向田邦子作品の3年後を描く 舞台『家族熱』 ミムラ×溝端淳平インタビュー

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2018/2/28 06:00

向田邦子といえば、没後36年経った今もなお多くの人に愛されている脚本家であり、エッセイストであり、直木賞作家でもある。その向田作品のうち、1978年に浅丘ルリ子と三浦友和らの出演で人気を博したドラマ『家族熱』が、その3年後という設定でふたり芝居となる。出演は、ミムラと溝端淳平。ミムラはNHK『トットてれび』(2016年)ほかで2度向田邦子役を演じたことがある。企画・台本・演出は合津直枝。この三人が向田作品にどう向き合うのか……出演の二人に話を聞いた。


ふたり芝居の怖さ


――ふたり芝居にあたり、どのような思いですか?

溝端:昨年は三人芝居(『管理人』演出:森新太郎)をやりましたが、出演者が三人なのか二人なのかはすごく大きな違いなんです。「三人から社会になる」って言いますしね。三人芝居の場合は二人が作った空気をもう一人が崩してくれるけれど、ふたり芝居の場合は変化を起こすのが難しいから物語が平坦になってしまう。

ミムラ:それを壊すきっかけがなくなると、拡がらない作品になってしまいそうですよね。反面、実は自由度は高いはずなので色々試したいですね。

溝端:そうですね、二人だけで緩急をつけ、お客さんを引き込むことが大切ですよね。

ミムラ:でも実際に溝端さんと台本の読み合わせをした後で、反省しました。こんなに面白い作品なのに小ぢんまりしてしまった。『家族熱』は大好きな作品だし、相手が溝端さんで嬉しいし、読んでみて私は楽しかったけれど、このままでは作品として人に見せられません。演出の合津(直枝)さんには明確なイメージがあるので、稽古では何とかそれに食いついていこうと思っています。

溝端:まだまだこれからですからね。二人だけで空気の変化を作るのは大変だろうけど、役者としてとてもいい経験になるでしょうから、全力で臨みます。

――ミムラさんは出演が決まって、向田邦子さんのお墓にご挨拶に行かれたそうですね。

ミムラ:はい、以前から何度かお参りしています。念願の向田作品への出演、今回の報告に行く時はドキドキしました(笑)。

―― 一方、溝端さんは向田作品には初めて触れたそうですが、いかがですか?

溝端:向田さんの名前は存じ上げていたんですけれど、作品は知りませんでした。そのうえで今回、合津さんの台本を読んで感じたことは、ものすごくもどかしく、心をかき乱されるということ。語られる物語は40年前に書かれたものなのに、まったく色褪せず、むしろ今読んでもとても新鮮。『家族熱』というタイトルのように、台詞の一言一言やト書きからも熱量を感じました。なにより、綺麗さと汚さという表裏一体のものの描き方が素晴らしいです。だからみんな虜になるのかな。

ミムラ
ミムラ

男と女の違いがはっきりと見える


――今回、設定が3年後です。原作を知らない方も向田作品ファンの方も、どんな作品になるのか期待が高まりますね。

ミムラ:向田作品をそのまま上演するというのではなく、1978年のドラマ『家族熱』の3年後を描くというトライ感に痺れました! 合津さんは最初テレビドラマにしようと企画したけれど、「昭和的すぎる」と言われて実現しなかったそうなんです。それを聞いた時に「そんなことない!」って思いました。家族は普遍的なものなので、古いなんてことはないはず。向田作品の魅力を大事にしながら、普遍的なテーマを示したいですね。あとは合津さんもおっしゃっていましたが、向田作品を知らないからこそ溝端さんが今ここにある感情を大事にしてくれるだろうなと頼りにしております。

溝端:そうだといいです、頑張ります。

――原作ドラマでは、溝端さん演じる杉男と、ミムラさん演じる朋子は、かつて同じ家で暮らした義理の母と息子でした。ドラマの最後に二人は離れ離れになるのですが、今回3年ぶりに再会する。舞台が3年後に設定されることで、どんな作品になりそうですか?

溝端:3年経ったことによって、男性と女性の違いがはっきりと出ていて面白いですね。

ミムラ:溝端くん演じる杉男は、男性の純なところを愛しむように書かれた人。その視線は、そのまま朋子の視線だなと思います。「3年」という時間が、男性と女性、一回り離れた年齢の中でどのように質感を変えるのか、楽しみにしていただければと思います。

溝端淳平
溝端淳平

――それぞれの役について、どのような人物でしょう?

ミムラ:朋子は、友達になりたいタイプではないかな。向田さんの書く登場人物ってみんな愛おしいんだけど、どこか鼻持ちならない人物。でもけして悪人ではないし、自分の嫌な部分を隠しきれない素直さもあり、むしろ隠そうとしていることがバレているという可愛げもある。そんな人物の魅力を感じていただけるようしっかり演じたいです。

溝端:杉男は男臭い人。たくましいのではなく、悩みも甘えも抱えている自分に酔っている。男のロマンを持った人なんですよね。でも僕としては、もっとまっすぐ男性として朋子さんにぶつかればいいのに、と思います。ぶつかった後のことは考えなくていいじゃん、と焦れったく感じましたね。

ミムラ:だからなのか、改訂版では杉男の熱量をより膨らませた台本になってましたね。ドラマ『家族熱』では、朋子と杉男がお互いに想っているけれども態度には出さないという秘めたスリルが禁欲的で色っぽいなと感じていたんですけれど、今の時代は別のやり方もできそうですよね。

――杉男の熱量とともに、朋子にはSっ気が足されたそうですね(笑)。

ミムラ:二人はドラマ版では7歳差なんですけれど、この舞台では12歳差なんですよ。今は7歳差なんて珍しくない。40年前と今では男女の関係は変わってきていますから、朋子のSっ気含め、向田さんがご健在だったらきっと、二人の関係をこのくらい危うくさせるだろうなと思える台本を合津さんが書いてくださいました(笑)。

溝端:僕もそっちの方がしっくりきます。二人は舞台上で過去を振り返るけれど、ドラマは、今、目の前で起こっています。再会した二人の“熱”を感じていただきたいです。

――お二人に合わせて、『家族熱』が現代に生まれ変わっているんですね。ミムラさんと溝端さんならではの『家族熱』、楽しみにしています!

インタビュー・文=河野桃子

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