最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

藤井聡太の師匠が語る、子どもの才能の育て方

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

●最年少プロ棋士が育った環境
このほど、中学生としては史上初の五段に昇段した藤井聡太棋士。そのめざましい活躍に将棋ファンのみならず、多くの子育て世代も関心を持っています。

類い稀なる才能はどのように育まれたのか。著書『弟子・藤井聡太の学び方』を出版された、藤井五段の師匠・杉本昌隆七段にインタビューしました。

○子どもが主張できる環境の大切さ

――杉本七段は、藤井五段が小学4年生の頃から指導にあたられています。ご家族とのお付き合いもあるかと思うのですが、親御さんの接し方や子育て方針についてどのような印象を持たれていますか?

やりたいことをやらせる、子どもの意思を尊重されているご家族だなという目で見ています。あれをやりなさい、これをやりなさいといった感じで引っ張っていくのではなく、自主性に任せて後ろからじっと見守っている印象を強く受けましたね。

例えば、藤井が小学生の頃、将棋を指している部屋の中に、お母さまは一切入ってこられませんでした。いつも廊下で待っていて、対局姿はご覧にならないんです。

――邪魔したくないということなんでしょうか?

いろんな意味があると思います。子どもがやっていることを尊重し、将棋については指導者に任せるというお考えなのかもしれません。それに、見ているといろいろ言いたくなりますよね、あのときは姿勢が悪かったとか、口のきき方がよくないとか……。これは私の想像ですが、そういう風に口出ししない方がいいと判断されてのことなのかなと思っています。

――一歩引いた目で見守られている?

例えば、藤井は対局で負けたとき、悔しくて大泣きすることがあったんですが、お母さまが慌てている様子は見たことがないですね。子どもが泣いてしまうとお母さん自身が恥ずかしいと思われて、泣きやませようとするケースもあると思うんですが、ある程度泣かせておいて、最後には会場から連れて出て行かれていました。

一歩引いて、客観的にお子さんをご覧になっているなと思いました。お子さんがその道で成長していくために何が必要か、しっかり見極めていらっしゃる印象です。

――藤井五段が使っていたというおもちゃ・キュボロやモンテッソーリ教育が話題になっていますが、そういったご家庭での教育方針も今の活躍に結びついているのでしょうか?

藤井に合っている教育法だとは思いますが、それは今の藤井五段を作るほんの一部分ではないでしょうか。それよりも、本人が思ったことを言える環境が家庭にあり、のびのびと育ったことが大きく影響しているように思います。

藤井は大人相手にも、将棋盤の上で萎縮することは全くなかったし、自己主張もちゃんとできる子です。ご家庭で、1人の人間として尊重されてきた結果なのかなと私は考えています。

――師匠にもきちんと主張される?

昔はあんまり意見を言わないほうでしたけどね。将棋の盤面に関しては、強い信念を持っているんだろうと感じましたし、はっきり否定はしませんが、不満そうな顔をすることで暗に私の手を否定しているなと思うことはあります(笑)。

最近は「これはこちらの手の方がいいと思います」とはっきり意見を主張することもあります。

――主張しあえる関係性を築かれているんですね

大人だから何も言われなくていいとか、成長しなくていいということはないでしょうし、子どもって大人が思う以上にいろいろ考えています。年長者が若い人の意見を聞くのはみっともないと思ったり、自分の人生観を否定されるような気持ちになったりすることもあるかもしれませんが、それはもったいない。聞く耳を持って、初めから拒絶しないことは意識しています。

私も子どもがいるので思うのですが、親ってずっと子どものことを見ているので「この子は何もできない」って思ってしまいがちです。しかし子どもは、日々成長している。親でもはっとするようなことをいつの間にか知っているものなんですね。それを尊重してあげるべきだし、その大前提があって付き合えれば、師弟関係でも親子関係でも、良い関係が築けるのではないかと思います。

