日本の工作機械業界、空前の繁栄期突入


 工作機械業界の新年恒例の賀詞交換会は熱気に包まれた。

1月11日の日本工作機械工業会(日工会)の賀詞交換会では、飯村幸生会長(東芝機械会長)が今年の業界全体の受注高の見通しを1兆7000億円と、昨年を上回る数字を披露すると会場からどよめきが起こった。

また、1月12日に開かれた日本ロボット工業会の賀詞交換会では稲葉善治会長(ファナック会長)が2017年の生産実績について、16年を3割上回る9000億円になったことを明らかにすると、会場は参加者の熱気に包まれた。

自動車や電子機器などの機械部品や金型をつくるのが工作機械だ。「機械をつくる機械」ということから、マザーマシンとも呼ばれる。

16年の工作機械の受注額は、前年比15.6%減の1兆2500億円。中国経済の低迷による設備投資の減速や米国市場の停滞もあり、海外からの受注は前年比19.6%減の7194億円と大きく落ち込み、3年ぶりに8000億円を下回った。

そんな逆風にさらされていた工作機械業界は、17年に入り状況が一転した。逆風から順風に大きく変えたのは中国だ。

中国への輸出が牽引し、17年、日工会の加盟企業の受注高は前年比31.6%増の1兆6455億円で、07年の1兆5899億円を超え10年ぶりに過去最高を記録する見通しだ。さらに、今年の受注高の予測として1兆7000億円という、前年を上回る数字を示されたことで、会場のボルテージは最高潮に達した。

●中国で産業用ロボットの需要が沸騰

工作機械と並んで日本のお家芸といわれるのが産業用ロボットだ。年間出荷額は世界一を誇る。産業用ロボットの生産額は、ここ数年は7000億円前後だったが、17年は3割増の9000億円となり、18年はそれを上回る1兆円の達成を見込む。

勢いは、それにとどまらない。稲葉会長は「順調にいけば3~5年で2兆円にいく。需要拡大は今後5年なんてものじゃない。2兆円も通過点だろう」と怪気炎を上げる。

稲葉氏の強気の見通しの根拠は、中国での需要の回復。人手不足が深刻化していることが主因といわれている。中国は労働集約型産業が多く、かつては安い労賃による人海作戦に頼ってきた。だが高度成長が続いた結果、人件費の高騰や人手不足を招き、省人化対策としてロボット導入が進んでいるというわけだ。

さらに最近では、製品の質向上の面からロボットを活用する動きが強まっている。製造業の高度化のために国を挙げてロボット導入を進める中国で需要が沸騰している。

昨年秋には中国市場の需要失速の懸念がささやかれていたのが、まるで嘘のようだ。今では、中国企業による「爆買い」で産業ロボット業界は空前の活況に沸いている。

株式市場では産業用ロボット銘柄が買われた。自動車向け溶接ロボットに強いファナックの株価は、昨年大納会の12月29日の終値2万7060円から今年1月16日の高値3万3450円へと23.6%も跳ね上がった。ただ、その後は一服状態になっており、24、25日と急落。一時、3万円を大きく割り込んだ。

溶接や塗装に強く、中国でロボット専用工場をオープンした安川電機は、12月29日の終値4965円から1月18日の高値6120円へと23.2%上昇した。しかし、1月23日の取引終了後に17年4~12月(3Q)の累計決算を発表してから、「材料出尽くし」ムードとなり、24日には急落(5.4%安)の5730円まで下げた。

産業用ロボットメーカーは、中国の爆買い効果で久方ぶりに我が世の春を謳歌している。それを受けて株価は一時、過熱状態となった。

●中国企業がロボット4大メーカーのひとつ、独KUKAを買収

今後も日本勢が高成長を続けることができるのか――。それは中国市場を制することができるかにかかっている。

日本勢の最大のライバルであるスイスのABBは、ロボットの製造拠点を中国に置いている。ABBは中国市場でロボットトップのシェアを持つ。

ファナック、安川電機、ABBと並んで世界の4大産業用ロボットメーカーの独KUKA(クーカ)は16年、中国の美的集団に買収された。KUKAは自動車向けロボットの専業メーカーだ。

中国政府は中国版インダストリー4.0(第4次産業革命)と称される政策「中国製造2025」を打ち出しており、KUKAの買収はこれを実現するための布石といえる。国策として、製造業に対し中国製のロボットを使用することを求めるのは目に見えている。

日本勢はどう立ち向かうのか。中国企業による産業用ロボットの爆買いに浮かれている場合ではない。リーマン・ショック後の需要の急激な冷え込みが再び起こらないとも限らないからだ。
(文=編集部)

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