バレエの大きな魅力は、人間の感情を表現できること『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』

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2018/3/1 11:30



2018年3月、“バラで綴るバレエの恋の物語”が誕生する。『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』は、バレエ・ダンス用品の総合メーカー、チャコット株式会社が主催・企画・制作する「バレエ鑑賞普及啓発公演」第2弾だ。演出・振付は同企画第1弾『バレエ・プリンセス』に続いて伊藤範子(谷桃子バレエ団シニアプリンシパル/コレオグラファー)。物語のあるバレエを創らせたら右に出る者はいないヒットメーカーのマジック(魔力)のもと、日本バレエ界を代表する豪華スターダンサーたちが華麗なる舞台を繰り広げる。

バラがモチーフ? お気づきの方もいらっしゃるだろうが、“愛と美の象徴”といわれるバラは、数々の名作バレエ、珠玉の恋物語を彩っている。たとえば古典バレエの最高峰『眠れる森の美女』。ヒロインのオーロラ姫が4人の王子から求婚され、バラの花を贈られて踊る「ローズ・アダージオ」という名場面が知られよう。今回はバラを切り口に男女の恋を描いた5つのバレエをピックアップし、一晩ものの作品として仕立て上げる。あらかじめお断りしておくが、漫然と小作品を選び並べただけのガラ公演とは一線を画す。

上演演目は『眠れる森の美女』第2幕より幻影の場のパ・ド・ドゥに始まり、『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ、『白鳥の湖』第3幕より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ、『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ、『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥと続く。いずれもバラと関わりのあるラブストーリーの名場面だ。『ジゼル』がバラ?という向きもいらっしゃるだろうが、初演時の台本には「精霊に変わったジゼルがアルブレヒトの腕をそっとすり抜けてバラの花々の只中に消え…」とあり、そこに想を得ている。

伊藤はこう話す。「まず男女が出会い、憧れたり助け合ったりするうちに熱愛になります。そこから裏切りやすれ違いがあり、やがて別れに。男女の恋の物語を起承転結のようにお見せしますが、ハッピーエンドにしたいので、最後は『ドン・キホーテ』の結婚式の場にします」。色によって花言葉が異なるバラ。その色彩の移り変わりと物語の展開がリンクする。そして各作品の前に現代のカップルの映像を混ぜることも考えていて、「映画を観ているような感覚のおしゃれなバレエ」にしたいと意欲を示す。オープニングにも何やら仕掛けが隠されているようなので目が離せない。

出演者は豪華かつ適材適所。『眠れる森の美女』では、清楚な織山万梨子(牧阿佐美バレヱ団)、端正で身体のラインが美しいキム・セジョン(東京シティ・バレエ団)が幻想的なドラマを生むだろう。『ロミオとジュリエット』では、華やかでプリマのオーラ漂う永橋あゆみ、美丈夫にして影のある演技も得意な三木雄馬という谷桃子バレエ団プリンシパル同士がドラマティックに魅せるはず。『白鳥の湖』の池田理沙子(新国立劇場バレエ団ソリスト)は愛らしい踊り手だが、ここでは黒鳥オディールをどのように演じて麗しき王子・井澤駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)を誘惑するのか楽しみだ。『ジゼル』では、音楽性豊かな佐々部佳代(松岡伶子バレエ団)、舞台映えのする清水健太(ロサンゼルス・バレエ プリンシパル)の名演に期待したい。『ドン・キホーテ』では、新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子&福岡雄大がフルスロットルで盛り上げてくれるだろう。また場面によってはソリスト、アンサンブルも活躍し、松本佳織(東京シティ・バレエ団)、塩谷綾菜(スターダンサーズ・バレエ団)という若手ホープや次代のスター候補として注目されている中島耀(シンフォニーバレエスタジオ)も出演する。

伊藤作品は、オペラに取材した作品『ホフマンの恋』『道化師~パリアッチ~』でも、「プリンセス」を切り口に清新な舞台となった『バレエ・プリンセス』でも、ストーリーテリングの妙に加え、登場人物の内面を奥深く伝える。「いろいろな愛とか感情、それぞれの思いの色をどう表現するか――。ドラマですね。テクニックをみせることだけがバレエではありません」と伊藤は創作に賭ける思いを話す。「今のAIの時代に、人間ができること、人間が人間らしくいることとは何かを考えると、感情の表現が大事になってきます。感情を表現できる人間のドラマを描きたい。それこそがバレエの大きな魅力のひとつです」と熱っぽく語る。『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』では、男女の恋物語を通して、人間誰もが抱える喜怒哀楽のドラマを掬い上げ、“一夜限りのおしゃれなロマンティック・ファンタジー”を堪能させてくれるに違いない。

文:高橋森彦(舞踊評論家)

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