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『海月姫』が「近年の月9で断トツ」の理由とは? 視聴率では測れないもの

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視聴率は、初回から8.6%、2話6.9%、3話5.9%(ビデオリサーチ、関東地区)と低空飛行の『海月姫』(フジテレビ系・毎週月曜21:00~)。低視聴率ばかり話題にされがちだが、スタート当初から“見ている人たち”の評判は上々だった。

あえて“見ている人たち”と書いたのは、『海月姫』が視聴率につながるリアルタイム視聴者よりも、録画やネットで見る人たちが多いからだ。実際、SNSの動きなどを数値化した『テレビジョン』の指標“視聴熱”で『海月姫』は常にトップクラスの数値を叩き出しているほか、SNSでは「近年の月9で断トツ」なんて声も見られる。

そんなネット上での評判を受けたからか、4話の視聴率は7.5%と再浮上した。私自身、先日アップしたコラムで『海月姫』を「冬ドラマのおすすめ1位」に選んだこともあり、あらためてその魅力を挙げていきたい。

○ど真ん中に流れる王道のラブストーリー

まずふれておきたいのは、漫画原作、映画版の存在。つまり今回の連ドラは後発になるのだが、漫画原作を連ドラ版として見事に脚色している。2014年12月に公開された映画版は、約2時間という短さもあってロングコントのようなドタバタ感があったが、連ドラ版はピュアな恋愛と尼~ずメンバー(オタク女性)の成長を丁寧に描くなどヒューマン要素も十分。

特に、倉下月海(芳根京子)、鯉淵蔵之介(瀬戸康史)、鯉淵修(工藤阿須加)の三角関係は、往年の月9を思わせる恋愛純度の高さ。月海が修に恋心が芽生える。月海と蔵之介の心が通いはじめる。修も月海にときめく。稲荷翔子(泉里香)の横やりで月海が落ち込む。修は月海がオタクと知っても思いを確信する。蔵之介も月海が気になり切なさを感じる……。

オタク女性たちのコメディに目を奪われがちだが、ど真ん中にあるのはこれらの瞬間をしっかり描いた王道のラブストーリー。尼~ずメンバーたちのビフォーアフターを楽しむシンデレラストーリーも含め、その分かりやすさは出色であり、若年層から中高年まで幅広い年代に対応した間口の広い作品に仕上がっている。

現在放送されている恋愛ドラマは、「サイコパス男からの脱出」がテーマの『きみが心に棲みついた』(TBS系)、妻子ある男性の不倫を描いた『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)、男女6人がドロドロの恋愛模様を見せる『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系)の3作。それぞれ、支配、不倫、ドロドロという過激さを売りにしているのだが、このエキセントリックな傾向は近年ずっと続いている。そもそも『海月姫』のピュアな恋愛のほうが希少性だけでなく難易度も高く、挑戦しているだけでも価値は高いのだ。

そんな何気に難易度の高い物語を20歳の芳根京子、29歳の瀬戸康史、26歳の工藤阿須加、26歳の内田理央、26歳の松井玲奈などフレッシュな若手俳優が演じているのも素晴らしい。近年、視聴率対策のために主要キャストを30~50代で固める作品が多く、若年層の視聴者を遠ざける原因となっていただけに、『海月姫』に10~20代のファンが多いのは必然と言える。
○連ドラらしい連続性と牧歌的なムード

主演の芳根京子

“希少性”という意味で、もう1つ見逃せないのは、続きの物語を追う“連続ドラマ”としての楽しさ。

現在放送されている連ドラは一話完結の事件・問題解決ドラマが多く、プライムタイム(19~23時)では過半数を占めている。平日午後の再放送ドラマも含め、「人が殺される」「深刻な事件や問題が勃発する」という物語であふれている。

それらは「正味40分程度でスピーディに解決したら、次回は別の事件や問題をまた1からはじめる」の繰り返しであり、連続性を重視した「続きが楽しみ」という連ドラらしさはない。その点、『海月姫』はヒロインの恋愛、尼~ずメンバーたちの成長、天水館の取り壊し問題など、複数のテーマを一話ごとに追う連ドラらしさであふれている。

また、今冬は事件や問題だけでなく、壮絶な過去やトラウマを持つ主人公が多い。マスコミに追い詰められて母親が自殺した『FINAL CUT』(フジテレビ系)、親に捨てられて入った施設で虐待を受けていた『anone』(日本テレビ系)、一家心中で唯一生き残った『アンナチュラル』(TBS系)、父親が殺人罪で獄中死した『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系)、海上事故で父と弟が行方不明になった『トドメの接吻』(日本テレビ系)。

いずれも重苦しい世界観がベースになっているが、『海月姫』のヒロイン・月海にはそこまでの過去やトラウマはない。母を病気で失っただけであり、自分に自信が持てないだけ。ヒロインの背景に過剰な重苦しさがないから、作品全体がほのぼのとした牧歌的なムードで包まれている。

今冬でここまで重苦しさがないのは、『海月姫』と『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)のみであり、後者は笑いに振り切った作品だけに、笑いと感動をミックスさせた前者は、さらに輝いて見えるのだ。
○スローペースと若手抜てきが月9再生の近道

最後にふれておきたいのは、作品を手掛けるスタッフ。

チーフ演出の石川淳一は、『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)や映画『ミックス。』を成功させるなど、「今最も面白いラブコメを手掛ける」と言われる旬の演出家。一方、脚本を手がける徳永友一は、『HOPE~期待ゼロの新入社員』(フジテレビ系)、『僕たちがやりました』(フジテレビ系)など、原作の持ち味を生かす脚色に定評がある。

2人の演出・脚本がコメディ色の強い漫画原作を若年層にもしっかり届けられる“月9仕様”に生まれ変わらせた。なかでも、「月海の恋と、尼~ずメンバーの成長を一歩ずつスローペースで描く」というスタンスは英断と言える。

とかく「飽きられないように」とテンポを速め、トピックを詰め込む作品が多い中、近年スローペースで恋や成長を描いたのは大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)くらいだった。さらに、このスローペースは1990年前後の月9最盛期を彷彿させるものでもあり、当時に思いをはせたくなってしまう。

「20歳でスローペースのラブストーリーを演じた」という点で思い出したのは、『すてきな片想い』の中山美穂。中山はその他にも、『君の瞳に恋してる!』『逢いたい時にあなたはいない…』『For You』『おいしい関係』『二千年の恋』『ホーム&アウェイ』(すべてフジテレビ系)で主演を務めるなど、月9繁栄の立役者だったが、芳根はそれに続けるのだろうか。時代も芸歴も異なるが、やはり彼女たちのような若手女優の抜てきこそ月9再生の近道であるような気がしてならない。

ひさびさに見る王道のラブストーリーであり、恋愛ドラマの火を消さないためにも、『海月姫』がさらなる反響を集め、“見ている人たち”を最後まで楽しませてほしいと願っている。

■プロフィール木村隆志コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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