厄介な「ヘリコプターペアレント」の実態と対策――何も決められない子どもが育つ!?


 愛情を持って我が子に接するのは、もちろん大切なこと。しかし、愛情の示し方を一歩間違えると、歪んだ親子関係が生まれてしまう。近年では、子どもの行動を管理し続ける親を「ヘリコプターペアレント」と呼び、その行動が問題視されている。では、具体的に何が問題なのか? ヘリコプターペアレントの定義や対策について、育児相談室「ポジカフェ」の主宰者として多くの育児相談を受けている子育て心理の専門家・佐藤めぐみさんに話を聞いた。

■常に子どもを管理し続ける「ヘリコプターペアレント」

「ヘリコプターペアレントは『常に子どもを観察し続ける親』と『観察され続ける子ども』という親子関係が、ヘリコプターが上空でホバリングしている様子に似ていることから名付けられました。アメリカで出版された『Parenting with Love and Logic』という書籍の中で、著者のフォスター・クライン氏とジム・フェイ氏が用いたのが始まりといわれていますね」

子どもを常に“観察する”ことがヘリコプターペアレントの定義のひとつという。ただ観察するだけなら問題なさそうだが、特徴はそれだけではない。

「毒親、カーリングペアレントなどなど、いろいろな呼び方がありますが、ヘリコプターペアレントの最大の特徴は『過管理』と『過干渉』です。親が子どもの行動や人生に関わらずにはいられないのです。特に学業や学校に関することへの干渉が強く、学校で子どもの身に何か起きようものなら、親が自ら抗議する場合もあるようです。ヘリコプターペアレントはアメリカ発の言葉ですが、日本で生まれた“モンスターペアレント”に近い部分もありますね」

先日放送された『ねほりんぱほりん』(Eテレ)でヘリコプターペアレントが特集され、「中学生の娘の尿採取を手伝っていた母親」「子どもと恋人のLINEをこっそり開いて確認する母親」などの衝撃的なエピソードが飛び出して話題になった。佐藤さんによれば、彼女たちのように度を越した干渉をする親は“しっかり者”であるケースが多いという。

「一見すると、しっかりしている母親という印象があるのですが、その“しっかり”が行きすぎると『この子のことは私が一番わかっている』という思い込みがエスカレートしていきます。そのため、子どもが大きくなっても干渉・管理を続けている場合が多いですね」

ヘリコプターペアレント化するのは圧倒的に母親が多いそうだ。

「アメリカの状況は存じ上げませんが、日本は母親が育児の大半を背負っていることが多いので、ヘリコプターペアレント化してしまうようです。日本はまだまだ母親への重圧があり、その息苦しさも行きすぎた育児の要因になっていると思います」

そのほか、親側に「こういう子に育ってほしい」という確固たる思想があり、その枠にはめたい気持ちが強いのも、ヘリコプターペアレントの特徴だとか。

「私の経験則ですが、自ら『私はヘリコプターペアレントだ』と気づくケースは少ないように思います。どこからが過干渉や過管理に当たるのかというボーダーが明確でないため、自分の行動に何ら疑問を持っていないことが多いですね」

子どもの行動を観察し、問題が起きれば飛んでいくヘリコプターペアレントは、子どもの成長のチャンスを奪う、と佐藤さんは指摘する。

「ヘリコプターペアレントが抱える最大の問題点は、自分で立つ力が子どもに育たないこと。親が子どもの人生や経験の多くを決めてしまうので、圧倒的に“決断”する機会が減ってしまいます。すると『自分で決められない』『自分の意思がない』といった、いわゆる“自分力”が欠如したまま育ってしまうのです」

さらに、幼少期に失敗を重ねなかったことから、“完璧な自分しか認められない”“自分を好きになれない”などのネガティブな自己観や、精神的な不安定さにつながっていくという。

