行方不明者の捜索番組にヤラセ疑惑、悪徳探偵――“失踪者”と家族を取り巻くキケンな状況


 前編では、「特定非営利活動法人 日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)」の理事長・田原弘氏に、日本の行方不明者の現況や最近SNSで増えている「行方不明者捜索願」投稿に関して意見を伺った。後編では、実際にMPSが携わったケースを紹介しながら、一筋縄ではいかない行方不明捜索の現場に迫る。

(前編はこちら)

■行方不明者のテレビ番組に“ヤラセ”疑惑も

――昔から、行方不明者の情報を募るテレビ番組があります。先日、『緊急!公開大捜索'18春~今夜あなたが解決する!記憶喪失・行方不明スペシャル~』(TBS系)に出演した記憶喪失の男性が、ネット上で「29年前、親が目を離した40秒間のあいだに忽然と姿を消した松岡伸矢くん(当時4歳)ではないか」と大きな話題になり、DNA鑑定を行うということになるなど、影響力の高さを感じました。

田原弘氏(以下、田原) テレビの影響力は大きく、私も何度か公開捜索に関してアドバイスをしたことがあります。ただ、ヤラセのようなケースもあるので、慎重になった方がいい。以前、MPSへ依頼しているご家族がテレビ出演し、霊能力者に行方不明者の居場所を透視してもらったことがあるのですが、鑑定直後に指定された場所へ急行したはずなのに、すでに何台ものカメラがセッティングされていて違和感を覚えたと言っていましたよ。

――テレビでは、探偵会社に協力をあおぐ様子も目にするのですが、個人で依頼するのはどうでしょうか?

田原 それも1つの手ですね。ただ、探偵の中には、高額な料金を請求したうえ捜索をしない業者もいるので、よく吟味する必要があります。以前、探偵会社を利用したという依頼者の方で、300万円近い料金を支払ったにもかかわらず、調査報告書には数十件のパチンコ屋の写真が貼られていただけというケースがありました。また、実際には捜索していないのに、「捜しきれなかったので」と料金の3分の1ほどを依頼者に返して、良心的な業者を装う探偵会社もあります。はじめから料金の3分の2をせしめるつもりの手口です。MPSでは、依頼者の方に、信頼できる探偵会社をご紹介することもしています。

――MPSは“組織力で行方不明者の捜索を支援される”とのことですが、具体的にはどのようなことをされているのですか?

田原 依頼人に対し、情報を集めるためにはどこでどのように尋ねればいいかといった捜索のアドバイスをしたり、発見後に届出を解除するタイミングを助言したり、それから代理人として遺体の身元確認に出向いたこともありますよ。

またMPSのホームページでは、行方不明者情報を掲載しています。ここで情報を募っているのですが、家出をした人が、インターネットカフェで自分の名前を検索し、このホームページに行き当たって、そこで同じカフェでよく見かける人物が行方不明者として載っていることに気づき、連絡をくれることもあります。

――家族がいなくなってパニックになっている状況の方には心強いですね。

田原 行方不明者の家族というのは大変なんです。例えば、北海道にお住まいの方が、「沖縄で行方不明になった娘さんを見た」という情報が入れると、親御さんは飛行機で沖縄まで飛んでいくんです。しかし、確かに容姿は似ているものの別人だったとわかると、すぐ帰らなければならない。そして、新たに「神奈川で見かけた」という情報が入ると、また飛んでいく――こういったことが続くと、心身ともに疲弊してしまいます。ですのでMPSでは、「本当にこの情報は信頼に値するものなのか?」を吟味し、これというものを、家族の方にお伝えするといったことをしています。

あと、依頼人の心のケアも活動の1つ。依頼人が1人暮らしの高齢者の場合など、定期的に電話をして、体調を気遣ったりもします。また、なかなか見つからず「占い師に捜してもらおうと思っている」という人の話を聞いて、「それはいくらかかるんですか?」「そうやって実際に見つかった人はいませんよ」と声をかけたり。行方不明者の家族というのは、ついマイナスな発想に陥りがち。そこから鬱などを発症してしまう方もいるので、発見につながった事例を話すなど、プラスに考えられるような声がけも意識して行っています。

――長年見つからないと、捜索を諦めるケースもあるのでしょうか?

田原 行方不明者の家族は、行方不明者の生死がわからないまま7年、震災などに遭遇した可能性がある場合ならその事案から生死不明のまま1年たつと、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。また、配偶者の場合には、生死不明の状況が3年続くと、離婚の申し立ても可能です。そのため、1年、3年、7年の区切りで諦める家族もわりといらっしゃいますね。

――失踪宣告に踏み切るのはなぜですか?

田原 長年の捜索で心身ともに疲れ切って諦めてしまう方や、保険金などの関係で申し立てを決断する方など、理由はさまざまです。ただ、失踪宣告後でも発見されれば戸籍を復活できるので、1つの区切りとして申し立てを行う方も多いです。残された家族にも日々の生活とご自身の人生がありますからね。

――これまで実際にサポートされた中で、印象深かったケースを教えてください。

田原 船の客室に身分証やお金などを置いたまま姿を消してしまった男性の件でしょうか。乗船した証拠となるチケットはあるのに、目的地に着いても降りてこず、船中を捜してもどこにもいなかったそうです。航路の途中で海に落ちた可能性もありますが、出航直前に見送り客に紛れて下船した線も有力とされています。事故に遭遇したのか、失踪目的の計画的な行動なのかもわからず、彼自身もいまだ見つかっておりません。ほかにも、調査していくうちに、失踪宣告を悪用した保険金狙いの疑いが濃くなっていった事案や、見つからないように工作していることがわかった事案などもありました。

――MPSの活動を通して、行方不明者についてどのように感じていますか?

田原 どのような理由から行方不明になっていても、残された家族の心配は同じです。「あの時こうしていれば……」など、自責の念に駆られているご家族も本当にたくさんいます。事件や事故の場合はもちろん、たとえ本人の意思で姿をくらましたとしても、1人でも多くの行方不明者が家族の元へ戻れることを常に願っています。
(取材・文=千葉こころ)

特定非営利活動法人 日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)公式サイト

当記事はサイゾーウーマンの提供記事です。

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