【全曲レビュー】中島愛『Curiosity』は“ポップ・ミュージックの真髄”が刻まれた大傑作! アニソンライターが徹底解説

ウレぴあ総研

2018/3/2 07:00

人気声優、アニソンアーティストの中島愛さんが、自身のソロ名義としては4枚目となるフルアルバム『Curiosity』をリリースされました。

『Curiosity』……"好奇心"という名を与えられ世に送り出された本作は、中島さんの音楽に対する飽くなき好奇心を表現するかのように、全12曲全てに異なる作曲家が楽曲を提供した意欲的な作品となっています。

"十人十色"ならぬ"十二人十二色"な個性と作家性が色濃く出たトラックの数々に、楽曲毎に色を変える中島さんのヴォーカル。

その融合が生み出す"歌"と"音"は、最早「アニソン」や「声ソン」といったカテゴリーをも飛び越え、もっと普遍的な……"ポップ・ミュージック"という表現の真髄をリスナーに伝えてくれるような、そんな魅力的なエネルギーを有しています。

早くも本年度を代表するアルバムの一枚となりそうな大傑作『Curiosity』。本作に惚れ込んだ筆者が、各楽曲の聴きどころを「全曲レビュー」という形でご紹介します。

■作詞家と作曲家の組み合わせもおもしろいリードトラック

M1.サブマリーン(作詞:新藤晴一、作編曲:Rasmus Faber)

アルバムの冒頭を飾る曲は、『TRY UNITE!』や『マーブル』といった楽曲で中島愛さんとタッグを組んできたラスマス・フェイバーによる『サブマリーン』。本曲は、アルバムのリードトラックとなっており、MVも制作されています。

ラスマス曲ということでハウスサウンド的なアプローチかと思いきや、この曲は、美しいストリングスの音を活かしたポップチューン。各種弦楽器が中心となって構築されるメロディは、ネオアコ的な要素を感じさせつつも、既存の音楽のどれとも異なる独自性を生み出しています。

中島さんの声質やキーの高さともベストマッチしており、歌とメロディのナチュラルな調和と、そこから生み出される儚げでファンタジックな雰囲気が、とても心地良い。開幕曲にして、アルバム全体への期待値をこれ以上ない程に高めてくれるプレリュードです。

そんな多幸感の高い歌声とメロディの一方で、歌詞は人間の弱さや汚さを描いた、ややダークでセンシティヴな内容となっており、一つの楽曲の中でネガとポジが交錯する構成になっているのがおもしろい。

作詞を担当したのは、ポルノグラフィティの新藤晴一さんで、ラスマス・フェイバーと新藤さんというユニークな組み合わせによる邂逅も、様々なクリエイターを惹きつけてやまない中島さんのアーティスト性ならではの音の連鎖といえるでしょう。

M2.Life’s The Party Time!!(作詞:中島愛&前山田健一、作編曲:前山田健一)

2曲目は、"ヒャダイン"こと前山田健一さんによる『Life’s The Party Time!!』。アニソン、声ソン、アイドルソング、歌謡曲……と、ジャンルレスに大活躍する有名コンポーザーが手掛ける楽曲らしく、ポップス志向が色濃く出た本アルバムの中でも、特にJ-POP的で快活なメロディの強さが印象に残るナンバーです。

前山田さんらしい転調を繰り返す構成は、楽曲にうねりや起伏を生み出しつつも、そのアップダウンを見事に乗りこなす中島さんの歌唱力のおかげで、奇抜さよりはキャッチーなニュアンスが前面に出ており、"ポップス"としてのストレートな煌めきを感じることができます。

ふんだんに使用された装飾音の賑やかな鳴りと共に、要所要所で挿入されるビブラスラップの響きも実に楽しい。

人生をパーティーに例えた"応援歌"な歌詞は、前山田さんと中島さんの共作。そのチャーミングな歌声と共に、リリックメーカーとしての中島さんの才を味わう上でも、歌詞カードを見ながらジックリと聴き込みたくなる曲です。

