どんな会社でも結果が出せる? 野村総研に根付く仕事の型「GISOV」とは


社会や経済の環境が変わるなか、これからのビジネスパーソンに対する評価や信頼度は、「会社」という器ではなく、個人の「付加価値」によって決まる。そう主張するのは、『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』(村井庸介著、インプレス)の著者です。

ビジネスパーソンの付加価値とは、時代を問わず「いかに相手に貢献できるか」に尽きるのだとか。もちろん、ただ言われたことをやるだけではなく、そこで自らの付加価値を生むのは“提案”だといいます。

その提案とは、営業が客先にプレゼンテーションするというようなことだけではなく、「相手により貢献できることを考え、伝えること」。そういう意味で、よい提案ができるということは、すべての仕事に使える「仕事の基本」だというのです。

ちなみに提案は、次の5つのステップに分解できるといいます。

1. G : Goal(ゴール:目的・目標)

2. I : Issue(イシュー:課題)

3. S : Solution(ソリューション:解決策)

4. O : Operation(オペレーション:実行計画)

5. V: Value(バリュー:付加価値)

(25ページより)

これが本書で伝えようとしている仕事の「型」。5つのステップの頭文字をとって「GISOV」と呼ばれていたその提案のノウハウは、著者が新卒で入社した野村総合研究所(以下、野村総研)で身につけたものなのだそうです。

野村総研には、口伝えで、無意識のうちに「提案力」を身につける環境があったのだといいます。そんななかでの実践を経て「GISOV」という「型」を活用していると、確実かつ迅速に結果を出せることを理解したというのです。

そんな経験があるからこそ、「どんな環境変化があろうとも、ビジネスパーソンが生き残るために必要な仕事の基本は提案に尽きる」と著者は言い切れるのです。そして、そのための「型」をきちんと身につけておくことが重要だとも。

第1章「どんな会社でも結果を出せる仕事の『型』とは」に目を通し、その「型」についてもう少し確認してみることにしましょう。

野村総研で伝承されていた「GISOV」


インターン中にはじめて耳にした「GISOV」という言葉について解釈を深めていくうち、著者は「これは『提案』の型だ」と気づいたのだそうです。相手が社内であろうと社外であろうと、仕事の本質とは「問題を発見し、解決するための新しい方法を提案する」ことに尽きるということ。そして、どんな提案にも使えるのが、上記「GISOV」の5つのステップ。

多くのコンサルタントの仕事内容は、問題や課題の解決に集約されると著者はいいます。イシュー(課題)は必ずあり、顕在化しやすいものだから。しかし、ときおり抜け落ちる視点がゴール(目的・目標)なのだそうです。「じゃあ、そもそもその課題って、なんで発生することになったんだっけ?」という、課題と表裏一体のゴールを理解していなければ、正しい解決策は生み出せないということ。

だからこそ、常に「そもそもどこを目指しているのか?」という問いに立ち返らなければならないわけです。ゴールの設定が変わると、そこから発生するイシューも変わるため、2つを同時に照らし合わせながら考えることで、「本当のイシュー」が明確になるというのです。

同じように、次のソリューション(解決策)とオペレーション(実行計画)も2つでセットと考えるべき。「見定めたイシューは、どうすれば解決できるのか」がソリューションであり、「それ、本当にできるの?」という具体的・現実的な実現性の裏づけがオペレーション。「ヒト・モノ・カネ・時間」をどう使うのか? その解決策がいつ実現できるのか? そうしたスケジューリングもオペレーションの重要な要素だそうです。

そして、最後のステップがバリュー(付加価値)。なぜ私(われわれ)になら、その仕事(提案)が実現できるのか。その提案を承認すると、提案の相手が型クライアントにどんなメリットが生まれるのか。それがバリューだということ。(24ページより)

これら5ステップそれぞれについて、考え方のポイントを確認してみましょう。

「G : ゴール(目的・目標)」は疑ってみる


著者は野村総研時代に、先輩から「お客さんが言ってることを信用するな」と言われていたのだそうです。これは、お客さんが前提として立てているゴールがずれていることが往往にしてあるという意味。

現場にいる人は視点がミクロになりがちですが、そもそものゴールをマクロな視点から見たり、抽象度を上げたりして冷静に考えなおすというステップが重要。ゴールの設定が変わると、解決すべきイシューも変わるもの。つまり、ちょっと視点を変え、お客観的に、マクロにとらえるステップだということです。

ゴールが変わると、取り組みそのものがまったく別のものになると著者はいいます。慎重に、客観的かつマクロな視点から、より本質に近く優先順位の高いゴールを見極める必要があるということ。(27ページより)

「I : イシュー(課題)」の設定は「ゴールのゴール」まで見据える


「イシューとゴールは連動していなければならない」と、著者は強調しています。ただし現実的には、先にイシューが顕在化していることも少なくないでしょう。たとえば、ある会社の営業部において「ノウハウが貯まっていない」「そもそもPDCAをどう回したらいいのかわかっていない」といったイシューがあると、それは目につきやすくなります。

その場合、ゴールは「営業部も生産性向上」となるはず。いわばイシューがあって、ゴールが決まるというパターン。ゴールとイシューは、このように2つセットでとらえるべきだというのです。

このプロセスで考慮すべきは、いったん見えたゴールのさらに先に、「ゴールのゴール」があるのではないかということ。事業部にとって、「営業部の生産性向上」というゴールの先には「事業部全体の業務改善」という「ゴールのゴール」があるという考え方です。そして、そこまで広く考えると、

G:営業部の生産性向上

I : 営業ノウハウの蓄積とPDCAシステムの確立

(30ページより)

という仮説には、「営業部と生産部門の情報連携や、各営業の商圏設計などに問題がある可能性はないだろうか?」など、まだ穴があることに気づくはず。そのように、それまでには見えていなかったイシューが見つかる可能性があるということ。

「ゴールのゴール」まで見据えることで、イシューを洗い出す際に漏れが少なくなるといいます。可能性のあるイシューをできるだけ列挙し、そのなかから最大のネックとなっているイシューを選ぶという工程が重要だということ。いきなり目についた問題点の改革に走るのではなく、「なにが原因なのか」を、あらゆる可能性のもとに診断するわけです。

直感や、目先の現実から思いついたイシューを、「本当にそれでいいのか?」と疑い、「ゴールのゴール」まで立ち返ることによって、本当に重要なイシューを選択するということ。(29ページより)

「S : ソリューション(解決策)」はどんな行動をするかの最終判断


実務に必要なのは行動であり、結果。つまりソリューション(解決するための行動)にまで踏み込んでこそ提案だということ。ここで注目すべきは、世界的な戦略コンサルティングファームであるマッキンゼーの問題解決フレームワーク「空・雨・傘」と、ソリューションの考え方は同様の思考過程をとるという著者の主張です。

空:空を見たら、曇っている(=事実の認識)

雨:もうすぐ雨が降りそうだ(=解釈)

傘:傘を持って出かけよう(=判断)

(32ページより)

これを「GISOV」に当てはめると、おおむね「空」「雨」がゴールとイシュー、「傘」がソリューションとオペレーションに相当するということ。いわばソリューションは、導かれた解釈(ゴールとイシュー)に基づいて、「なにをするのか」という最終的な判断を下すこと。具体的な行動(傘を持って行く)を明確にするわけです。(31ページより)

「O:オペレーション(実行計画)」には4つの要素を盛り込む


オペレーションは、ソリューションをさらに具体化したもの。おもに人員計画・設備投資・予算・スケジュールを踏まえた実行計画のことを指すそうです。GISまでの段階は、極論すれば卓上でできること。しかし「実際に可能なの?」「いくらかかるの?」「いつまでにできるの?」という点がクリアになっていなければ、その提案を承認することは不可能です。

オペレーションは、「できる限り現実的に」が原則。不確定な要素があれば、「Aがだめだったとしても、Bがあります」というように複数の案でバックアップするわけです。(34ページより)

「V:バリュー(付加価値)」でその提案を選ぶメリットをまとめる


あまり聞きなれない単語・要素かもしれないけれども、バリューこそが「GISOV」という提案における最大の核心だと著者はいいます。すなわちバリューとは、

「なぜこの提案を承認したほうがいいのか」

「なぜ他の案ではなく、この提案を選ぶのがベストなのか」

「そこにはどんなメリットがあるのか」

(36ページより)

ということ。自社あるいは自分がもっとも大事にしていることを、お客さんに提供することを約束するわけです。たとえば野村総研の場合、「金額が他社より高い」ことがネックになることが多かったといいます。リサーチを徹底的に行うことなどが原因で、競合他社の1.5~2倍くらいの値段になることがよくあったというのです。

すると当然ながら相手方の担当者は、上司から「なぜ他社より高いのに野村に頼むんだ?」と聞かれることになります。そこで提案の最後にバリューとして、「なぜ高くても野村総研がベストなのか」という理由を考えて用意しておくわけです。

・ 調査内容が他社よりも圧倒的に広範囲かつ調査の粒度も細かいために、高コストに見合った正確な裏づけを用意できます

・ 実行段階に入っても、他社とは違って最終段階までサポートを続けます

・ 今回のプロジェクトで実現したいことは、野村総研の志しとも合致するので、同じ船に乗って取り組みます

(38ページより)

つまり、これがバリュー。すなわち、自分たちが仕事のなかでもっとも重要視していること、相手に貢献できること。言い換えれば、相手が「断る理由」を事前に想定し、その理由をつぶしていくということ。「断る理由」がなくなれば、その提案を採用する確率は高くなるわけです。(36ページより)


以後の章では、「GISOV」を使う際のポイント、自分の付加価値を高め続けるための仕事観などがわかりやすく解説されています。仕事でいま以上に結果を出せるようになりたいのであれば、参考にしてみるのもいいのではないでしょうか。

Photo: 印南敦史

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