○親がうっかりしていた方が子どもの自主性は育つ

――本書の中では「弟子たちに将棋の具体的な勉強法を指示することはない」とありました

"正解なんてない"というのが将棋に対する大前提ですし、これは人生においても、子育てにおいても言えることなのではないでしょうか。

例えば習い事にしても、親が得意分野であったり、経験者であったりすると、自分の経験から伝えようとしますよね。それはそれで素晴らしいことだと思うのですが、親と子どもって性格も時代も環境も違うわけで、それぞれに適した勉強法があるはずなんです。

――どうしたら指示しなくても、子どもが自発的に取り組んでくれるのでしょうか?

親がしっかりしすぎていない方がいいなと思うことはありますね。親がしっかりしすぎていると、それに従うだけになってしまって子どもは考えなくなります。

子どもと出かけるとき、私はよく道に迷うんですが、どうしたら目的地に着けるか、子どもが考えてくれるようになりました(笑)。私が道に詳しければ、問答無用で目的地に連れて行って終わりですが、うっかりが多いからこそ、子どもが考えます。

――将棋の指導でも同様のことは言えますか?

例えば将棋を指導しているときに、あえてうっかりミスをしてみることはありますね。そうして弟子や子どもたちから咎められるか試すのです。うまく咎められたときには「そんな手があったのか、知らなかった!」と言ってみせて、喜ばせます。

またある局面で、子どもたちから聞いた打開策を使って勝ったときには、そうでなかったとしても「君のおかげで勝てたよ」と声をかけます。そうすると、大体の子どもが満面の笑みを浮かべます。役に立ったり、頼られたりすると、どんな子でもうれしいんですよね。

――自信にもなりますし、自分で考えようという気持ちになりますよね

考えている時間は、成長の源です。結論が出なくてもいいから、自分の頭で考えることが大切です。

何か子どもが黙ってじっと考えている、口ごもって言えないでいる……そんなとき、「どっちなの?」と催促したり、せっつくようなことをしたりしては、せっかくの成長するきっかけを摘んでしまうのではないかなと思います。

いいお父さんお母さんであろうとしすぎなくていいと思いますし、時間をかけてずっと子どもを見てあげることがいいとも限りません。完璧にレールを引いてあげることがいいのかも、怪しいと思っています。

次ページでは、杉本七段が考える子どもの才能の見つけ方、伸ばし方などについてお聞きします。

●わが子の才能を引き出すためにできること
○"小さな好き"が才能の可能性を見つけてくれる

――とはいえ、藤井五段のように「自発的に取り組みたい!」と思える対象を見つけるのは難しいこともあると思います

例えば算数が嫌いだった場合でも、引き算だけは好きとか、図形や数字を見るのは好きとか、何か一つ"好き"なことがあると思います。それを見つけてしまえば、伸びていく可能性は高いと思っています。

嫌いなことってある程度しかうまくならないと思うんですよね。まずは何かやらせてみて、好きかどうかを確かめたり、小さな好きを見つけてみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。

――そこから本人の才能も導き出せるものでしょうか?

例えば同じ将棋でも、その子によって面白い展開、面白くない展開は異なります。弟子や子どもたちの表情を見ていると、本人にとって面白い局面のときは、楽しそうな顔をしています。そこが本人の好きなところであり得意なところ、才能がある可能性が高いところなんです。

藤井は勝負の終盤、詰む・詰まないという局面が好きなんですが、それまでの漠然とした局面のとき、昔はあまり楽しそうではありませんでした。

――あまり楽しそうでないところ、苦手な部分を克服させようとはお考えにならなかったんですか?