■作曲者の個性が色濃く出た、バラエティに富んだ"ポップス"の数々

M3.残像のアヴァロン(作詞:岩里祐穂、作曲:バグベア、編曲:バグベア&千葉"naotyu-"直樹)

「如何にも」なタイトルの通り、アニメの主題歌を思わせるメロディとリズム、そして、トーン高めな歌唱で突き進む、とても"アニソン"っぽい楽曲。

「あれ? この曲がタイアップになっていたラノベアニメやスマホゲー、あったっけ?」と思わされる程、実にアニソンらしいナンバーなのですが、正真正銘、本アルバムの為に作られた書き下ろしのノンタイアップ曲です。

アニソンをJ-POPにおけるモードの一つと捉え、ある意味でのオマージュとしてオリジナル楽曲を制作し、それをアニソン、声ソン界のトップランナーである中島さんが歌うというアイデアが光る曲で、その完成度は勿論のこと、コンセプトそのものにも強烈に惹かれます。

個性豊かな楽曲が揃った今作においても、メタ的な要素も込みで独特の主張を放つ本曲。まさに、アルバムの特異点となっています。

M4.ワタシノセカイ(作詞:瀬尾公治、作曲:秋浦智裕、編曲:WEST GROUND)

音楽活動の休止期間を経た後に、中島さんの"復帰作"としてリリースされた『ワタシノセカイ』。テレビアニメ『風夏』のエンディング曲として使用された楽曲で、その作品性に合わせてストレートなバンドサウンドが用いられています。

力強く疾走感たっぷりのサウンドに乗せて綴られるのは、どこまでも"エモーショナル"な中島さんの歌声で、そこには涙腺を直撃するようなエモーションが溢れている。

『風夏』の原作者である瀬尾公治さんの歌詞も素晴らしく、その切なくも前向きな歌詞に、"シンガー"中島愛の姿を重ね合わせて、この曲を聴いていたファンも多いことかと思います。

この曲に対して、歌手としての復活劇というドラマにスポットを当てすぎるのも、歌と音の本質から焦点をズラしてしまいそうで適切ではないのかもしれませんが、それにしたって、この曲があり、そして、今回のような大充実のアルバムが誕生したことを思えば、やはり感慨深いものがあります。文句なしの名曲です!

■J-POPのスタンダードである"サクラソング"にも挑戦!

M5.Jewel(作詞:加藤哉子、作編曲:本間昭光)

ポルノグラフィティの諸作品を手掛けたことでJ-POPファンにはお馴染みの音楽プロデューサーであり、コンポーザー、アレンジャーとして活躍する本間昭光さんを招いた1曲で、ノリの良いギターのカッティングと、独特のビート感を有したリズムが心地よいナンバー。

ミドルテンポの楽曲ではあるものの、ドラマティックな装飾音が施されたレイヤー数の多いサウンドや、ボイスエフェクトも含めて、高音域と低音域を行き来する中島さんの歌唱によって、実際の曲の速度以上に奥行きと物語性を感じられる楽曲です。

時にファルセット気味になる中島さんの声がとてつもなく艷やかで、様々な楽曲が揃った本アルバムの中でも、中島さんの"ヴォーカリスト"の表現力を最も明快に伝えてくれるナンバーだと思います。

この後に続く叙情的な『思い出に変わるまで』や『ウソツキザクラ』と、ロックな『ワタシノセカイ』の間に挟まれたポジショニングも素晴らしく、アルバム構成におけるバトンを巧く繋いでくれています。

J-POPの有名アーティストを支えてきた職人の仕事と中島さんの歌唱力がガッチリ噛み合った、とても素敵な曲です。

M6.思い出に変わるまで(作詞:中島愛、作編曲:重永亮介)

