MRJ、360機発注キャンセルの可能性も…販売できぬまま撤退の最悪シナリオの恐れも


 三菱重工業傘下の三菱航空機が開発中の国産初ジェット旅客機「MRJ」でキャンセルが出た。

キャンセルされたのは、米イースタン航空が発注していた40機(オプション分を含む)。イースタン航空は米スウィフト航空に買収され、MRJの購入計画は引き継がれなかった。イースタン航空は4年前にMRJを発注し、2019年に納入が始まる予定だった。この間、三菱航空機の開発が遅れ、イースタン航空への納入のメドは立っていなかった。

MRJは、初号機をANAホールディングスへ13年に納入を予定していたが、当初から7年遅れの20年へとずれ込んだ。納入遅れは1回でも致命的なのに、それが5回も続いた。

MRJはこれまでに計447機(オプション契約を含む)を受注してきたが、とうとうキャンセルが出た。今後は計200機を受注した米スカイウェスト航空をはじめ、大口の注文をつなぎとめられるかが焦点となる。日本航空機開発協会調べでは、17年12月末現在の受注実績は正式契約(確定分)が233機、オプション174機の計407機となっている。オプション分がまずキャンセルの対象になる。

米国のローカル航空会社からの受注の内訳は、スカイウェスト航空が200機、トランス・ステイツ航空が100機、イースタン航空が40機、航空機リース会社のエアロリースが20機。米国からの受注360機は、最悪の場合、全機がキャンセルになる恐れがあるといわれている。

航空専門家は、開発費を回収するには最低でも800機以上売る必要があると指摘している。

三菱航空機は17年3月期決算で、負債が資産を上回る債務超過に陥った。債務超過は同年6月30日の決算公告で開示された。開発の遅れにより費用が膨らんだためで、債務超過額は510億円。累積赤字は1510億円に達した。18年3月期は債務超過、累積赤字ともにさらに膨らむ見込みだ。

MRJの開発コストは、当初予定の1500億円から3倍超の5000億円になると想定されている。三菱重工は開発資金に充当するため、三菱自動車株式の大半を手放す。三菱重工から分離して発足した三菱自動車は不祥事を繰り返し、今は日産自動車の傘下で再建中だ。

現在は日産が34%を出資する筆頭株主で、三菱重工は子会社などを含めて10%出資している。株式の売却先は三菱商事で、売却額は500億円超とみられている。

三菱自動車株式の売却によって得た資金で三菱航空機の立て直しを急ぐことになるが、MRJの見通しは暗い。

ちなみに三菱重工はこれまでも、不動産事業を手掛ける非上場の完全子会社、菱重プロパティーズの株式の70%をJR西日本に970億円で売却している。

●ボーイング=エンブラエル、エアバス=ボンバルディアの2強体制へ

衝撃的なニュースが報じられ、話題になっている。MRJのライバルが相次いで大手航空機メーカーの傘下に入ることになったのだ。

世界の民間航空機産業は長年、米ボーイングがリードし、欧州航空機メーカーはボーイングに対抗してエアバス・グループを設立した。その後はボーイングとエアバスが激しい受注競争を繰り広げてきた。

小型機(リージョナル・ジェット)の市場では、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが市場を分け合ってきた。事実上、この2社がMRJのライバルだ。

ボンバルディアは座席数100~150程度の「Cシリーズ」の開発につまずき、17年10月にエアバスの傘下に入った。Cシリーズは、現行機種に続く新型機の開発構想がない。そのため、格安航空会社(LCC)などで運航している機種が退役時期を迎えれば、ブラジルのエンブラエルに乗り換えることになるとみられていた。

これは新規参入するMRJにとって、千載一遇のチャンスだった。こうした流れのなかで、ボーイングのエンブラエル買収プランが浮上したのだ。

ボーイングはブラジル政府が懸念するエンブラエルの防衛部門に関して、ブラジル政府と協議する方針だという。最大の障害となっている防衛問題をクリアできれば、ボーイングがエンブラエルを買収することになるとみられる。

一方、エアバスはボンバルディアの小型機事業に出資することを決めた。

リージョナル・ジェット市場は今後、エアバス=ボンバルディア、ボーイング=エンブラエルの2強に集約される。この結果、MRJは巨大メーカー2社に挟撃される格好になる。2社に勝てる可能性は限りなくゼロに近いとみる専門家もある。

かつて三菱重工はビジネスジェット機「MU-300」を開発して新規参入したが、1800億円の累積赤字を出して撤退した苦い経験を持つ。MRJが危機に立たされ、MU-300の悪夢がよみがえってくる。

三菱重工の宮永俊一社長は2月6日、4月以降の続投を表明した。「今や戦闘状態。リーダーが代わるわけにはいかない」と話し、MRJの事業化に全力を注ぐ考えを示した。だが、航空機市場の寡占化が進むなか、MRJからの撤退を選択しなければ、傷が大きくなることは避けられないだろう。
(文=編集部)

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