「カネ無し生活」のマニュアル本『ゼロ円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』

日刊サイゾー

2018/2/6 14:00


 金、金、金。

今の日本では、「世の中は、ほぼすべて金」が現状。食べるもの、住む場所、通信、移動、生きるためには金がいる。本当だろうか?

『ゼロ円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』(新潮社)は、もらったり、シェアしたり、ゴミをひろったり、行政サービスを利用したり、自然界から採ったりと、無料でできるさまざまな具体例を紹介している。著者で実践者は、かつて『完全自殺マニュアル』で大きな話題を呼んだ、ライターの鶴見済氏だ。

本書には、お金への依存が高い社会になるほど、持っていないと生きていくことに、致命傷になる。そして、日本の社会はこの依存度が極めて高い、と書かれている。そういった現実を踏まえ、あえて提案するのは、お金に依存しすぎない暮らし。

例えば、物を買うのではなく、無料で“もらう”。地元での出品が豊富で、手渡しで受け渡しができるアプリ「ジモティー」は、利用したことがある人も多いかもしれない。鶴見氏も、これまでにオーブンレンジ、棚、リュック、ホーロー鍋などたくさんの物をもらったそうだ。逆に提供側にもまわって、自宅で使っていた風呂の蓋、椅子、ベッドをはじめ、共同の畑で使った、使い古しの物置や動かなくなった草刈機など大量の粗大ゴミまで出品したら、もらい手がいたという。

また、不用品を回す「店」も、世田谷区には存在しているという。約3坪の店内外のスペースにはぎっしりと服や家庭用品、雑貨が並べられ、もらうことも、持ち込むのも自由。店番はボランティア、家賃をはじめとする月7万円かかる維持費は、カンパによってまかなわれている、というから驚く。

無料で何かを受け取ったり、やりとりをしようとすれば、どうしても手間が増えるし、人間関係も濃くなる。物をひとつ借りるのにも、仲のいい人がいないと、お願いしづらい。鶴見氏は自分でゼロ円生活の実践を続けることで、お金は「人間関係の省略」だと気づいたという。

また、資本主義の反撃、とも。そもそも地球上にある物は、はるか昔からすべてが共有物だった。みんながそれを分け合い、人にあげたり、お返ししたりしてきた。けれど、ここ2世紀ほどで新しいものを次々と作り出し、それらを持つことが豊かさだと刷り込まれてきた。今ではあらゆる物がすっかり行き渡り、あふれすぎた。その結果、ひとりがひとつずつ持っている必要はないのでは? と気づく人が増えてきて、近年では、家にしろ、車にしろ、なんでもシェアすることが進んでいる。

この本を読んだからといって、本当にゼロ円で生きていけるワケではない。けれど、お金の使い方について見つめ直すきっかけになる。老後には何千万円も貯めないと、生きていけないのか? 持っていないと、死ぬのか? 確かに今は、右肩上がりの時代は終わりを告げ、お金をバンバン稼いで、貯めることが難しい時代になってきている。

お金とは何か? 付き合い方を考えるヒントが、この1冊に詰まっている。
(文=上浦未来)

●鶴見済(つるみ・わたる)
1964年東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。フリーライター。著書に『脱資本主義宣言グローバル経済が蝕む暮らし』(新潮社)、『完全自殺マニュアル』『無気力製造工場』『人格改造マニュアル』『檻の中のダンス』、編著に『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』(以上、太田出版)、共著に『レイヴ力』(筑摩書房)などがある。

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