「違うって当たり前で楽しいこと」イジメ対策にもつながるマレーシアの国民性は、教育の現場からも作られていた


これまで、「マレーシアを好きになれた理由」と「ローカル幼稚園の魅力と学校選びの苦労」について書いてきましたが、今回は「マレーシアの学校では本当にイジメがないか」について触れたいと思います。

マレーシアにはイジメがないって本当?


前回の記事で、私が日本にいたとき放送されていた情報番組を見ていて「マレーシアの学校にはイジメがない」という言葉を聞いて心底驚いたこと、そしてイジメがないならその秘訣をぜひ知りたいと、意気込んで幼稚園生活を始めたと書きました。

なので、ママ友と幼稚園の先生、そしてインターナショナルスクールのカウンセラーにズバリと聞いてみました。

答えは、「当たり前のようにイジメはありますよ。世界中どこでもイジメは深刻な問題でしょう。なぜ、そんな質問をするんでしょうか?」とのこと。残念ながら、やっぱりマレーシアもイジメがないユートピアというわけではないようです。

でも、マレーシアは日本とはイジメの種類が違います。私が思うに、日本のイジメはかなり陰湿。集団無視なんて最たるもので、どういうものか外国人に説明すると、「そんなことがあるなんて信じられない。胸糞が悪い」と唖然とされることが大半です。

では、マレーシアでのイジメはというと、「1対1」もしくは「1対2」といった少人数で発生し、集団で特定の人を除け者にすることは基本的にないのだそう。ちなみに、これはマレーシアだけでなく、以前短期留学を視野に入れて学校見学させてもらった中国の上海の学校でも言われたこと。

なぜなのでしょうか? 私はそこに「多様性」と「ダイバーシティ」が大きく関係しているのではないかと考えます。

「多様性」を認め合う。みんな違うけどマレーシア国民としてみんな同じ

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Photo: 中川真知子

以前も書きましたが、マレーシアはマレー系マレー、中華系マレー、インド系マレーが混在する多民族国家です。宗教も違えば、カレンダーも違います。もちろん、宗教はこの国でも繊細な問題なので、争いに発展しないように尊重しながら生活しているそうです。

お互いに規律や戒律を守る必要があるので、できることとできないことをはっきりと相手に伝える、そして言われた方も自分の意見を押し付けることなく受け入れるのが当たり前になっているように感じます。

たとえば、クラスのママさん全員が参加するチャットグループでのこと。親睦を深めるためにランチ会を企画したことがありました。しかし、ムスリムは豚肉とアルコールの摂取が禁止されているので、基本的にハラル認定レストランしか行くことができません。ヒンドゥー教は牛肉が禁止されていますし、同じヒンドゥーでも上位カーストだとベジタリアンになります。私は無宗教なのでなんでもありですが、体調によって甲殻類アレルギーが出ることがあります。

さらに、このような宗教上や体調の都合に仕事の有無経済状況教育方針が加わります。たった14人ほどのグループなのに、話し合いはなかなかまとまりません。でも、規律が厳しい人に合わせたり、行った先のレストランで食べられるものを探したりして、最終的には丸く収まります。

こういったことを幾度となく経験して感じるのは、「みんな違う」が浸透しているだけでなく、ひとりひとりが自分の意見をしっかり言葉にして伝えられる空気がある、ということです。たとえ反対意見があったとしても、それは意見のひとつにすぎず人間関係には大きく影響しないと考えているようでした。実際、そういった意見を何度も聞いています。

もちろん、こうした高いEQは一朝一夕で生まれるものではありません。本屋に行けば「違い」をテーマにした絵本が数多く売られていますし、街を歩いても「輪」を連想させる言葉や商品が至る所で見つかります。

こうしたサブリミナルにも近い努力で、たとえそれが表面的であったとしても「違うけど仲間」が標準になったのではないでしょうか。

「マレーシアに来て初めて生きやすいと思った。本当の自分になれた」という人に出会いますが、それは「多様性を認められた上で受け入れられる。自然体で生きていける」からでしょう。

多文化を知る楽しみ。普段遊ばない子とも積極的に付き合ってみよう


マレーシア人と深く付き合う中で、彼らが多文化に興味津々で常に外に目を向けていることに気づきました。小さい頃から多国籍な環境に身を置いていて、多言語や多文化に触れているからでしょうか、旅行好きで知りたがりな人が多いと感じます。息子の幼稚園で、そんな国民性が活かされた授業がありました。

