ダメンズを掴み続けてこのまま老いていく女【#婚外恋愛7】

OTONA SALONE

2018/3/10 17:30



どれだけバッシングされても、決してこの世から消え去らない不倫。

お互い籍を入れないままの恋愛。パートナーが複数存在する恋愛。

恋愛相談家・ひろたかおりが従来の「婚姻」の外にある恋愛と、その心理を傾聴する。

元カレとの再会




— G子(38歳)はいつもオトコ関係でトラブルを抱えている女性だった。

待ち合わせのカフェに呼び出されたその日、外のテーブルでぶらぶらと組んだ足を揺らしながら指にはタバコを挟み、気だるそうにまぶたを半分伏せているG子の姿からはだらしなさが漂っていて、あぁまた何かあったのかと心の中でため息をついた。

「お待たせ」

と声をかけると、無言でこちらを見上げたG子はぱっと目を開いて「聞いてよもぉー!」と甘えた声色で言った。

スキニーパンツにヒールのブーツ、丈の短いライダージャケットを着こなしているG子は、一見すると年齢より少し若く見える。だが、タバコも酒も大好きで毎週夜中まで飲み歩くことがやめられないその肌は、確実に老化を感じさせるシワとたるみが目立っていた。

「ていうか、ちょっと待って。お酒臭いんだけど」

こちらに伸ばされた手の、ネイルのはげた指先を見つめながら思わずきつい声を出すと、腕を引きながらG子は

「あー……ごめん。朝まで飲んでた」

とバツが悪そうに小声で言った。

誰と、と尋ねる気も起こらず、黙ってマグカップのコーヒーを口に運ぶ。

「あ、あのね」

そんなこちらの様子に焦ったのか、G子は手にしていたタバコを灰皿に押し付けると背筋を伸ばした。

「昨日、元カレに会っちゃって」

上目づかいに視線を送ってくる姿は、まるで好きな男に媚びを売る若い女性のようだと思った。

「また付き合うことになったの」

そして、すっと視線を外した。


まともに恋愛ができない弱さ




G子は小さな会社で派遣社員として働いている。

夫婦でコンサルタント業を営む実家はお金があり、ひとり娘のG子が身を寄せていても特に自立を促されることもなく過ごせていた。

G子は20代から10年ほどひとり暮らしをしていたが、恋愛絡みのいざこざを繰り返し、精神的に参ってまともに生活ができなくなり実家に戻っていた。

「もぉ、男運が悪くって……」

その話を初めて聞いたとき、G子は目を合わせないようにしながらひたすらいかに自分がダメンズに好かれるかを延々と述べた。

働かずに金の無心ばかりしてくる男、会えば体しか求めてこない男、実は既婚者だった男。短いサイクルで次々と襲ってくる激情の波を聞いていると、確かにまともな心ではいられないのかも、と感じる。

「でも、ちゃんと愛していたんだよ?」G子は最後に強い口調で言った。それが一番の違和感を残した。

どんな目に遭っても、「風俗なら日払いだから」とまで言われても、G子はその男たちを「愛していた」と言う。まるでそれが免罪符になるかのように。

上手くいかなかったのは、私のせい。きちんと愛してあげられたら、きっと幸せになれていたはず。

精神を病み、親の勧めで心療内科に通っていても、どこかでG子は失敗した恋愛の責めを勝手に背負い込んでいた。周りの誰もが「男を見る目がなかっただけだよ」と口にしたが、その言葉に納得して頷くことは決してなかった。

そして、実家で療養しながら元気を取り戻したG子は、ふたたび男を求めるようになる。

バーをはしごして酔いつぶれながら、そこで出会った素性も知らない男性とホテルに行ったこともある。格の低いホストクラブのようなお店に通いつめ、スタッフのひとりに「喜んで欲しいから」とバケツの底に札束を隠した花を用意したこともあった。

奔放なのではない。まともに恋愛ができない脆さだ。

男を見る目がないのではなく、恋愛が上手くいかないのはそもそも自分を愛していないからなのだ。

だから、ひどい扱いを受けても当然と思い込んでしまう。「こんな目に遭うのは私のせい」とすり込まれた自意識で、相手に気に入られるためだけに尽くしてしまうのだった。

だが、以前と違うのはG子自身が痛みから目をそらすだけの明るさを手に入れたことだ。

ふさぎ込むより発散することを覚えたG子は、何かあったら周りの友人たちに愚痴のような軽い感じで顛末を話していた。抱え込むより捨ててしまうことで、G子は痛みから逃げ出すことを覚えたのだった。

みずから選んでしまう過去の悲劇




「元カレって……」

思わずマグカップを持つ手が止まった。ここ数年、実家で暮らし始めてからG子がまともに付き合った男性はいない。それだけ交際には慎重になったのかと思っていたが、G子からは「恋愛より遊んでいるほうがいい」とだけ聞いていた。

「元カレって、いつのよ?」

G子から聞いていたダメンズたちが一斉に頭をよぎった。

「えーと、もう3年くらい前かな?」

そわそわと肩を揺らしながらG子が答える。それは彼女が両親に頬をぶたれながら実家に連れ戻された時期と同じだった。

「ねぇ、まさか」「でもね!」

私の言葉にかぶせるようにして、G子が声を上げる。次に来る言葉を予想して、マグカップの取っ手を握る手にぐぅっと力を込めた。

「愛しているんだよ?」

あぁ。

また、繰り返すのか。

返す言葉は何もなかった。胸を埋めるのは苦い絶望。それは諦観を連れてきて、一気に体の力が抜けていくのがわかった。

「だから……」

G子は決して目を合わせない。あの頃と同じ。

「また話を聞いてくれる?」

どんなひどい扱いを男に受けようと、それが止まるのは男と離れたときではなく、女性みずからが自分を愛する気持ちを取り戻したときだけだ。

G子はいまだに自分を大切にする道を見つけられずに、過去の悲劇を繰り返そうとしていた。

自分さえ変われば幸せになれるはず。

その信念は、方向を間違えている限り、決して彼女が望むものを連れてはこない。

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