旧村上ファンド、冷凍マグロ運搬船会社へTOB仕掛け大誤算


 冷凍マグロ運搬船を運航する東栄リーファーラインは1月12日、現社長らによるMBO(経営陣による買収)が不成立になったと発表した。議決権の3分の2にあたる368万株以上の取得を目指していたが、集まったのは252万株にとどまった。

MBOにノーを突きつけたのは、かつて「物言う株主」として一世を風靡した「村上ファンド」(M&Aコンサルティング、MACアセットマネジメントなどの総称)の流れを汲む投資ファンドだ。

東栄リーファは、1959年に東栄物産の商号で設立して貿易業を始め、海運業に進出するため74年に現社名に商号変更。90年に日本証券業協会に店頭登録、2004年にジャスダック市場に株式を上場した。

現在、冷凍さしみマグロを市場に供給する事業を柱としている。世界的なマグロ人気を背景に海外勢が乱獲し始めたことも影響して、漁獲量が安定せず業績は悪化していた。18年3月期の売り上げは前期比3.9%増の82億円だが、営業利益は3.0%減の6億円、純利益は11.9%減の4億円の見込みだ。

より高い収益を生み出す新規事業として、養殖用飼料の買い付け、低燃費の小型FRP漁船によるマグロ延縄事業などへの参画を計画した。「新規事業を拡大することと株価の継続的な上昇、配当の増額を求める投資家の期待に応え続けることを両立させるのは困難だ」として、MBOによる上場廃止に踏み切ることにした。

東栄リーファは17年11月8日、河合弘文社長らが出資するオーシャンによるMBOを行うと発表した。オーシャンは河合社長のほか東栄リーファの取締役4人が役員を兼任している。

オーシャンは1株600円で東栄リーファ株のTOB(株式公開買い付け)を行った。同社株式の8.55%を保有する筆頭株主の東栄開発などとTOB応募契約を結んだ。用意万端整えてTOBに臨んだわけだ。

そこへ、旧村上ファンド系の投資ファンドのオフィスサポートとレノがTOBに参戦してきた。17年11月末、オフィスサポートが7.4%の株式を握る大株主になったことが大量保有報告書で判明。その後、買い増しを続け、レノとの共同保有比率は9.07%、11.68%、14.9%と高まってきた。

●黒田電気では旧村上ファンド側が完勝

オフィスサポートの池田龍哉社長は旧村上ファンドの総務部長。一方、レノの福島啓修社長は、村上世彰氏の側近で旧村上ファンドの企画課長だった三浦恵美氏の後任として同職に就いた。レノは存在感を増し「村上ファンドの復活」と話題を呼んだ。

17年6月29日に開催された電子部品商社、黒田電気の株主総会で、レノが提出した社外取締役を選任する議案が賛成多数で可決されている。モノ言う株主による株主提案が可決されたとしてニュースにも取り上げられた。

黒田電気はレノの提案に反対していたが、共同保有分を含めて発行済み株式の37%を握るレノに加え、他の少数株主も賛同した。危機感を持った黒田電気側は先手を打った。

黒田電気は17年12月16日、アジア系ファンドのMBKパートナーズによるTOBが成立したと発表した。発行済み株式の68%にあたる2570万株の応募があり、買い付け予定株数の下限(1891万株)を上回った。黒田電気は、臨時株主総会を経て上場廃止になる。

MBKはレノと交渉してTOBの賛同を得た。TOB価格は1株当たり2720円。MBKは黒田電気株の過去6カ月間の平均株価に約30%のプレミアムを付けた。高値で売り抜けたレノの完勝との見方もできる。

●東栄リーファ側のTOB価格が低すぎたのが敗因

では、オフィスサポートおよびレノの旧村上ファンド勢は、何を狙って東栄リーファのTOBに参戦してきたのか。オーシャンが提示したTOB価格があまりにも低かったことが原因だ。東栄リーファの17年9月末時点の1株あたり純資産は885円。ところがTOB価格は600円で純資産額を3割強下回る。TOBに応じるよりも会社を解散したほうが株主には有利になる。

旧村上ファンド勢は株式を買い占めて揺さぶりをかけ、TOB価格を引き上げさせ、高値で売り抜けを狙ったということだ。TOB価格の引き上げ期待から、東栄リーファの株価は、18年1月10日には826円の昨年来高値をつけた。期待に反してオーシャンはTOB価格を引き上げなかった。

その結果、MBOは不発に終わり、株式を非公開とする計画が崩れた。そのため、MBOの成立を前提にゼロとしていた18年3月期の配当予想を12円に修正した。

TOB価格の引き上げに失敗した旧村上ファンド勢はどうするのだろうか。買い占めた株式をどうやって高値で売り抜けるかが焦点となる。株主への利益還元を強く求め、自社株買いを迫るのが常套手段だが、東栄リーファの利益剰余金は30億円強(17年9月期末)しかなく、財務内容も良くない。今年の株主総会に向けて“第2ラウンド“の展開を予想するのは困難だ。
(文=編集部)

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