 宏樹(PLANETS)

欧州最古の名門総合大学「オックスフォード」、英語圏最高峰の社会科学研究機関「LSE」の両校に留学した若手官僚が英国社会のエートスをリアルタイムに分析。大英帝国が没落してなお、国際的地位と持続的成長を保ち続けるイギリスに “課題先進国" 日本再生のヒントをさぐる、刺激的な留学ドキュメンタリー。


橘 宏樹(たちばな ひろき)

官庁勤務。2014年夏より2年間、英国の名門校LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス)及びオックスフォード大学に留学。NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。twitterアカウント:@H__Tachibana

イギリス政治を見ていると『風の谷のナウシカ』を思い出す


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