中島さん自身の筆によるリリックで描き出す切ない恋の歌。所謂"ドンシャリ"的な、低音と鳴り物の音が強調されたドラムサウンドや、曲を盛り立てるホーンセクションの音は、80年代のアイドルソングのそれを思わせる部分があり、"歌謡曲"という表現がシックリくる曲調が実に味わい深い。

『Cuirosity』が、とことんポップソングに向かい合ったアルバムだとするならば、昭和歌謡的な"ポップ"の形状にアプローチしたのが、この『思い出に変わるまで』なのかな、と。

アルバム全体にも言えることですが、現在進行系で進化と深化を続ける中島さんの大人びた雰囲気やセクシーな表現力を堪能できる楽曲だと思います。派手なキーの高低差こそないものの、要所要所でゾクッとするような色気が感じられる。そこが、この曲の大きな魅力ではないでしょうか?

M7.ウソツキザクラ(作詞:Satomi、作編曲:松本良喜)

RUIさんの『月のしずく』や中島美嘉さんの『雪の華』といった大ヒット曲を生み出してきた作詞作曲家タッグによる提供曲は、言い出すことが出来ない恋心を桜の花に託して歌い上げる中島愛流の"サクラソング"。

モチーフの直球さに加えて、曲調もバラードとなっており、これ以上ない程、ストレートに"J-POP"を意識した楽曲ではあるものの、そこに敢えてチャレンジする姿勢にこそ、この『Curiosity』というアルバムが目指す方向性が如実に表れているように思います。

極々シンプルな言葉で表現するならば、「とてつもなく良くできた曲」であり、ポップスとしての強力な普遍性を持つ楽曲です。

下手をすれば、単なる"ベタ"に成りかねない「サクラ」をモチーフにした「ラブソング」を、ここまで情感溢れる歌へと仕立て上げる曲、歌詞、そして、歌。

そのいずれもが素晴らしく、どこまでも真っ直ぐだからこそ誤魔化しが効かない"サクラソング"に対して真っ向勝負を挑んだ結果、ハイクオリティな楽曲を生み出すことに成功している、本当に優れたバラードです。間奏でより一層叙情を盛り上げるサックスの仕事もお見事。

■人気バンドとのコラボによる"オルタナティブ・ロック"なシングル曲も

M8.最高の瞬間(作詞:山田稔明、作編曲:古川貴浩)

続く『最高の瞬間』は、『ワタシノセカイ』のシングルにカップリング曲として収録されていたナンバー。ホーンセクションの音がメロディを賑々しく装飾する、エネルギッシュでポジティブなポップソングです。

通好みなグッドソングを作り出すバンド、GOMES THE HITMANのメンバーである山田稔明さんが提供した歌詞も、とても前向きな内容となっており、そうしたパワフルな言葉の数々が中島さんの明るい歌声によって"音楽"へと変換されていく様は、リスナーに言いようのない幸福感を与えてくれます。

『ワタシノセカイ』が力強さと切なさを同時に描き切ることで、中島さんの再スタートを彩った曲だとするならば、そのB面にあたる本曲は、溌剌としたメロディとリリックで、皆が待ち侘びた中島さんの帰還を祝う為に鳴り響いたファンファーレ。

バラード曲でシットリと聴かせた後に、この曲を置くレイアウトも秀逸で、アルバム本編へのジャストなフィット感も最高に気持ち良いです。

M9. Odyssey(作詞・作編曲:Avec Avec)

エレクトロニカ的なサウンドに乗せて送るオシャレで洗練されたサウンド。抽象的で揺らぎのあるな低音やメロディに、優しい中島さんの歌声が渾然一体となり、一つの柔らかな音になっていくような"歌"と"バックトラック"との親和性の高さが耳に残ります。

穏やかで、とても柔和な曲で、けれども、細かいところにまで音の作りが行き届いている丁寧さもあり、まるで、高級なシルクのような上質な手触りが感じられます。

M10.サタデー・ナイト・クエスチョン(作詞:加藤慎一、作曲:山内総一郎、編曲:フジファブリック)

