「あの花」「ここさけ」の岡田麿里初監督作品「さよならの朝に約束の花をかざろう」インタビュー

Walkerplus

2018/3/8 15:07

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」の脚本を手掛けた岡田麿里が、初めて監督に挑んだ劇場作品「さよならの朝に約束の花をかざろう」が公開中。制作に「花咲くいろは」などで岡田とタッグを組んできたP.A.WORKS、キャラクター原案は岡田監督たっての希望で「タクティクスオーガ」「ファイナルファンタジーXII」などのキャラクターデザインで知られる吉田明彦が担当、音楽は「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「梅ちゃん先生」の川井憲次が担当するなど、初監督の岡田を支えるために実力派のスタッフが結集した。本作では、10代半ばの外見のまま何百年も生きる長命の一族の少女が、親を亡くした人間の少年の母親となり、様々な困難に直面していく姿が描かれる。今回は、この繊細かつ力強い感情がほとばしる本作について、初めてメガホンをとった岡田監督に、制作のきっかけや作品に込めた想いを聞いた。

――本作が初監督作品となりますが、今作を手掛けられるに至ったきっかけから教えてください。

そもそもは、プロデューサーの堀川さんに、「岡田麿里の100%が出た作品を、いつか観てみたい」と言われたことがきっかけです。本来は、「そういう脚本を書いてほしい」ということだったとは思うんですけど、私はその意図が読み取れず、「どうすれば100%に近づけるのだろうか」と考えました。そもそもアニメ作品は共同作業なので、“誰かの100%”って絶対にありえないんですよね。だけど、“100%を求める作品”というのは作れるかもしれないと思って、監督に挑戦したいと。それから、私が勝手に盛り上がってしまって、企画書を書いて出して、堀川さんに「これをやらせてください」とお願いさせていただきました。やはりファンタジーのオリジナル作品となると、企画が通りにくいこともあり、提出してから2年経って、ようやく制作を始めることができました。

――「監督をやりたい!」と企画を持ち込まれた時の堀川さんの反応は?

それは驚かれていました。私も緊張していましたしね。堀川さんはとても穏やかな方ですが、仕事となるとすごく厳しい面もあるので、脚本家が監督をやりたいなんて言ったら怒られてしまうのではないかという不安もありました。だけど、しっかりと受け止めてくださったんです…。ただし、劇場作品であることが条件でした。それは、テレビシリーズだと、毎週山場がやってくるので、どんなにスケジュールを取っていてもギリギリになってしまうため、何度も来る波をスケジュール的に諦めるジャッジだとか、求められるハードルがまた変わって来てしまうので、劇場作品ならじっくりとできるという意味で。もちろん、その間に勉強をしなさいという面もあったと思います。もう一つは、監督が関わる全てのセクションの打ち合わせに出ることも条件でした。どういう方たちが、どういうお仕事をしているかというのは、知識では知っているつもりだったのですが、実際に触れていくと想像と違った面もあって勉強になりました。

――脚本家として脚本を書くことと、監督をする上で脚本を書くのとでは、書き方が違ってきたのではないかと思います。

そうですね。普段、脚本を書いているだけでは挑戦できないこともたくさんありました。脚本というのは、監督に決定稿として受け取ってもらって、その後どんどん現場に回っていくのですが、コンテなどの作業工程の中でセリフや流れが変わっていくことがあるんですね。それこそ、セリフがそのままでもキャラクターの表情ひとつで印象が変わってしまう。それは悪いことではなくて、受け取ってもらってからの脚本は監督のものだし、映像的にいい結果に繋がることも多いんです。しかし、今回は監督をさせていただいたので、脚本の表情であるとか景色であるとか、そういうところも直にスタッフと話せる。そこが本当に大きな違いでした。たとえば、あまりセリフに頼り過ぎないようにするであるとか、間尺であるとか、多くを語りすぎないような脚本の書き方に挑戦してみましたね。

――他にも、今作で新たな“挑戦”だったところはありますか?

