日本生命、揺らぐ「不動の業界首位」…「株式会社化」に市場が関心


 生命保険最大手の日本生命保険は、清水博取締役専務執行役員が4月1日付で社長に就任する。筒井義信社長は代表権のある会長に就き、岡本圀衛会長は相談役に退く。

清水氏は日生で初の理系社長となる。京都大学理学部で数学を専攻し、1983年に日生へ入社。保険商品設計の専門家「アクチュアリー(保険数理人)」の資格を持つ。アクチュアリーは国内に正会員が1700人弱しかいない。超難関試験をパスしないとなれないプロフェッショナルだ。

営業の最前線である支社長を経験していないが、商品開発や企画、資産運用などの中枢ポストを歩んできた。2011年、筒井氏の社長就任時には、総合企画部長として中期経営計画の策定を指揮した。16年に取締役専務執行役員に昇進し、資産運用部門を統括してきた。海外のM&A(合併・買収)も担当している。

日生は昨年12月、米国の大手資産運用会社、TCWに出資した。出資額は非公表だが、5億ドル(約550億円)程度と推定されている。米投資ファンド、カーライル・グループからTCW株の24.75%を取得した。

TCWは1916億ドル(約21兆円)ある預かり資産の8割以上を米国債券で運用している。日本国内は超低金利という厳しい環境が続いていることから、日生はTCWに資産の一部の運用を委託して収益を上げるのが狙いだ。TCWへの出資の交渉役を担当したのが、資産運用部門の担当役員だった清水氏である。

●第一生命、かんぽ生命とのつばぜり合い

「生保のガリバー」と称されてきた日生に激震が走った。15年3月期に、100年以上守り続けてきた首位の座を明け渡す事件が起きたためだ。売上高に相当する保険料等収入で第一生命ホールディングス(HD)に首位の座を奪われた。

ここから日生の反撃が始まった。筒井氏は15年3月、「10年間で最大1兆5000億円の投資をする」との考えを示した。M&Aを積極的に行う路線に基づき、三井生命保険や豪生保MLCを買収し、印リライアンス・グループ傘下の運用会社への追加出資も決めた。さらに、TCWへの出資も決断し、「日本以外で1000億円の利益を上げる」布石を打った。

これまで、清水氏は筒井氏と二人三脚で歩んできた。筒井氏のM&A路線を引き継ぎ、さらに発展させるための“攻め”の社長交代と位置づけられている。

清水氏は記者会見で、「業界の揺るぎないマーケットリーダーでありたい。そのために、変化を積極的に取り込む」とし、「出資や合併・買収は重要な選択肢のひとつ」と述べた。

集めた保険料を国債に投資すれば安定した収入を得られる時代は終わった。そのため、M&Aに軸足を置き、積極的にリスクを取りに行くというわけだ。

日本生命の17年4~9月期の連結決算では、保険料等収入は前年同期比3.9%増の2兆7324億円、保険の本業からの収益を示す基礎利益は0.7%増の3449億円とプラス成長になっている。しかし日生単独では、日本銀行のマイナス金利導入で貯蓄性商品の販売が抑制されたほか、予定利率の引き下げの影響が出て、保険料等収入、基礎利益とも減収減益だった。

買収した三井生命とMLCが増収増益だったことが寄与して、連結決算の業績を押し上げた。「M&Aさまさま」の決算といえる。

ライバルの第一生命HDの4~9月期の保険料等収入は2兆2224億円、株式を上場したかんぽ生命保険は2兆2036億円。両社に、いったんは抜かれたが、すぐに抜き返し、4~9月期に突き離した。とはいえ、2位以下が猛追しており、厳しい環境にあることに変わりはない。さらなる大型のM&Aを実施し、突き放したいところだ。

第一生命HDは株式会社になり、上場を果たしている。かんぽ生命も新規株式公開した。一方、日生は昔ながらの相互会社だ。株式会社に組織を改めて株式を公開することも、ひとつの選択肢となる。国内最大の機関投資家である日生が株式を公開すれば、証券市場に新しい風が吹くのは間違いない。

清水新体制の経営課題は数多くあるが、株式公開が最大のテーマとなる。
(文=編集部)

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