恋愛より絶対仕事、女優を目指す佐賀県出身女子/上京女子・ケース11

wezzy

2018/3/12 14:15


 東京には、夢追い人がたくさんいる。中でも女優やモデル、お笑い芸人や歌手など、努力が報われるとは限らず、大勢の志望者に対して極端に経済的成功者が少ない分野で夢を実現しようとすることは、一見無謀なカケのように思われる。

家族から反対されたり、同年代の友達たちが次々に社会の中で居場所を見つけ落ち着いていく中で、自分だけが取り残されているような苦しさは、夢を追う楽しさやトキメキに付随する税金のようなものなのかもしれない。

「無謀かもしれない」という不安と焦りに押し潰されそうになりながらも「夢を追いかけられる今が幸せ」と語るのは、一年半前に佐賀県から上京してきた香田由加さん(Twitter:@yuca0712‏)だ。
今日の上京女子/香田由加(24) 教室に行くのが怖かった私を励ましてくれたもの
 由加さんが女優を目指すきっかになったのは、高校時代のいじめだった。バレーの強豪校に入学した由加さんは、低学年にも関わらずレギュラーの座を射止めたことをきっかけに、周りからやっかまれる存在となっていた。

暴力などを振るわれることはなかったが、存在を無視されたり避けられることが続き、精神的に追い詰められていった。教室に入ろうとすると足がすくむようになっていた。家ではいじめのことは言えなかったが、次第に食欲をなくしていく由加さんを見かね、両親は別の学校への編入を促した。

バレーが好きだから強豪校に入ったのに、すぐにやめてしまった自分がふがいなかった。罪悪感に押し潰されそうだった由加さんの気持ちを慰めてくれたのは、趣味の観劇だった。

舞台上で輝く役者さんも、華やかな舞台に立つまでには数々の挫折があることを知って励まされる思いだったという。「私もいつか、あの場所に立ちたい」。バレーに夢中だった由加さんの気持ちは、いつのまにか女優になりたいという夢に代わっていった。
週6日働き、学費と上京費用を稼いだ
 大学は、表現学科という演技を学べるクラスがある福岡の短大に進むことに決めた。教育熱心な家庭に育ったため当然両親からは反対されたものの、「学費はできるだけ自分で払う」という由加さんの熱意に押され、両親はしぶしぶ受け入れてくれた。そのため、由加さんは週に6日働いて学費を捻出した。時給680円という福岡の最低賃金のバイトだったため簡単には稼げない。店長に直訴して、一日12時間働いた日もあったという。

しかし、大学在学中からオーディションを受けていたが、落ち続ける日々が続き、卒業後も女優への足掛かりは掴めなかった。同じ大学で女優を目指していた友達が夢を諦める姿も見てきた。それでも、夢を諦めることはできなかった。

大学を卒業してしばらくしたある日、上京費用が貯まったことを機に、思い切って上京することを決めた。当然、女優としての仕事はゼロからのスタート。上京したからといって女優への道が開けることが約束されているわけではないけれど、少しでも可能性がある場所に身を置きたかった。

オーディションに合格しても、経済的問題は消えない
 上京後は誰の助けも借りることは出来ないため、まずは自分の生活費を稼ぐ必要があった。オーディションや稽古などで休んだ時でも対応できるよう、シフトの自由度が高いバイトをすることになった。それでもオーディションは一向に受からない。夜はひとりで泣くことが多かったという。

「月が綺麗だな、と思うと、なんだか『今ひとりなんだ』という気がして、孤独を感じるんです。一年前はああだったな、とかいろいろ考えてしまって。もし、ちゃんと働いていたら今ごろ何してたんだろう、とか」

「大丈夫かな。これで正しかったのかな」という気持ちと、「やると決めたんだから、やらないと」という気持ちが交互に襲ってきていたある日、舞台のオーディションに合格。『レディ・ア・ゴーゴー!!』という若手女優が多数出演している舞台でのアイドル役だった。すぐに両親に舞台のことを報告すると、「浮かれないで。それで食べていけるわけじゃないから」と言われたそう。そんなことは自分が一番よくわかっている。だから焦るし葛藤するのだ。舞台の他に、ゲームアプリなどでの声優の仕事も経験したが、それだけで食べていけるには程遠かった。

現在は、舞台の稽古やオーディションを受けつつ、アルバイトを3つ掛け持ちしている。由加さんのスケジュールはいつも一杯だ。

「動いていないと、もったいない。せっかく東京に来たんだから」
彼氏はいたことない。作ったらいけない 
 可愛らしくて小動物のような由加さんだが、これまで彼氏ができたことはないという。

「恥ずかしいとかいう気持ちもあるけど、今は、そんなことをしている場合じゃない、という気持ちのほうが強い」

恋愛と仕事、どちらかを選ばなければならないとしたら、「迷う間もなく絶対に仕事」と言い切った。

「いつかは結婚したいし、恋愛経験がないことで演技でマイナスになることもあるかもしれないとは思うけど、演技のために恋愛するのも違うと思うし」
葛藤は続くけど、来てよかった
 由加さんは、舞台やテレビでオールマイティに活躍できる女優を目指している。

「いつ死ぬかわからないから、時間を無駄にしないように、今できることを精一杯している」と力強く語る一方で、依然として不安は消えない。

「地元に帰ろうかな、と思うことは多い」

「就職したほうが、例えば家族を経済的に支えられたりとか、誰かのためになることもあるのかなって、思う時もある」

それでも東京に来てよかったことだけは確かだという。

「実家にいたら考えなかったことを考えるようになったし、甘えが減った。父や母に心から感謝できるようになった。実家に帰った時には『なんか成長したね』って言われることもあって、自分は変われたんだなって、思うんです」

上京したことで確実に不安な夜は増えただろう。でも、その不安や葛藤があったからこそ、見えるもの、得られるものもある。

「尊敬している声優の佐久間レイさんに言われたんです。『役者はセリフが決まってるけど、日常生活でのセリフは自分で選べる。自分でどんなセリフを選ぶかによって、印象は変えられるし、また仕事したいって思ってもらうこともできる』って。だから、自分の言葉に責任を持ちたい。また会いたいと思ってもらえるセリフを選びたいって思うんです」

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