息子が4歳のときのことです。幼稚園に迎えに行くと、クラスの子ども達が興奮しながら「今日はxxちゃん(〇〇くん)と遊んだ!」と報告してくれました。そのxxちゃん(〇〇くん)は普段ならほとんど遊ばない子です。実はその日から数日間、「普段ほとんど遊んだことがない人と1日過ごして相手の知られざる魅力を探る」というテーマの授業だったのです。
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ゾンビごっこが好きなボーイズもこの日はパズル遊び
Photo: 中川真知子
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お互いに興味があることを探る
Photo: 中川真知子
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息子はひときわガーリーな女の子とペアを組んだ
Photo: 中川真知子

もともと少人数制特有の「家族のような仲の良さ」があるクラスでしたが、その数日でさらに結束を強くしたのは言うまでもありません。それまでは、男子グループ、女子グループと別れて遊ぶ傾向がありましたが、異性と遊ぶと違った楽しみがあると生徒に気づかせてくれたのです。

「みんなで仲良くしなさい」と言葉で伝えるよりも、実際に授業の一環で「相手の良さを探らせた」のは効果的だったと思います。

これが「イジメを意識」してやったことかはわかりません。しかし、イジメの芽を摘み取るもしくは種すら植えさせないようにする重要な手がかりかもしれません。
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photo: 中川真知子

各学校や施設のイジメ対策


私はイジメのことを書くために、この数カ月いろんな学校に足を運んで対策や傾向について聞いて回りました。印象的に感じたことをいくつかご紹介しましょう。

【ローカル幼稚園】

まず、息子が通うローカル幼稚園の場合ですが、2~6歳という低年齢でイジメが発生することは滅多になく、あったとしても玩具の取り合いといった些細なこと。見つけ次第先生が介入して、その場で解決するそうです。

また、問題行動を見つけた場合、名指しで注意するのではなく、給食の後の「サークルタイム」と呼ばれる時間に、絵本やたとえ話をしながら生徒全員に対して「こういうことをしたらどういう気持ちになるかな」「こうしたらどう行動すればいいかな」といったモラルを教えるとのこと。

では、子ども同士の争いに親が絡んできた場合はというと、一方の親からだけでなく、もう一方の意見も聞き、最終的に教員立ち会いのもと双方で話し合いの機会を設けるそうです。

ただ「大人が子どもを虐める、という図式は決して起こってはならないこと。大人は子どもを守るべきであって、恐怖心を与える存在であってはならない」と力強い口調で話していました。

【インターナショナルスクール】

次にインターナショナル小学校の場合です。ここはブリティッシュ・シラバスの学校で、学費と授業内容のバランスが良いとローカルにも人気が高いところ。ママ友に「将来マレーシアに戻って来たときに通わせたらどうか」と勧められて説明会に参加してきました。そのときの質疑応答で、イジメを目撃した、もしくは被害を受けている子どもからSOSが発せられた時の対応を聞きました。

まず、印象的だったのは、この学校では「イジメ」という言葉を使わないとのこと。というのも「イジメをしている」「イジメをされている」と第三者から言葉にされると、虐める側と虐められる側、双方の心に傷を負わせるからだ、とおっしゃっていました。

具体的な対応の手順として、定期的にアンケート用紙を配り、気になることがあれば生徒を呼んで話を聞くとのこと。このとき、先生に話しても解決にはならない、と思われては意味がないので、普段から生徒と信頼関係を築くように並々ならぬ努力をしていると言っていました。少人数制だからということもありますが、教員、事務方全員が生徒全員の名前を覚えていて、どんな子どもか、何が得意で何が不得意かを把握しているそうです。

そして、もしもアンケートとその後の調査でイジメの事実が確認されたら、個別に呼び出し徹底的に話し合うそうです。長い教員生活を振り返っても話し合いが1番効果的だったとのことです。

ちなみに、この学校では親を呼びだすといったことはせず、よほどのことがない限り生徒と教師の間で解決するそうです。

別の保護者からは、こんな興味深い質問が飛び出しました。それは「インターナショナル・スクールに通っていると、まるで自分を特権階級者のように勘違いしてしまう子どもがいるようです。この学校では謙遜他者を思いやって助ける心をどのように育みますか」というもの。