どうしてもアニメ作品は、実写に比べてセリフ量も多いし説明量も多いのですが、それは関わる人が多い共同作業で作っていくものだから。役者さんと言っても声優さんだけじゃなく、アニメーターさんも役者さんなので、すさまじい人数の役者が一人の役を演じていることになる。その全員が同じ認識を持っていないといけない中で、指針となるものを示していくのが監督の立場だと思います。監督がジャッジしたことに、脚本家が口を出したらいけないと今までは思っていたのですが、今回は監督だからこそ、アニメーターさんと接することができるので、いつもより突っ込んだことまで踏み込めたのは挑戦だったと思います。

――そうやって、隅々まで想いが行き届いているからこその“100%”だと。

だけど、“自分100%”というよりは、スタッフみんなの熱意がすごいので、誰のものとかでは全くないなとは思っています。みんなの熱意が入っている。それでいて、自分が求めていた、“こういう作品が観たかった!”という作品にはなったと思います。

――どうして、企画が通りにくいとされるファンタジー作品にあえて挑戦を?

一見きれいなお話のように見えますが、実はダークな部分もあります。そういう、切り込んだ感情の描き方をしたいなと思った時に、現代劇だと生々しくなりすぎてしまうところもあるので、地続きの感情も入れやすいとファンタジーにしました。

――世界観は非日常であるのに、リアルな描写が続くので感情移入できる作品でした。

ありがとうございます!そういう部分で言うと、レイリアが連れ去られてあんな風になってしまうことだったり、マキアとエリアルの関係だったり、現実ではありえないけれど強い感情を描きだせる設定やストーリー展開は、やっぱりファンタジーじゃないと成立しないと思うんです。

――イオルフの民が、外見の成長が止まり数百年生きるという、歳をとらない設定については?

これまでに手掛けてきた、P.A.WORKSさんの「凪のあすから」という作品であったり、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で、コールドスリープみたいな状態だったり、亡くなった人が戻って来るというような、お互いが持っている時間の違いから生まれる感情の物語が個人的に好きなんです。今回は、その強烈バージョンというか、より深く潜って生まれた題材だと思います。

――その時間軸のズレがあるからこそ、ドラマ展開が違ってくる。

現実にも、そういう関係性はありますよね。たとえば、私は猫を飼っているのですが、子猫から育てていても途中で歳を抜かれていく。いろいろと思うこともあって、そこも作品に反映されているのかもしれないです。なので、全くのファンタジーではなく、設定的には現実ともリンクしているところがある。今までのコールドスリープだとか、死んだ子が戻ってくるというのは完全にファンタジーですけど、今回は身近にある関係として共感していただけたらいいなと。ショッキングなことをみせたいわけじゃなく、そういう関係性や出来事から生まれる気持ちの話とか、人の繋がりの話をつくりたかったんです。

――そういった時間のズレだったり、物語の状況説明が冒頭で詳しく語られるわけではないけれども、スッと世界観に入りこめたのは絵の力というか説得力がそうさせているように感じました。特に、冒頭から登場するイオルフの塔のイメージがとても印象的でした。

ありがとうございます。イオルフは一番最初の場所だからこそ、一番難航しました。この作品の世界には宗教がないけれども、イオルフの人たちは修道女のような印象もあると思います。なので、イオルフの塔で布が途切れることなく、上に上にと織られている神秘的な雰囲気がいいなと思い、美術設定の岡田有章さんにお願いしました。それから、岡田さんがギミックなど細部まで考えてくださって、「これだと織機が動かない」と、なんとなく省略してしまっても気にならないところまで作りこんでくださって。作画段階でも、布がどうやって織られていくか、ギミックは正しいのかなど、多くのスタッフが検証しながら作業を進めていきました。大変な作業でしたけど、おかげでイオルフの塔はすごく象徴的な場所になったと思います。

――そんな沢山の想いとこだわりが詰まった作品が、いよいよ公開されましたが心境は?

テレビシリーズだと観ていただいた方の反応が、良くも悪くも入ってくる環境の中で作っていくところもあると思うんですけど、映画ってそれが無い。反響が無い中でひたすら3年ぐらいかけて作っていく過程で、どこにモチベーションを見いだすのかという時期もあったとは思うんですけど、いろいろな想いを経てようやく公開できたということを今は噛みしめています。なので今は、沢山の方に観ていただきたいという想いだけです。劇場でしか出ない色や音があるので、ぜひ劇場で楽しんでいただきたいです。(関西ウォーカー・大西健斗)

https://news.walkerplus.com/article/139621/

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