年間100人以上の頭や脇のニオイを嗅ぐ臭気判定士に聞く、不快な体臭の秘密と対策法


夏の汗のニオイは言うまでもありませんが、冬も分厚いアウターやセーターは頻繁に洗えないこともあり、染みついたニオイが気になります。空気がこもる電車の中で不快な思いをしたことがある人は多いでしょう。通勤中そんな状況に遭遇すると、朝からやる気が下がってしまいますね。

そこで今回は嫌なニオイに感じる体臭の仕組み対策を知るべく、体臭の研究員で臭気判定士でもある、いわば「ニオイのプロ」久加亜由美さんにお話しを伺いました。
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久加亜由美 | 株式会社マンダム 体臭研究員 臭気判定士

京都工芸繊維大学大学院修士課程終了。同社入社後、製品開発を4年間担当。2012年より体臭研究に携わり、臭気判定士の国家資格を2015年に取得。これまで約600人の体臭を評価した経験がある。

臭気判定士の仕事とは


臭気判定士というと、名前の通りにニオイを判別すると予想できますが、実際にどんなことを業務として行っているのでしょうか。まずは仕事についてお聞きしました。

臭気判定士」は国家資格で、18歳以上であれば誰でも試験を受けることは可能だそう。公害対策基本法に基づいて嗅覚測定を実施するための資格で、大半の臭気判定士はさまざまな環境から悪臭を採取して評価するという仕事をしています。でも、久加さんのように企業の中で仕事をするというケースもあります。化粧品会社であるマンダムは、臭気判定士を中心とした体臭研究員が体のニオイを評価し、製品開発に役立てています。

ちなみに、公害調査のような環境中の評価をする企業の場合は臭気判定士だから採用するという可能性はありますが、久加さんは臭気判定士だから採用されたわけではなく、採用後にニオイについてより深く研究するために資格を取ったそう。機械では体臭の細かな判別が難しいからだそうです。

体臭の評価はどのように行うのか

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Image: 株式会社マンダム

評価のために実際に何をするかというと、頭や脇といった体のニオイが出る部分を「嗅ぐ」こと。ただ、一人で行うと個人の主観になってしまうので、複数人で嗅ぐことで評価の精度を高めているのだそう。最低4人で行い、そのうち一人は臭気判定士が立ち会うようにするとのこと。ただし、臭気判定士は全体の評価がずれていないかの確認はするものの、最終的な決定をするわけではありません。

では、評価の基準は何かというと、「ニオイの要素」「要素の割合」「強さ」の3点。多くの人が頭のニオイと脇のニオイは違うとは感じているでしょうが、実際に部位が違うとニオイの元となる成分は異なります。「汗のニオイ」と「油っぽいニオイ」がそれぞれ何割で、強さはどれくらいということを複数人総合的な評価を出しているそう。

「嗅ぐ」スキルを最大限に発揮するために


ニオイを嗅ぐことを重要視して研究に取り組む体臭の研究員は、日頃どうやって大事な鼻ケアをし、健全な状態をキープするために気をつけているのでしょうか。

そもそも、体臭が最も強くなるのは夏なので、評価する試験も主に夏に行われます。そこで、夏の体調管理は特に気をつけているのだそう。

それに、体臭の評価をするときは、常に同じ環境で評価ができるように決められた部屋で行われます。その部屋は温度が低く設定されているため、夏でも冷えないように長い靴下を履くなど、防寒対策をしているそう。

また、鼻は強いニオイを嗅ぎ続けて酷使すると「疲れる」ので、プライベートでニオイの強いものを嗅がないようにしているのだとか。香水をつけないのはもちろん、ネギ類のようにニオイの強い食品を食べることも避けるそうです。

さらに興味深いのは、実際に同じ成分なわけではないのですが、脇のニオイはカレースパイスのニオイに似たものがあるので、「夏にカレーを食べないのは鉄則」とのこと。誰しもがカレースパイスのようなニオイがするというわけではないものの、カレースパイスのようなニオイを持った人を評価するときに、きちんと評価ができるようにするためだそうです。

そして、鼻の疲れを効率よく回復させる方法としては、久加さんは緑茶を飲んだりコーヒーを嗅いだりするそう。リラックス効果があるのが大きいとのことです。ただし、コーヒーは飲んでしまうと自分から出るニオイが気になるので嗅ぐにとどめるそう。

