東日本大震災から7年―被災地の「肝っ玉かあさん」の映画

まいじつ

2018/3/10 10:01



映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『生きる街』


配給/アークエンタテインメント、太秦 新宿武蔵野館ほか3月3日から全国公開中
監督/榊英雄
出演/夏木マリ、佐津川愛美、イ・ジョンヒン、堀井新太、升毅ほか

東日本大震災、いわゆる“3.11”の悲劇から7年が経った。いまなお苦難を強いられている人々が多数いるだけに、生半可なことは言えない。そんな中、宮城県石巻市の小さな街でロケされたこの映画は、震災後5年を経た被災地に生きる“肝っ玉かあさん”をヒロインに、“故郷”、“生き続ける”をテーマにした作品だ。

主演は夏木マリ。個人的には若いころの歌手活動でのセクシー路線の『絹の靴下』、『お手やわらかに』などのファンで、アルバムも持っているほど。同じく昭和27年生まれでもあり、勝手に親近感。

そんな彼女が、映画の企画とストーリーに共感して、10年ぶりの映画主演に挑んだという。もともと2009年から支援活動プロジェクトを続けており、もちろん2011年の東日本大震災でも支援活動を展開している。いわば筋金入り。主演を務めるのにふさわしい、と言えよう。

漁師の夫を震災で失った知恵子(夏木)は、帰らぬ亭主をそれでも待ちながら、地元で民宿を営みながら踏ん張って生き続けていた。離れて暮らす子供たちにも被災のトラウマは及んでおり、娘の香苗(佐津川愛美)は子供を持つことを恐れており、息子の哲也(堀井新太)は何でも震災のせいにして人生から逃げていた。久々に親子で顔を合わせたころ、彼らの前にかつて同じ街に住んでいた韓国人青年ド・ヒョン(イ・ジョンヒン)がある人からの手紙を携え、この家を訪ねるが…。

手紙を通じて止まった時間が動き出す


あの日以来止まってしまった心の時間が、この手紙を通じて、どう動き出すのかが見どころ。キャラクターとしてはやっぱり夏木マリの“肝っ玉かあさん”ぶりで、これが絶妙であった。哀しみを心の奥にしまい込み、口ぐせは「けっぱれ!(頑張れ)」。すっかり大地に根を下ろした女性像を演じている。亡き夫役が石倉三郎で、ほとんど遺影しか出てこないが、生前の夫婦喧嘩、夫婦漫才みたいなシーンを見たかった。このふたりなら面白いだろうな、と思うし。

監督は俳優としても活躍する榊英雄。監督作で遠藤憲一が主演した『木屋町DARUMA』、大森南朗が主演した『捨てがたき人々』(ともに2014年)は、社会の底辺に生きる者たちのなりふり構わない行動を過激に描いた作品で、ボクは大好きだったが、対照的に小西真奈美、石橋蓮司主演の『トマトのしずく』(2017年)や本作などヒューマンな家族映画も撮ったり、守備範囲の広い人のようだ。

今回“いい人しか出てこない”のが、ヒネくれ者としては多少物足りなく感じるのだが、榊作品はどちらかに徹するのが身上、と理解した。

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