私はどちらかというと、藤井があまり面白いと感じていなかった終盤に至るまでの"漠然とした局面"が好きなんですが(笑)、藤井の関心がないところ、弱点の部分を教えることは、自己満足のような気がしましたし、当時の本人にとって必要の無いことなので、しませんでした。

楽しそうでない部分、苦手な部分をなくすという展開もあるかもしれませんが、将棋に関しては得意なところを伸ばしたほうが、結果として苦手な部分がなくなってくるケースが多いんです。

――将棋以外の分野でも、同様のことが言えそうですね

できないことを"弱点"として見てしまうとそこまでです。弱点をきっかけに、異なる分野で人より勝るものを見つけてあげたほうが、子どもたちは生きやすくなるような気がします。

○勝負に出る子どもたちを前に、親・指導者はこうありたい

――杉本七段は本書で"悔しさが才能を伸ばすエネルギーになる"と書かれていました

例えば藤井に関して言えば、ただ単に悔しがるのではなくて、負けた原因が何か自分なりに考えて結論を出す、そしてすぐに頭を切り替えて次に挑戦していく、といった過程を踏んで、知らず知らずのうちに成長していったような気がしています。持って生まれたものだとは思いますが、そうさせる周りの環境も大きく影響していたのではないでしょうか。

「負けてもしょうがない」と親が納得させてしまうケースって多いですよね。もちろん切り替えは大事なんですが、負けた原因をはっきりさせておいて、それが分かった上で忘れる、という過程は必要です。

「相手が強いからしょうがない」とか「年上だから負けても当たり前」とか、負けを正当化するのではなくて、必ず原因を探る。原因が分かれば、自然と自分がやるべきこと、学ぶべきことも見つかります。それを自分で考えられる子は、必ず成長していくと思います。

――一方で"勝ち負けにこだわりすぎない"という言葉もありました

将棋で言うと、勝ち負けは日常的なことですから、今日はたくさん勝ったとか負けたとか、一個一個を切り取って考えてしまうと、大前提である楽しむ気持ちや強くなるという気持ちから離れてしまいます。

一個一個を一生懸命やるべきではありますが、仮に負けたとしても、早く切り替えないと立ち直れないし、私たちの世界では切り替えの早い人が強い。ですから周りのご家族が目先の勝負にこだわらない姿勢は大事ではないかなと思っています。

将棋でなくとも、例えば受験や就職、テストなど、合否や数字が出るものは結果に捉われがちですよね。でも、あまりそれに捉われてしまうと子どもが失敗したときに立ち直れません。

本当に大事な勝負って人生でそう多くないし、受験も就職も失敗したって諦めなければ次のチャンスは必ず来る。勝っても負けても、人生の勝負ってその先にあると思うんです。経験豊富な大人は、それを教えてあげるのが役目ではないかと思います。

親として無関心ではいけないと思いますが、子どもと同じように試験に落ちて悔しがったり、いい結果が出て喜びすぎたりすることなく、どっしりと構えていた方が子どもたちにとってはいいのではないでしょうか。

○『弟子・藤井聡太の学び方』(PHP研究所/税別1,400円)

永世七冠を達成した羽生善治竜王との公式戦初対局を控え、29連勝した昨年から引き続き注目の史上最年少プロ棋士・藤井聡太五段。その藤井五段が小学四年生で弟子入りしたのが、本書の著者・杉本昌隆七段です。入門以来どのような指導をしてきたか、進学を強くすすめた理由、愛弟子はなぜ急成長したのか――師匠ならではの分析で「強さの秘密」を解説します。藤井五段も原稿段階で読了した「藤井聡太オフィシャルブック」です。

○杉本昌隆

1968年11月生まれ、愛知県名古屋市出身。1980年6級で(故)板谷進九段門。1990年10月1日四段。2001年5月、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。2006年2月10日七段。2008年、「NHK将棋講座」の講師を務める。本格派振り飛車党で、特に相振り飛車については棋界きっての研究家として知られている。将棋の戦術書の著作は15冊以上になる。地元の東海研究会では幹事、また杉本昌隆将棋研究室を主宰し、後進の育成にも力を注ぐ。

外部リンク(マイナビニュース)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

ライフ最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス