『姫の井』といえば「もち米四段仕込み」 一徹に寒造りにこだわる女性蔵元

しらべぇ

2018/2/4 22:00


(©ニュースサイトしらべぇ)

『姫の井』の石塚酒造は柏崎市街を離れた山間の高柳地区にある。

雪深い高柳は、かやぶき屋根の集落で町おこしをしていることでも知られ、また特産品である門出(かどいで)和紙は、新潟の人気酒のラベルに用いられることで話題になった。 

 ■地域と蔵は一心同体


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「当蔵では、積雪が2m近くになる冬季に、手造りで日本酒を造っています」と話すのは代表取締役の石塚政子さん。

西には黒姫山、東に連なるのは高耕地山・薬師山・天王山。ほぼ中央を貫流する鯖石川沿いの小規模な平坦地と、山腹の比較的平らな山間に19の集落が点在する高柳町。

当然自然環境に恵まれ、酒造りの環境も秀でている。雪がもたらす澄んだ空気と雪解け水、酒造期間の安定した気温と湿度、雪深い黒姫山のブナ林から湧き出る水の恵みを受け、棚田で育つ優れた米。

「地域と蔵は一心同体。『姫の井』は高柳地区で生まれる味なのです」と、石塚社長の郷土愛は深い。

■「辛い酒」と「旨い酒」で激動の時代に耐える


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石塚酒造の歴史は元禄時代(1700年頃)に遡る。庄屋を務めた旧家・村山家が酒造りを始めたもので、村山家が景観を整えた京都風庭園の「貞観園」には、酒道具を洗ったとされる池が現在も残っている。

変遷を経て1912年に高柳酒造場として発足。

「祖父・義父と代を重ね『辛い酒 山の井』『旨い酒 姫の井』と戦中の激動にも耐え、酒造り一筋に精進して参りました。その後、1968年に3代目となった主人が石塚酒造株式会社を設立。

祖父の時代から造り続けているもち米四段仕込みを継承して頑固一徹、変えることなく守り続けていましたが、2012年に他界したため、亡夫の想いを引き継ぎ現在の職務に就いた次第です」

と、石塚社長は蔵の歴史を振り返った。

■旨みたっぷりの濃厚な風味になる技法


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それでは「もち米四段仕込み」にするとどんな酒になるのか。造り手を代表して金澤要介さんが答えてくれた。

「もち米を使うと旨みたっぷりの濃厚な風味になります。コスト高にはなりますが、酒味に幅とコクが出てふくらみのある酒になりますね」

十日町出身の金澤さんは、酒の小売り販売業から蔵人に転身。石塚酒造の「かめぐち酒」に出合い、その独特の旨みが人生航路を変えたのだという。 どうしてこの旨みは生まれるのか、その探究心から蔵に入ったのだ。

そして知った「もち米四段仕込み」。この技法によりコクと爽やかな甘みが加わり、酒はより芳醇でまろやかな味に仕上がっていく。

■全国でもまれな造り方


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「もろみは通常、酒母に麹・蒸米・水を3回に分けて加えます。これを三段仕込みといいますが、四段仕込みは搾る少し前に糖化した蒸米と水を加える方法です。うちではこのときにもち米を使っています」

と語る金澤さん。もち米使用の四段仕込みで造っているのは、新潟県内では数蔵、全国でも希少な例という。

「採用しているのは熱掛け四段法です。蒸したもち米を熱いまま、モロミに入れます。糖化、甘み付けが目的なのでもち米を入れた翌日は櫂入れをしません」

こうして高柳の人たちの暮らしに根付いた「かめぐち酒」は生れる。

■もち米ならではの甘さと飲み応えがクセに


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金澤さんはもち米を使ったお酒の虜になり、いろいろな酒にもち米を加えてみたいという想いにとらわれた。 「かめぐち酒」は本醸造だか、吟醸造りに使ったらどうなるか。 試してみたのが吟醸仕込みの純米酒。

「五百万石」ともち米を使い、醪は低温管理した。純米酒『越後高柳さわがに』がそれだ。

「『かめぐち酒』のように濃厚ではないけれど、「五百万石」だけの酒よりもしっかりコクがあり、バナナっぽい吟醸香があっていい感じにできました」 と金澤さん。

飲食店でこの酒を飲んで、美味しかったからと蔵見学に訪れる人もいたそうだ。700~800本しか造らなかったので、あっと言う間に品切れになったという。

これはじつは、前年に発売して好評だった『越後高柳』ブランドの第2弾。使用する原料米はすべて高柳産、そして高柳特産の門出和紙のラベルでボトルを装っている。

酒銘は蔵裏手の小川に生息するサワガニに由来。サワガニは清涼な水に生息する指標生物なので、高柳のきれいな水で仕込んだことを表現したくて名づけたそうだ。

石塚社長:「かめぐち酒」は寒造りの酒として地元でも大人気のお酒です。 そのお酒を雪の中の藏で5月までじっくりと貯蔵して、5月に発売されるのが「雪眠洞貯蔵 かめぐち酒」です。どんな味わいかぜひお試しください。

以下は蔵元お勧めのお酒。

(1) 『姫の井 初しぼり かめぐち酒 本醸造生原酒』


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蔵一番の人気酒。もち米四段仕込みの無ろ過生原酒で、もち米の旨味たっぷりの濃厚な風味と新酒ならではのフレッシュな香りが楽しめる。冬の寒い時期に仕込み、2月の上旬頃にできあがる。

アルコール度数19.5%、飲み頃温度10℃以下がお勧め。

(2) 『越後高柳 本醸造』


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地元高柳産の五百万石を使用し雑味のない透き通った味わいに仕上がっている。ラベルも高柳特産の門出和紙を使用し、できる限り地元産にこだわったお酒。

(3) 『大吟醸 ほんの気持ち』


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女性蔵元ならではの女性目線でデザインした商品。「山田錦」を40%まで磨き、時間と手間をかけ丹精込めて造り上げた。フルーティーで上品な香り、すっきりした味わいで、ワイングラスでおしゃれに飲みたいお酒。

感謝の気持ちを込めてちょっとしたプレゼントにもいい。

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(取材・文/八田信江

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