簡単に使いこなせない「防災セット」、いかがですか?・その2

日刊Sumai

2018/3/9 21:30



発売されたライフライン・サポートパック
ーー前回は、この防災セットのコンセプトを伺いました。
一般的な防災セットは出番がないことを願いつつ、部屋の隅に置いておくものです。
それに対してこのセットはそれぞれのグッズを普段から使い込むことで、万が一の状況になったときでも生きられるスキルが身につくというものです。
コンセプトの一つにファッション性を持ち込んだのも画期的だと思います。

コンパクトで扱いやすい「ソーラーチャージャー」
それでは一つ一つのグッズについて教えてください。
まずはバッテリーですね。

ソーラーチャージャーでスマホを充電できる
田村:ソーラーパネルとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた「ソーラーチャージャー」です。
USB端子がついているのでスマートフォンやタブレット端末の充電ができます。
日の当たる場所に置いておけばよいだけなので、取り扱いが楽です。
またLEDライトもついていますので、夜間の照明としても利用できます。

ソーラーパネルの反対側にはLEDライトを内臓
ーーいまや私たちの生活になくてはならないスマホを充電できるのは、停電時に心強いです。
このサイズなら旅行にも持っていけますし、オフィスの窓際に置いてチャージしてもオシャレです。

川の水を飲料水にできる「浄水フィルター」

次に「浄水フィルター」ですが、資料によれば、このフィルターは薬品や動力を必要としない上にフィルターの交換が不要で、有害な病原菌を99.999%除去できる世界最高レベルの製品(※1)とのこと。
しかも軽くて小さいながらも濾過能力は38万リットル(筆者注:小学校の25Mプール約1杯分に相当)。すごいですね!
寒川:これを使えば、川の水が飲料水となります。
田村さんと一緒に開催している防災体験型プログラムでは、参加者と一緒に多摩川の水を濾過し、煮沸してココアを入れて飲みました。
ーー私も見学しました。オレンジ色のバッグを背負った子どもたちが河原を歩いているのはかわいかったですが、事前にプログラムの内容を知らなかったので正直ビックリしました。
煮沸前の濾過した水を少し飲ませてもらいましたが、なんと表現したらよいか……濾過しても川の水はやっぱり川の水で……(笑)。
水道水やミネラルウォーターとは違いました。

多摩川の水をペットボトルに汲んで

フィルターを装着して濾過

キレイになったかな?
寒川:違いますね(笑)。でも、先ほど資料をお読みになった通り、有害な病原菌はフィルターを通り抜けられません。
体験プログラムでは心配に思う方がいると思うので煮沸しています。
それでも不安に思う参加者にはミネラルウォーターを沸かして飲んでもらっていますが。
田村:個人差はありますが人は2日間ぐらいは何も飲み食いせずとも生きていけると言われています。
でも水は最低でも2000mlは摂取しないと様々な健康リスクが高まります。
このフィルターはそれを回避できるかもしれない道具なんです。
寒川:備蓄している水との併用も可能です。
例えばどうしても手や顔を洗いたい時に、このフィルターがあれば使った水を流して捨ててしまうのではなくリサイクルできるようになるんです。

牛乳パックでお湯を沸かせる!火おこしができる「ナイフセット」

左の黒い棒がフェロセリウムという発火材。ナイフは小ぶりで手になじみやすい
寒川:次に火おこしができる「ナイフセット」です。
そもそもライターやマッチがあればいいのですが、それが手に入らなかったり濡れて使えなかったりする場合に登場する最後の手段です。
付属の黒い発火材をナイフの背で勢いよくこすることで約3000℃の火花が飛んで木屑などに着火できます。
濡れても火花が飛ぶので、着火するものさえ濡れていなければ火を起こせます。
前回お話しした通り、これは使いこなしが必要です。

紙パックをナイフでしごいて綿毛状にし、そこに火花を飛ばす
体験型プログラムでは牛乳パックをナイフの先で綿毛状に毛羽立たせて、そこに火花を飛ばして火起こしをしてもらいます。
なぜ紙パックなのかというと身近にあるからです。
すぐに手に入る材料で火おこしができることを知ってほしいんです。
一発ですんなりと着火できる人は少数です。
でも根気よく何度も紙を毛羽立たせて、火花を飛ばしチャレンジするうちにみなさん成功します。
ーー火をおこしたら湯沸かしです。
寒川:これはケリーケトルというアイルランドのメーカーの製品です。

下の受け皿で火を焚き、その上の二重構造のヤカン部分でお湯を沸かします。
外壁と内壁の間に水を入れるので、内壁全面が熱せられて効率よく数分で0.6リットルのお湯を沸かすことができます。
燃料は紙パックがたった2本分あれば十分です。