本アルバムに収録された3曲目の再録ナンバーである『サタデー・ナイト・クエスチョン』は、『ネト充のススメ』のオープニング主題歌として起用されたシングル曲。

人気バンド、フジファブリックによるプロデュースで、ダンサンブルなシンセフレーズと切れ味鋭いギターの音を主力とした"オルタナティヴ・ロック"を地で行く挑戦的なナンバーです。

センチメンタルな世界観を有したサウンドは、どこかアダルトで気怠げなムードがあり、中島さんの歌も"大人"な色気がタップリ。

10代で「ランカ・リー」というポップアイコンを得て、アニソン・声優界のシンデレラとしてデビューを果たし、その後、様々なコンポーザーやアレンジャーとの出会いを通して、シンガーとしての表現の幅を広げてきた中島さんの成熟した"歌"の魅力に痺れる1曲です。

■"新たなる代表作"のラストを飾るのは、大団円的なハッピーエンド

M11.未来の記憶(作詞:甲斐みのり&Twisty、作編曲:CMJK)

『Odyssey』と共に、本作のテクノ成分を担う楽曲で、元電気グルーヴ、CutemenのCMJKが楽曲を提供。こちらも人選の妙が光っており、アニメ専門ではないテクノ系ミュージシャンを作編曲者に招いたことで、不思議な化学反応が生まれています。

収録曲の中でも、『Life’s The Party Time!!』とはまた別のニュアンスでメロディのアップダウンが激しい曲で、かなり凝った作りがなされています。

そのガッツのある電子音の大波に飲み込まれることなく、アーティストとしての個性をシッカリと発揮する中島さんの歌声は、素晴らしいとしか言いようがありません。

間奏パートでは、現代的な電子音楽を思わせるハードなダウンパートが導入されていますが、一方で、全編に渡って90年代的なアシッドハウスを連想させるムードもあり、シンプルに"テクノ"のトラックとしても聴き応えは十分。

中島さんと共著『音楽が教えてくれたこと』を出版した著作家の甲斐みのりさんが参加した歌詞にも注目です!

M12.愛を灯して(作詞:中島愛、作編曲:坂東邑真)

ラストを飾るのは、こちらも中島本人による作詞曲。アイリッシュ・トラッドのような哀愁とキャッチーさが入り混じるイントロに始まり、中島さんが高らかに"愛"と"歌"への賛辞を歌い上げる人生賛歌的な、とてもポジティヴで強い曲。

ストリングスの音もこの曲のドラマ性と、中島さんの歌を後押しし、とても感動的な歌世界を作り出しています。

曲の構成もJ-POPのマナーに則ったAメロからBメロ、そしてサビへと繋がる極々シンプルで余計な飾り気のないものですが、実際の進行よりもグッと音に奥行きと深さを感じられるのは、歌の素晴らしさとドラマティックな装飾音が作り出すスケール感故だと思います。

ちょっとダークな『サブマリーン』で幕を開け、この『愛を灯して』によってハッピーエンドで幕が閉じる。そんな構成の巧さにも驚かされますし、中島さんのディスコグラフィーにおいて今後も輝き続けるだろう"名盤"のラストナンバーに相応しい楽曲となっています。

沢山のアニソンや声ソンを聴いていると、心を震わせてくれるような……或いは、思わず涙が込み上げるような楽曲に出会うことがあります。

今回の中島さんのニューアルバムも、まさに、そうした作品の一つだったのですが、この作品に関しては、自身の感情を感動で満たす以上に、「より多くの人に聴いて欲しい、届いて欲しい!」という衝動を感じました。

それは、きっとこの『Curiosity』は、とてもとても良くできたポップスのアルバムで、誰しもの心に訴えかけるパワーがあると確信できたからこそなのだと思います。

"シンガー"中島愛の新たなる代表作となるであろう『Curiosity』。是非とも、その豊かな音世界を体験してみてください。

当記事はウレぴあ総研の提供記事です。

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