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予算縮減で、1300年前の貴重な「正倉院文書」が危機的状況に

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◆東大寺正倉院には、宝物だけではなく貴重な古文書が大量に残されていた

奇跡的に残された、奈良時代(8世紀)の膨大な紙史料「正倉院文書」が“危機”にある。長期保存や研究のための精巧な複製の製作が、近年の予算縮減のため滞ってしまう可能性があるというのだ。

大仏で知られる東大寺(奈良県)の正倉院といえば、聖武天皇や光明皇后ゆかりの品に加えて、約1300年前にシルクロードを経て日本に伝えられた瑠璃碗やガラス細工など、9000件にも及ぶ宝物が収蔵されていることで有名だ。一方、この正倉院には大量の紙史料が残されていることはあまり知られていない。国立歴史民俗博物館(歴博)の仁藤敦史教授はこう解説する。

「8世紀の古文書がこれだけ大量に残っているというのは世界的にも類を見ない、貴重な史料です。歴博ではこの文書の精巧な複製を作ってきたのですが、近年の予算縮減のあおりを受けて、このままでは続けられない状態になっています」

◆このままでは半世紀かけても複製できない

歴博が複製を作り始めたのは1981年から。1億画素のカメラを用い、「コロタイプ」という多色刷り技術を使って精巧な複製を作り上げてきた。糊やシミの具合、文字や印鑑の濃さなど、微細な部分が忠実に再現されている。

「現在ようやく半分程度の複製ができましたが、このまま予算が削られた状態では、あと半世紀かけても全部の複製をつくることはできません」

仁藤教授がこの複製を急ぐのには、理由がある。

「3.11で、東北地方では多くの貴重な歴史的史料が失われました。いざというときのために、史料のバックアップをできるだけ早く作っておかなければなりません。また、国民の大事な財産でもありますから、できるだけ多くの人々に見てもらいたいという気持ちもあります」

現在、正倉院文書の現物は奈良国立博物館で年に1回開かれる「正倉院展」で数巻が展示されるだけで、なかなか見ることはできない。

「正倉院文書においては、朱の書き入れや合点、官印などを含む原本情報が非常に重要。こうした情報が十分に公開されてこなかった状況を打開するためにも、精巧な複製を作ることが必要なのです」

「正倉院文書」とは東大寺の正倉院に残された膨大な古文書群で、天平期を含む神亀4年(727年)から宝亀7年(776年)までの約50年間にわたって、主に東大寺の写経所が作成した帳簿などだ。その数はおよそ800巻、点数にすると1万点以上にものぼる。

「実はこの文書には『表』と『裏』があるんです。当時は紙がとても貴重だったので、行政文書の『ウラ紙』を利用していました。つまり、本来なら一定期間で廃棄(例えば、戸籍の場合は30年)されるはずだった文書が、奇跡的にも捨てられずに残ったというわけです」

◆早期完了を目指して、クラウドファンディングで支援金を募集

今年1月15日、この貴重な正倉院文書の複製を一刻も早く完成しようと、クラウドファンディングが立ち上がった。

全部の複製を完成するには数億円以上かかるともいわれているが、複製の早期完了を目指して、まずは「続々修第12帙第8巻」1巻分の複製(長期の保存・利用、耐久性に優れた原色コロタイプ印刷により実行)についての支援金を募集する。目標額は350万円、募集期間は3月30日23時まで。製作完了予定は2019年3月末日ごろ。プロジェクト参加者の名前は、複製製作記念巻物に記載され、永久に保存される。

「クラウドファンディングは、オールオアナッシング。目標額に届かなければ返金しなくてはならないんです。ぜひ多くの人に正倉院文書に関心を持っていただき、複製完成のためのご理解・ご支援をいただけましたら幸いです」(松澤裕子・歴博広報・普及係長)

歴博では、いずれこの複製を常設展で一般に公開、常時閲覧可能とする予定だ。広く調査研究のために利用してほしいという。

「国民全体で文書を守るという点から、クラウドファンディングはいいやり方だと思います。ぜひ、当時の人たちの息づかいを感じられるこの文書を、多くの人に見ていただきたいと思います」(仁藤教授)

取材・文/北村土龍(本誌) 写真/鈴木 麦 便利堂 時事通信社

※『週刊SPA!』2/5発売号「1万点の[正倉院文書]を救え!」より


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