ケトルで火を覆うことによってケトル内部が熱せられて、数分でお湯が沸く
田村:紙パックはとても優れていて、燃料としてだけでなく、まな板にもお皿にもなります。用途というのはひとつではないんですね。
例えばボトルは水を入れるために使われますが、逆の発想をするなら水を遮断する性能を持っているということです。
なので口の広いプラスチック製ボトルの中にマッチや紙、濡らしたくない貴重品を入れておけば防水機能を持った保存容器にもなるということです。
寒川:物の機能にとらわれずに隠れている多面性を発見し、臨機応変に応用することがとても大切です。
お金をかけてそろえなければいけない、そろえることが大事と思っている人が多いですね。
しかし、なければあるものでなんとかする、代用品を考える。着想と創意工夫でどのようにでも対応しようという奥深さがアウトドアにはあります。

アウトドアの極意は体温保持。それは災害時も同じ
ーーこれまでのお話をうかがってきて、この防災セットは一つのアイテムが次の行動を促すように構成されていることに気づきました。
浄水フィルターで水を確保したら、ナイフで火をおこし、ケトルでお湯を沸かして体を暖める。そうすることで次への行動の活力になります。
ソーラーバッテリーで電源が確保できたら外部と連絡をとることも、外部から情報を得ることもできる。
LEDランプがあれば電気の途絶えた暗闇の中でも安心をもたらしてくれますし、なんらかの活動もできます。
この防災セットを「能動型」とおっしゃる意味が伝わってきました。
寒川:アウトドアの極意は体温保持だと僕は思っています。
人間は35℃から38℃の3℃の体温の中で活動しています。この体温よりも上がって下がっても活動できなくなってしまう。
これを維持するためにご飯を食べ、焚き火にあたる。暖かい食事や飲み物があれば、なおのこといいんです。
災害が真冬の夜、悪天候の中で起きたらどうするか。
最悪の事態を想定するのは僕たちアウトドアをたしなむ者の習性なのですが、この防災セットはそこから導き出されたものです。

田村:寒い時期に被災し救援物資が届かないときに、自分たちの力で温かいものを確保するのは大切なことです。
暖かい食べ物や飲み物を口にできたら、どれだけ心が安らぐことか。
この防災セットはそのためのものなんです。
なので、棚の奥にしまい込むのではなく、手に取りやすい場所において、普段から持ち出してどんどん使い込んでほしいですね。
火やナイフを日常から遠ざけようとするのではなくきちんと管理すれば有用なものですし、いざというときに役に立ちます。防災体験プログラムで火起こしをしてもらうのはそれを知ってもらうためです。
災害はいつ起こるかわかりません。
僕はそれまでの間に自分や家族友人だけでなく、地域のために自分ができることをしているだろうか、ということを自分に問い掛けています。
自分の問いに対する一つの答えが、このライフライン・サポートパックなのです。
ーーどうもありがとうございました。
※1:水に溶けているカルシウムやマグネシウム、重金属といった溶解固形分やウイルスは除去できません


【プロフィール】
カワサキキャンプ代表 田村寛之さん
18歳から横須賀の米海軍基地の消防士として勤務する傍ら、川崎への引っ越しを機に地域活動を始めた。
ゴミ拾い団体「グリーンバード川崎駅チーム」から始まり様々な活動を通して一般社団法人カワサキノサキを仲間と立ち上げる。
「守る」「育む」「伝える」をテーマにカワサキの魅力を発信し続けており、防災プログラム「カワサキキャンプ」だけでなく
JRとタイアップした川崎の野菜を販売する武蔵小杉駅開催の「カワサキノメグミ」など数多くの地域イベントをプロデュース。
多くの人達の期待を背負ってカワサキの未来をデザインし続ける。「川崎経済新聞」編集長。

ステップキャンプ代表 寒川一(さんがわ はじめ)さん
アウトドアライフアドバイザー。自身が40年近く楽しんでいるキャンプのエッセンスをいかに楽しく人生に取り入れるかを三浦半島から発信している
焚火カフェ、STEP CAMPを主宰 UPI OUTDOOR PRODUCTS アドバイザー
池田書店『新しいキャンプの教科書』
山と渓谷社『CAMP LIFE 焚き火主義』監修
NHK『ラジオ深夜便』定期出演
ライフライン・サポートパック ¥30,000+税
問合せ先 カワサキキャンプ事務局
〒212-0011 川崎市幸区幸町2-593モリファーストビル4F 一般社団法人カワサキノサキ内
TEL:050-3772-7785 e-mail: hello@kawasakinosaki.or.jp
カワサキキャンプ公式サイト
カワサキキャンプ公式フェイスブック

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