林遣都『チェリーボーイズ』で感じた自分の中の童貞性



■童貞漫画の金字塔 まさかの映画化

2001年に出版された古泉智浩による童貞漫画の金字塔ともいえる伝説の漫画『チェリーボーイズ』が映画化される。地方都市に住む25歳の3人の童貞を、林遣都・栁俊太郎・前野朋哉が演じ、ヒロイン笛子に池田エライザという最強の布陣。



脚本は、今や『アズミ・ハルコは行方不明』『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』などで活躍する松居大悟が(当時童貞だった)2009年に書いたものだ。

サイトオープンから2年、このタイミングでのまさかの映画化に色めき立つ『永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー』。単にチェリー被りというだけではなく、童貞の悲哀とおかしさを見事に切り取ったエンターテインメント作品に感銘を受け、林遣都さん・池田エライザさんに連続インタビューをおこなった。

まずは、見事に童貞の主人公クンニこと国森信一を演じきった林遣都さん。
15歳でスカウトされるという華麗な経歴と、その洗練されたルックスは、童貞性と程遠いようにも思えるが……?

童貞を演じることの覚悟や、仕事にかける思いなどを聞いた。



■「自分が童貞に見えないと成立しない」

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――褒め言葉として受け取っていただきたいんですが……『チェリーボーイズ』の林さん、童貞にしか見えなかったですよ!



林「嬉しいです(笑)。自分が童貞に見えなかったらこの作品は成立しない、というのは最初にお話をいただいたときに思いました。やっぱり『童貞役できるの?』って感じる人はいると思うので。そこが最低限乗り越えなければいけないところではあるけれど、その最低限はかなり高いハードルであることは覚悟してのぞみました。だから監督とも、お互いをさらけ出して話して、役に2人を投影させていきました」

■男として生まれてきたなら皆、童貞

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――では、できあがった作品や、主人公の国森に共感できる部分は多かったですか?



林「男だったら誰しも共感できる作品であり、主人公だと思うんです。男として生まれてきたらなら、皆必ず童貞という時期があるわけで。女性に対してうまく接することができないもどかしさや恥ずかしさは、もちろん、僕にも重なる部分があるので、そこを膨らましていきました」

■男は勘違いしやすい生き物

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――林さんご自身と、重なる部分があったんですね!



林「ええ、僕も田舎の出身なんですが、15歳で仕事のために東京に出てきてしまったので、学生時代に恋愛の経験をちゃんとしているほうではないんです。特に、国森が池田エライザさん演じる笛子に対して、『あれだけ色々されたら好きになるだろうが!』ってキレるところがあるじゃないですか。あそこは、すごく共感しました。男は勘違いしやすい生き物ですし、ああいったことは、いまだに起きうることですし」



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――え、いまだに、ですか!?



林「勘違いしないように意識しているんですけど……。女性の何気ない仕草を必要以上に捉えてしまうところはあります。女優さんと目が合うと、ただ目が合ってるだけなのに、見つめられていると感じてしまって……。そういう勘違いをしないように、普段メガネをつけているのを、あえて外したりしています(笑)」



■松居大悟脚本を演じきれたらプラスになる気がした

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――とても意外ですが、まさに、国森の精神性じゃないですか! このタイミングで林さんに国森役の話がくるのは、必然だったのかもしれませんね。



林「若者として集って必死にバカなことをやるという経験がないまま、歳を重ねて30手前まできてしまったので……。お話をいただいて、今しかできない役だし、やってみたいと強く思いました。松居大悟さんの脚本のト書きに書かれている、複雑な思いを演じきれたら、自分にもプラスになるんじゃないかなとも思いました」



■最後の展開で感じた『チェリーボーイズ』のすごさ

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――たしかに、今回の松居さんの脚本は、童貞の心の機微を繊細に描いた素晴らしいものでした。





林「『チェリーボーイズ』は、童貞の3人がある計画を企てるという、そこだけ聞くと現実離れしたおバカな話に聞こえるかもしれないんですが……それだけじゃなくて、そこに悩める若者たちの複雑な思いや、深い人間ドラマがきちんと入っていて。もちろん、原作の漫画にもあったものではあるんですが、そこから映像にするにあたって、すごく膨らませてあることを感じました。特に僕はラストのシーンでの池田エライザさん演じる笛子のセリフが好きなんです」

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――ラスト笛子のセリフと醸し出す雰囲気は凡百の青春映画と一線を画していますよね。





林「はい、普通のよくある青春ものだったら、違う雰囲気をヒロインが出すと思うんです。それが、あのセリフになっていることで、『チェリーボーイズ』はすごい、やっぱり普通じゃない作品なんだなと再認識しました。完成した作品を見たあとに、もともと脚本にあったセリフなのか気になって、もう一度確認しました(笑)。きちんと松居さんの書かれた脚本に書いてありました」

■男性は楽しめるからこそ女子の感想が気になる

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――ちなみに、そこに関しては池田エライザさんとはお話されたりしたんですか?



林「していないので、あのセリフを発する時にどう思ったのかとか、作品の感想もあわせて聞いてみたいです。エライザさんはおろか、まだ女性の感想を聞けてないので、それがすごく楽しみなんです。男性は必ず楽しめる作品というところを目指してみんなで作り上げてきて、そうなった自負はあるので、公開を前にした今、今度は女性がどういう受け取り方をするのかがとても気になるところです」

■ラッキーだと思われないように、ひたむきに

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――そして、この『チェリーボーイズ』は童貞に悩む男たちの話でありながら、将来や仕事に関して悩む若者たちの話でもありました。最後にご自身のお仕事に関して考えていることを教えてください。



林「自分が、恵まれているという感覚はあって、なかなかそんな仕事に関して偉そうなことは言えないです。10代の頃から、切磋琢磨しあえる俳優仲間がいるのもありがたいことですし。ただ、15歳でスカウトされた……自分の意思で始めた仕事ではないということが、多少コンプレックスです。“選ばれたラッキーな人”だと思われないように、もし思われていたら、そこを覆せるように、ひたむきにやっていきたいです」

この『チェリーボーイズ』での演技を見たら林遣都が“選ばれたラッキーな人”だなんて感じる人はいないはず。むしろ、この世界で10年以上第一線を走ってきたという事実をあらためて感じさせられるはずだ。『チェリーボーイズ』は2月17日(土)公開。

(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)




映画『チェリーボーイズ』2月17日(土)より シネ・リーブル池袋、渋谷TOEIほか全国ロードショー配給:アークエンタテインメントⒸ古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

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