ニオイケアの重要性


香りつきの柔軟剤の人気が続いているなど、ニオイに対する意識は以前よりも上がっているように感じます。久加さんによると、調査の結果、髪型や服装といった見た目よりもニオイが気になる方が好感度の下がる幅は大きいことがわかったのだとか。また、ニオイのケアをしていないと「自分が臭っているかもしれない」と気にすることでストレス値が上がってしまうのだそう。

ニオイのケアというと、やはり洗浄が重要なので、お風呂に入って洗うのが一番簡単で効果的な方法だそうです。とはいえ、いつでもできるわけではないので、脇、頭、足と、体臭の主な原因となる部位ごとにニオイとはどのようなものなのか、それをふまえてどんな対策ができるかをお聞きしました。

脇のニオイとはどんなものか


まず、若い人脇のニオイが強い人が多く、気を付けた方がいいそう。ニオイの原料としては、皮脂腺由来の皮脂、角層由来の脂質のほか、脇はエクリン汗腺とアポクリン汗腺を持つので、それぞれから出るエクリン汗アポクリン汗という2種類の汗があるのが特徴。アポクリン汗はタンパク質、脂質、鉄分が含まれてベタベタしており、一般的に「臭う汗」として知られています。

でも、どちらも汗のかきたてはニオイません。なぜクサくなるのかというと、もともと人間の皮膚にいる「皮膚常在菌」がニオイの元となる汗の成分を餌にして、ニオイに変えてしまうからです。そこで一般的にデオドラント製品は、皮膚常在菌の増殖を抑制することにフォーカスしているとのこと。

とはいえ、皮膚常在菌には、さまざまな種類がおり、少しでもいればニオイをたくさん作ってしまうものや、多くいてもあまりニオイを作らないものもあり、さらに個人差もあるのでバラエティがかなりあるそう。よって、単純に汗をかく量がニオイに直結するわけではなく、どのような皮膚常在菌がいて、皮脂腺や、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の数はどれくらいなのか、エクリン汗とアポクリン汗の中にどのくらい自分の皮膚常在菌が好むものがあるかなど、複数の条件に左右されます。

また、遺伝子の影響も大きいのだそう。体臭に関連する遺伝子の存在が報告されており、日本や朝鮮半島といった東アジアの人は体臭が少ない特徴はあります。ただ、全ての体臭が遺伝子と関与しているわけではないそう。「様々な要因が複合的に絡んでいます。脇ってすごくミステリアスなんですよ」と久加さん。

脇のニオイには7種類ある

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Image: 株式会社マンダム

これまでの研究結果から、脇のニオイの種類は7タイプに分けられています。日本人の半数以上は「ミルクタイプ」で赤ちゃんが出しているようなニオイなので、不快なものではないそう。そして先ほど話に出てきた「カレースパイス」。そのほかは「酸っぱい」、「カビ」、「蒸し肉」などになります。

「ミルクタイプ」以外はクサいととらえていいのか、たとえば弱めなら「マイルドなカレー」のように良いニオイに思えるのか疑問に思って聞いてみたところ、やはりニオイの強さによって変わるそう。また、ニオイの快、不快の感じ方には個人差があるので、人によって好き嫌いには差があるとのこと。恋愛をするときに相手の体臭がだめだから無理ということがあるのと近いものがあるのかもしれません。

脇のニオイの効果的な対策


では、効果的なニオイ対策というと、デオドラント剤は汗がニオイに変わってから使うのでは遅いので、お風呂に入った後のきれいな状態で使うのが理想的とのこと。晩にお風呂に入って翌朝デオドラントをする人は多いでしょうが、寝ている間に菌がニオイを作っているかもしれません。菌を取り去ってクリアな状態でデオドラントを使用するということが大事です。そうはいっても、出先で洗うのは難しいので、シートタイプのケア商品で拭いたあとにスプレーやロールオンタイプのデオドラント製品を使う習慣をつけるのが良いとのこと。

また、デオドラント製品にはさまざまなタイプがあります。まず、スプレーは脇だけでなく全身に使え、背中などの手の届きにくいところに使うのに便利です。脇のニオイ対策を重視するなら、ロールオンやスティックのような直接塗り付けるタイプの方が効果は高いです。ただし塗って汗腺に蓋をするイメージなので、乾かす必要があるので気をつけましょう。

なので、朝にシャワーを浴びたり拭いたりした後、特に気になる脇には直塗りタイプ、全身にはスプレー、外出先ではシートタイプで拭いた後に塗りなおす、という使い分けをすることが効果的だそう。
ニオイ発生のメカニズムと対処アプローチの図
Image: 株式会社マンダム

