最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

バイオSFアクションアニメ『A.I.C.O. Incarnation』村田和也監督インタビュー:再生医療のその先にあるものとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
180306_aico_ncarnation_interview
Image: Netflix

SFであり、可愛らしくもあり、リアルでもある。

アニメ『翠星のガルガンティア』や、『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』で監督をつとめた村田和也監督によるNetflixオリジナルアニメ『A.I.C.O. Incarnation』の独占配信が、2018年3月9日(金)よりスタートします。

制作は『交響詩篇エウレカセブン』、『僕のヒーローアカデミア』、そして古くは『ラーゼフォン』など、骨のあるアニメ作品を手がけてきたボンズ。ボンズ×村田和也監督のネトフリアニメとなれば、それはもう濃い作品になるのは間違いないってなもんで、発表から期待していた人も多いのでは? もちろん僕もそのひとり。



キャラクターデザインが『翠星のガルガンティア』でもタッグを組んだ鳴子ハナハルさんというのも注目要素。

今回は『A.I.C.O. Incarnation』の着想や制作について、村田監督に直接お話をうかがってきました。

180306_murata_kantoku
Photo: ギズモード・ジャパン編集部

──昨年のNetflixアニメスレート2017で紹介されたPVが、とても印象的である意味ではショッキングでした。一話冒頭(上記動画の40秒からが一話冒頭)がそのままPVになっていましたが、あの冒頭はねらったものですか?

村田和也監督(以下、村田):主人公の橘アイコが学校生活をしていて、そこに神崎雄哉との出会いがあって自分の体を取り戻すっていうストーリーを順を追って表現したいと思っていたんです。視聴者にはアイコの心情、視点に乗っかって見て欲しいと思っていたので。

ただ、そうするとアイコ自身が「エリア」の中に入って大変な状況になるという、いわばこの作品の一番メインになる場所に行くのがストーリーの先のほうになってしまうんですよ。なので「この作品はそうした特殊な状況下が舞台ですよ」というのを事前に視聴者に知っておいて欲しいので、ここには「ダイバー」と呼ばれる人々がいて、その人たちが日常的にこういうことをやっていますというのをあえて一話冒頭に持ってきました。

冒頭では研究所のような場所にダイバーが潜入して、「マター」と呼ばれる得体のしれないモノに追われながら危険なミッションをこなしています。アレがないと学園モノ風に始まって、作品の趣旨を勘違いされる恐れがあるので(笑)。
180306_aico_ncarnation_5
Image: Netflix

──エリアと呼ばれる場所が黒部峡谷をモデルにしているのはどうしてでしょう?

村田:この企画が始まった時に、「特殊状況におかれた閉鎖地域に潜入して任務をこなすチームの話」ということですすめていました。はじめは東京のような都市部で考えていたんですけど、そうすると首都圏エリア全体が舞台になってしまって、話がすごく壮大になっちゃうんですよね。そうなると政府の対応や住民避難みたいなことも考えないといけなくて、群衆パニックモノになってしまうんです。プロデューサーからは「チームでのアクションモノ」をやりたいというお話だったので、そのためには個々のキャラクターにフォーカスしないといけない。となると群衆は必要なくて、場所も閉鎖された限定地域が良いと。

そこで、僕自身が昔から好きだった黒部ダムや黒部峡谷がそれに相応しいんじゃないかなと思いました。いまだに日本で最後の秘境という言われ方もするくらい人が入りにくい場所ですし、そういった場所がバイオ研究都市として科学の最先端の中枢であるという世界観は魅力的だなと。

──今作がバイオSFアクションというジャンルになったのはどうしてでしょう?