マレーシアは国内貧富の差が激しいだけでなく、近隣国家から労働者を積極的に受け入れています。住み込みメイドが数人いる家庭も珍しくありません。こういった環境で、他者への思いやりや助け合いの精神を育てることは重要な課題のひとつ。私の周りでも、率先して近隣諸国に足を運んで世界の状況を見せたり難民支援のボランティアに親子で参加したりする人が少なくありません。なので、学校が子ども達にどうやって「謙遜意識」を持たせるのかも、学校選びの重要なポイントのようです。

この質問に対して、先生は「ソーシャルワークを授業の一環として取り入れており、恵まれない人のための配給を手伝うといったことをさせています」と、子ども達が笑顔でワークに参加する写真を見せてくれました。「世界には恵まれない人たちが~」と説明するのではなく、実際にふれあう機会を持たせているとのことでした。

【上海の学校】

最後に番外編の中国の学校です。去年、息子の友人である中華系マレー人家族の上海の別宅に一週間ほど滞在させてもらったとき、近い将来短期留学させたいと希望している学校の見学会に参加させてもらいました。そこでは「イジメ対策ストラテジー」があるそうです。

ただ前提としては先述の通り、イジメは基本的に1対1か、ひとりを少人数で攻撃するもので、大人数は関わってこないとのこと。段階があるそうなので見やすいように箇条書きにします。

1. イジメを発見したら生徒を個別に呼び出しヒアリング

2. ヒアリングした上で関係生徒を呼んで話し合い

3. イジメが収まらないようであれば保護者に伝える

4. 保護者に子どもとの話し合いの機会を持ってもらう

5. ここでも収まらないようであれば関係生徒並びに保護者を呼んで話し合い

6. それでも収まらないようであればイジメ解決に特化した第三機関の介入

この学校の場合、第三機関を介入させるほどこじれることはあまりないようですが、対策室を設置するほどイジメは深刻な問題だと捉えているようでした。

イジメは些細なことで発生する。大切なのは隠すことではなく、解決すること


この記事を書くにあたり、ママ友や学校代表者に話を聞きましたが、共通したのは「イジメが発生することを大前提として対策を講じている」ところです。

イジメが発生したことを誰かの責任にしたり、(結果的にそういう風に受け取るかもしれないけれど)イジメた側の親を責めたり学校側がイジメの存在を否定しようとしたりするようなことは1回も耳にしませんでした。ただし、私立やインターナショナルといった「教育=ビジネス」な、しかも幼稚園小学校でしか質問していないからかもしれません。ある先生からは、マレーシアでは特に中高生のイジメが深刻で定期的に暗いニュースが流れると聞いたので、中高に行けば違った内容の話を聞いたと思います。

とはいえ、今回私が話した人たちに共通したのは「イジメは必ず起こる」とハッキリ認識していて「イジメは人の心を殺す深刻な問題で、大人は子どもを守るために必死に解決策を見出さないといけない」と考えていることでした。

さてさて、今月も長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。来月はマレーシアの超豪華お子様誕生日会のことを書きたいと思います。私も5歳の息子のためにお誕生日会を開いたんですが、なんと総額xx万円使いましたよ! この記事が公開されている頃にはクレジットカードの引き落としでアップアップしているはず。

では、また来月お会いしましょう。

中川真知子 | Twitter

1981年、神奈川県生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。評論家を目指していたが、とある映画関係者から「作る苦労を知らずに映画の良し悪しを語るな」とアドバイスされ、帰国後はアニメ会社GONZOで制作進行を務める。結婚を機にカナダに引っ越し、オーストラリアではVFXスタジオのAnimal Logicでプロダクションアシスタントを経験。その後、オーストラリアでソーシャルワーカーと日本語チューター、Kotaku Japan翻訳ライターの三足のわらじを履き、夫の仕事に合わせてフロリダに引っ越す。現在はマレーシアでゆったり子育てを楽しみつつ、GIZMODO JAPANとライフハッカー[日本版]、金融サイトのZuu Onlineで執筆中。好きな動物はヒグマ、爬虫類(ワニ、コモドドラゴン)、両生類。好きな映画ジャンルはホラー。

Photo: 中川真知子

Image: Rawpixel.com / Shutterstock.com

当記事はライフハッカー[日本版]の提供記事です。

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