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紛争時、自衛官の防衛出動手当はいくらもらえるのか? 13年経過も「えっとまだ決めてません」

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「自衛隊ができない30のこと 22」

対北朝鮮のミサイル防衛で配備されているPAC-3やイージス艦は、ミサイルが発射されてもされなくても、「その可能性がある」ということで今この瞬間もずーっと24時間体制で警戒を続けています。PAC-3には護衛がついていますが、当然彼らも24時間対応です。私たちがその存在を忘れている間も、自衛官は絶えず空の異変を警戒し守りについてくれているのです。

しかし、そんな自衛官の給料は下がり続け、今ではとうとう民間企業平均を下回るようになりました。自衛官には残業手当や休日手当はありません。さらに、今年4月には現給保障もなくなり給料が下がる予定です。民間の景気が良くなるほど自衛官の応募が減り、離職も増えるのは自然なことだと思います。

自衛官の充足率の低さの問題は、防衛系議員によって国会でも何度も議論されてきましたが、にも関わらず自衛官の給料はずーっと下げられ続け、具体的な対策がなされることはありませんでした。でも、やっとです! 昨年秋の特別国会で、防衛省職員の給与を改正する法律が成立しました。月に704円程度、ボーナスで1625円増という微増なのですが、これまで常に給料を下げるための法律改正ばかりしていた国会が方向転換したことの意義はとても大きいので歓迎したいと思っています。これからさらにこの金額が少しでも上がる方向になれば、隊員の流出にも歯止めがかかるかもしれません。ずっと貧乏ネタばかりだったこの連載ですが、やっと給与増の芽が出てきたという朗報です。

前の第195国会で、自民党の大西宏幸議員が、自衛隊員の殉職者の数を聞いた後に「そうした厳しい状況にある自衛隊員の勤務の特殊性を考えて、それに見合った防衛省独自の給与体系が絶対に必要だ」と発言されました。これでやっとその特殊性を補う手当についての整備が必要という話が出てきたのです。そうです、自衛官の特殊な手当についても長年ほとんど見直されることはありませんでした。ここはぜひ整備してほしいところです。なんとまあ防衛出動手当の額も決まってないのですよ。ビックリです。

たとえば、先に挙げたミサイル防衛に携わる人たち(具体的にはミサイルのミッドコースを狙うイージス艦勤務の人たちとPAC-3でミサイルの最終フェーズを狙う人たち、その護衛・支援を行う人たち)は24時間対応で任務に就いています。緊迫した気の抜けない業務ですが、これも少し前までは全く手当がつきませんでした。自衛官には残業手当や休日手当はないのですが、仮にコンビニの平均時給の892円を通常勤務の8時間以外の16時間分もらえるとしたら、金額は1万4272円になります。これに対してミサイル対応の自衛官がもらえる手当は1日あたり1000円です。いくらなんでも少な過ぎると思いますが、これまでは0であったことを考えればこれでも改善であり前進なのです。不発弾の信管除去作業という最も危ない作業をする人ですら、平成22年までは作業手当が1日あたり5200円でした。これが最近やっと上がって1日あたり1万400円に改善されました。テレビなどで紹介され話題になった不発弾の捜索や発掘といった作業についても、1日あたり110円だった手当が750円になっています。それでもこの金額です。対峙している危険の割に報われない額だなぁと思います。

民間と比べてみましょう。潜水器具を使った作業のうち飽和潜水以外の業務に支払われる手当は310円~ですが、これが民間の潜水の業務となると、たとえば潜水溶接という海の中での作業だと1日3~5万くらいが相場になるそうです。自衛隊の100倍以上ですね。これでも少しずつじわじわと値上げしようという動きはあるようですが……。ぜひとも加速してほしいです。

さらに大きな問題は、現実に領土が外国の軍隊の侵略を受けたり、日本の本土にミサイルが撃ち込まれたりした時の自衛隊の本気モード、「防衛出動」時の手当が未だに決まっていないということです。平成15年度の有事法制の議論の中で、「有事には防衛出動手当が支給される」と規定されたのですが、その後13年経過しているのに未だにその額が決まっていないのです。

つまり、いざ有事となり防衛出動が出た際、紛争地に行く自衛官に防衛出動手当がいくら出るかもわからない状態で出撃命令が出るということです。第192国会で防衛省人事教育局長は維新の吉田豊史議員の質問に対して「防衛出動基本手当は、出動時の仕事の強度や勤務時間や勤務環境や危険性や困難性や特殊性を評価して決める」と答えていますが、それだけです。これどうなんでしょ?

「ともかく出撃しろ。後でその仕事についていろいろ評価して、いくら出すかはこっちで決めるわ」。こういう感じですよね。

これまで、たとえば東日本大震災の時の東電福島原発の建屋への放水に自衛隊が派遣された時にも災害手当は支給されましたが、その額は1日1620円でした。細かいお金の話ばかりするのもどうかと思われるかもしれませんが、こういったことは現場の自衛官は不満があっても口に出して言わないものです。だからこそ、自衛官ではない私たちが真剣に考え、声を上げるべきことではないかと思っています。

米軍でもっとも危険な任務にあたるネイビーシールズの隊員たちには3000万円を超える年収と、それ以外にも特別洋服代や住宅手当などで給与とは別に20万円近い収入があり、さらに各危険業務では例えば降下なら2万5000円、爆破なら2万5000円という具合に多額の手当が設定されています。軍人は誇りがなければやっていけない職業であり、それを支えるには洗練された身なりや住居が必要と米国人が考えているからこそ、ネイビーシールズに特別洋服代や住宅手当を支給するのです。米軍の中でも彼らは憧れの的であり、みんなができればネイビーシールズのような隊員になろうと考えるのです。

防衛出動手当の金額すら未だに決められない日本国には、軍人に対するこうした敬意が欠けているのではないでしょうか。敬意を払わずして、当たり前のように命を懸けることを求める国。軍人はその祖国を守るべき価値のあるものだと心底感じられるでしょうか? 自衛官は特別な教育を受け、国に忠誠を誓った集団ではありますが、私たちはその崇高な意識に甘えて無理を強いてはいないか、いつまでも自分たちだけが安全なところで胡坐をかいていていいものだろうかと痛切に思うのです。

小笠原理恵

国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰


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