村田:人体や脳といったものにすごく興味があって、いろんな本も読んでいました。それとは別に、主人公を極限状態に追い込んだ話を作りたいなと思ってまして、そのひとつとして「自分の体を失ってしまった状態」はある種の極限状態ではないかと思ったんです。これをシミュレーションしてみて、もし人工物としての人体を生み出す技術があったら面白いのではないかと。そうした話は以前から考えていまして、今回のプロデューサーのオーダーに対してこの設定が使えるのではないかと思い、以前から温めていたアイディアを全部融合させて作ったという感じです。

──構想自体は以前からあったと。

村田:ちょうど『プラネテス(2003年放送)』に参加していた時期に思いついたもので、じつは『翠星のガルガンティア』を考えていたのとほぼ同じ時期なんです。ふたつの作品をセットで思いついたというか、大舞台の船団のような魅力と、逆に個体レベルにまで焦点を絞った魅力と、両方温めていました。
180306_aico_ncarnation_6
Image: Netflix

──『翠星のガルガンティア』も今作も、完全にハードSFですね。

村田:未来のシミュレーションが好きなんですよね。人類がこの先出会うかもしれない事態や出来事を考えて皆さんに見てもらいたいし、それは僕自身が見たいものでもあるんです。でもSF好きであってSFマニアではないので、ハヤカワSFを端から端まで読破してるとか、そういう人ではないです(笑)。もともと理工系ということでもあるので、モノの考え方がSF向きなんだと思います。

──そうした未来を想定する時に、何かキーワードとなるようなものはあったりしますか?

村田:そうですね…、「こういうのがあったら便利じゃないか?」ということは、キーワードになってるかもしれません。最近は再生医療がすごく研究が進んでいて、ES細胞やiPS細胞、クローニングなど、そういうのが実現化していくと人の人生体験はどんどん変わっていくと思うんです。

今は現実に存在する細胞を改変しているけど、それがDNAと関係なくいちからスタートして人体そっくりのものが作れるようになったら、それこそ自由自在だなと。生命体ベースの工業製品が多種類生み出せるようになる時代になるわけですよ。そういう技術や時代は来ても良いんじゃないかというところからスタートしているので、自分が思うところの「あったら便利かも」が発想のスタートかもしれません。
180306_aico_ncarnation_18
Image: Netflix

──ダイバーの移動がローラー駆動というのも、便利さというところからの着想でしょうか?

村田:人の足で移動しなくちゃいけないことが多々あったり、マターから追われていたりする時に、ローラー駆動なら便利だろうなというところから考えました。あとは作品の制作現場としても、走る絵を描くよりもローラーだとかなり楽だというのもありますね(笑)。

──舞台が2037年の日本というのが、わりと遠くない未来だなと感じました。このあたりのSF観みたいなのはどのように構築していったのでしょうか?

村田:今の再生医療の技術がこのまま発達していったときに、人工臓器や人工生物みたいなものが確実に生み出されるだろうなという感触があって、それは実現が見え始めている技術でもあります。なので、それよりも少し飛んだ先にしておきたいなというのがありました。

アニメの世界のほうが現実より遅れているというのは面白みに欠けるので、DNAによるタンパク質の生成ではない技術によって、自由自在に人工生体が作れるところまでいってる、そんな世界観にしたいなと思いました。SFのバランスとして、あんまり遠すぎる未来にすると他にも変わっているものがたくさんあると思うし描きにくいので、わりと近いけどけっこう進んじゃっているみたいなバランスが良いなと。

──再生医療についてかなり関心を持っているように感じたのですが、監督自身が再生医療についてなにかしら思うところがあるのでしょうか?

村田:ありますね。僕が身体分離のアイディアを思いついた時はまだiPS細胞が無かった頃で、ES細胞はあったんですけどES細胞は受精卵を元にしているので倫理的に問題があると言われていたんですよ。そこで、ES細胞の倫理的な問題が完全に解消される技術があって良いんじゃないかと、そんな風に思って人工生体というのを考えたんです。そこで生まれるものは人が定義するところの生命ではないわけで、工業製品として扱うと思うんです。となると人工臓器や人工身体も作るのは自在じゃないかと思ったのがはじまりです。

──ということは、今の再生医療の延長にあるであろう技術として考えたのですね。

村田:ポジションとしてはそうですね。まずは医療に適用したいなと考えました。
180306_aico_ncarnation_7
Image: Netflix

──2018年の現代から本作の時代(2037年)につながる、設定年表なのがあると面白いかもしれませんね。そういうのはあったりするのでしょうか?