要するに、ニオイの対策は、洗浄、制汗、殺菌、消臭の順で、より前のプロセスから対処していくほど効果的ということです。また、マンダムでは各ステージにアプローチする商品を出すようにしているのだそう。

頭のニオイとはどんなものか


次は頭のニオイですが、特に男性は30代後半から40代にかけてニオイが強くなるという研究結果が出ています。頭の汗から皮膚常在菌がジアセチルというニオイ成分を作り出し、ジアセチルが脂と混ざり合うことで、より不快なニオイに感じます。いわゆる「ミドル脂臭」と呼ばれているもので、30代後半から40代にかけてピークを迎えます。

頭のニオイの原料は、皮脂腺由来の皮脂と角層由来の脂質、エクリン汗です。原料で見ると特別変わったものはないようですが、30代から40代になると脂の性質が変わってしまうそう。若い頃はサラサラしていて頭を洗えばすぐ落ちてくれますが、30代から40代になると脂が固くて落としにくくなるので、ニオイも洗い落としにくくなるとのこと。この年代の男性を対象とした商品に、頭皮の毛穴に詰まった脂を落とすといったスカルプケアのものが多い理由でもあります。

頭のニオイ対策方法


30代から40代の男性は家族を持っている人も多いので、家族みんなで同じシャンプーを使っていることが珍しくありません。でも、奥さんや子どもとは頭の脂の質が違うので、自分に合ったシャンプーを使うのが効果的でしょう。

また、単にスカルプシャンプーを使えばいいのではなく、使い方も重要です。4分の1の男性シャンプーにかける時間が25秒と短すぎるという調査結果も出ており、シャンプーの洗浄能力を活かしきれていないのだそう。2回洗いで合計約1分30秒はかけるのがお勧めとのこと。

ちなみに、アブラ対策にフォーカスしているスカルプケアシャンプーは色々なメーカーから出ていますが、マンダムの商品は殺菌剤も入れており、ニオイを作り出す菌の増殖を抑える効果までつけているのがポイントだそう。

足のニオイと対策について


最後は足のニオイです。冬から春にかけては新年会から送別会など、靴を脱がなければならない店で気になる人は多いかもしれません。足のニオイの原料は角層由来の脂質とエクリン汗しかないのですが、蒸れやすいので菌が繁殖しやすい環境になります。また、日頃目につきにくい所なので、ケアに手が行き届いていない人が多いと感じます。

脇や頭に比べて使っている人は少ないですが、足のニオイ対策は、最近は足専用の商品も塗るものやスプレーなど色々なものがあります。でも、まずは足をよく洗うこと。足ふきマットに乗るだけという人も多いでしょうが、指の間などをしっかり拭いて、湿気をとること。それから脇のケアと同様に、その後に殺菌や制汗といったケアをするのが大事とのこと。

以上、脇、頭、足のニオイについて見てきましたが、今の季節だとダウンコートに染みついた体臭のような、衣類に蓄積するニオイも気になります。布を消臭するスプレーが衣類のほか、カーテン、ソファなど、外部からのニオイと体臭からのニオイ対策と合わせて使われていることが多いですが、マンダムでは「ウェアデオドラントスプレー」のように服についた体臭にフォーカスした商品も出しているそうです。

日常生活の中で気をつけること


ほかには日常生活の中で、自分のニオイを客観的に意識することが大事です。たとえば、頭のニオイは頭頂部から後頭部にかけて発生するという研究結果が出ており、自分の鼻から遠いので自覚しにくいかもしれません。自分はニオうと思っていなくても、電車やエレベーターで立っているときに後ろに立っている人からニオうと思われている可能性もあります。

また、鼻はニオイを嗅いでいると、そのニオイに慣れてしまうので、自分自身のニオイは気づきにくいのだそう。人の家に行くと特有のニオイを感じるのはよくある話。セーターなど、洗わずにもう一度着る場合は脱いだ直後ではなく、着る前に一度ニオイを嗅いだり、アウターを数着持っていて、数日ぶりに着るような場合もニオっていないか確認したいものです。少々勇気がいるかもしれませんが、家族がいる場合は体臭について正直な意見を言ってもらうと良いでしょう。

ニオイは目に見えないものですが、人の好意評価大きく影響を与えます。自分のニオイに気づかないままに損をしていたらもったいないです。これまで述べてきた臭気判定士のアドバイスは、ちょっとした気づかいで効果が出ることも多いので、気軽にできることから「臭活」をしてみてはいかがでしょうか。

【アンケートに答える】(別ページでアンケートが開きます)

Image: 株式会社マンダム

取材協力: 株式会社マンダム

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