「幼少期は、ママに見てもらうことがうれしいため、『うちの親は距離感が普通とは違う』ということに気づきにくく、小学校高学年~中高生になって初めて、自分と親の“距離の近さ”にとまどいや苦痛を感じるようになります。その間も、親によるヘリコプターペアレンティングは続きますが、苦痛や煩わしさを感じつつも、十分な自分力が育っていないために従わざるを得ないという、不格好な共依存で悩むケースもあります。私が行っている育児相談でも、ヘリコプターペアレントに育てられた人がママになり、自分の育児に悩んでいるというケースは多いです。みなさん、親からの過干渉によって子ども時代にツラい思いをしていて、『私はヘリコプターペアレントになりたくない』と、親を反面教師にしてがんばっている方が多いように感じます」

子どもが悩まないように――と親がレールを敷き続けた結果、親元を離れた途端に、その子どもは途方に暮れてしまうというパターンだ。

「このようなケースは、大きくなってから『自分力が欠如している』と認識することが多いと思います。大人になってから気づく人も多くいらっしゃいます。なので、克服法を欲しているのは、自分の力で立つことを求められる大人に(ママに)なってからが多いように感じています。手前味噌になりますが、私が普段している活動そのものが、それに当たります。ポジティブ育児メソッドでは、子どもの心だけでなく、ママの心も支え、ママ自身の心を強くする働きかけをしています。小さい頃からの自己概念は根強いものですが、きちんとした働きかけがあれば、大人になってもそれを塗り替え、たくましくすることができるからです」

佐藤さんの言う「小さい頃からの自己概念」をたったひとりで変えるのは、とても難しいはず。母としての“たくましさ”を身につけるために、専門家にサポートしてもらうのも、克服法のひとつなのだ。

子どもの将来を思うならば、過度な干渉や管理は控えなければならない。それでは、親子にとっての適切な距離の取り方とは?

「基本的には、子どもが“適切な距離”を知っています。そのときどきで、子どもが示した距離が、その子の心の状態に合った距離感なのです。たとえば、普段は公園内でママと離れた場所で友だちと遊ぶのが大好きな子でも、転んだりイヤなことがあったりすると、ママのところに飛んできます。子どもは自分の心を満たすために、器用に距離を調節できるのです。なので、親があれこれと考えるよりも、子どもが求めている距離に順応してあげるのが一番です」

もちろん、子どもが赤ちゃんの頃は親が近くにいる必要があるが、幼少期に入り、子どもが自分で行動できるようになれば話は別。少しずつ子どもに“決断”をさせていく必要がある、と佐藤さん。

「もしも、お子さんとの会話の中で『ママ、これどう思う?』『ママどうしよう。ボクどうしたらいいかわからない』『ママが決めて』といった発言が多いようであれば、注意が必要です。その場合は、少しずつでいいので、日々の会話に『あなたはどう思う?』という質問を盛り込み、その子が自分の行動に主体性を持っていくように働きかけるのがポイントとなります」

大人になれば、さまざまな場面で決断を迫られる。その予行演習は、子どもの頃から育まなければならない。

「過管理・過干渉は、ここまでならOKでここからはやりすぎという明確な線がなく、知らず知らずにエスカレートしていることが多いため、自分がヘリコプターペアレントだと思ってもいない人がほとんどです。しかし、そこをあえて“自分はヘリコプターペアレントではないか”と客観視し、“その状態から脱却したい”と思ったら、まずは年相応の決断力や判断力が、我が子に伴っていないことに危機感を持ってほしいと思います。『子どものためにと思ってやっていることは、本当に子どものためか』『逆に足を引っ張っていないか』など、自分の行動を疑うことが第一歩です」

いつでもレスキューできる場所にいたいという親心があったとしても、その距離感を適切に保ててこそ、優秀な操縦士、ということのようだ。
(真島加代/清談社)

佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)
アメリカ、イギリス、オランダで学んだ心理学を、日本のママたちが取り入れやすい形にした「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は、ポジティブ育児研究所・代表を務める傍ら、育児相談室でのカウンセリング、メディアでの執筆を通じ、子育て心理学でママをサポートする活動に尽力。
佐藤めぐみオフィシャルサイト

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