村田:実は作ってあるんですよ、あまりにも長いので出せないんですけど(笑)。過去にさかのぼって歴史を作っておかないと、物語を作る上で整合がとりにくくなるところも出てくるので。いつ南原局長が 桐生博士や黒瀬進たちと共に人工生体技術の開発を進めたとか、いつ黒瀬が南原にフられたとか、そういうのも決めています(笑)。

──アクション面では、マターへの攻撃で有効なものとそうじゃないものがあるのが非常に緊張感がありました。作中での「エビデンス」という設定も、着想元は医療ですか?

村田:マターを根絶するには大元をなんとかしなくてはいけません。末端をいくら攻撃しても死ぬわけではないので、活動を停止させるしかないんです。いわば麻酔薬のようなもので、その麻酔が効くかどうかが境目になってきます。

エビデンスという発想については、今作でSF考証や医療考証をしていただいている千葉昌宏先生という現役のお医者さんがいらっしゃって、その方から教えていただきました。エビデンスとは「科学的根拠」と言う意味で、医療の現場では治療法や薬がどういう症状の患者さんにどの程度効くっていう知識の蓄積みたいなものです。医療の現場ではそれをもとに薬や治療法を適用しているようです。

今作ではダイバーたちが「このタイプのマターにはこの麻酔が効く」という体系化された情報として扱っています。作品が医療ベースなので、それに乗っかって全て発想していますね。
180306_aico_ncarnation_16
Image: Netflix

──キャラクターデザインを担当されている鳴子ハナハルさんとのタッグは『翠星のガルガンティア』以来ですが、もう一度やろうみたいな話は以前からされていたんでしょうか?

村田:僕からプロデューサーチームに対して、鳴子さんのキャラクターでいけないかという提案をさせていただきました。鳴子さんのキャラクターって独特の柔らかさや愛らしさというか、キャラクターそれぞれが持っている人間味みたいなのがあって、僕はそれが好きなんです。今作のマターやエリアといった殺伐なところに入り込む人たちとして、視聴者に親近感を覚えて欲しかったというのがあって、視聴者が心情的に入り込みやすいキャラクターの造形であって欲しいというのがありました。なのでそこは鳴子さんのキャラクターがしっくり来るなと思って。

──そうした可愛いキャラクターがあの世界観で奮闘するというのは、かなりコントラストを感じました。

村田:それもある程度は想定していましたね。

──今作は制作途中でNetflixでの配信が決定したそうですが、何か作品に対してのオーダーなどはありましたか?

村田:全くなかったですね。こちらはTVフォーマットで想定していたんですけど、向こうもそれで良いと言っていただけまして。あと、Netflixさんが今作の内容にすごく興味をもっていただけて、それは驚きでした。こういうハードめなSFで高校生が主人公というのがすごく新鮮味を感じていただいたみたいです。主役のふたりが制服を着ているというところも、新鮮だったみたいです。ハリウッド系の映画だとプロフェッショナルな人たちが主人公になると思うので、そうではないところが新鮮に感じられたのかもしれません。

──Netflixでの配信が決まり、予算やスケジュール面でやりやすくなったということなどは?

村田:Netflixさんでの配信が決まる前に想定されていた放送枠がけっこう前倒しで、2017年の1月あたりの予定だったんです。ですのでその時期に合わせて作っているとスケジュールとしてもキツキツで内容も譲歩しないといけないものはあっただろうなと思います。そこから時期的にかなり伸ばさせてもらったので、監督の立場としては非常にありがたいなと思いました。

──その期間によって生まれたリソースは、具体的にはどんな作業に注がれましたか?

村田:コンテと作画ですね。脚本が最終話まで完成していたとしても、全ての絵の情報がクリエイトされているわけではないので、コンテを切りながら考えないといけないところが山ほどあるんです。コンテを誰かに外注するのも難しい作品だったので、結果的に私が全部一人で描くことになりまして、それもあって時間はかかりました。さらにコンテを作画にしていただくセクションにしても、通常のテレビシリーズ以上の負荷をかけることになったので、そういう意味では時間をいただけてありがたかったなというのはあります。
180306_aico_ncarnation_3
Image: Netflix


Netflixオリジナルアニメ『A.I.C.O. Incarnation』は、2018年3月9日(金)から全世界同時配信スタートです。

Image: Netflix
Source: YouTube

ヤマダユウス型

外部リンク(ギズモード・ジャパン)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

おもしろ最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス