「警察犬を攻撃した者に刑罰を」犯人に腹を切り裂かれたK9のハンドラー、訴え実る(英)

賢さ、忠実さ、そして非常に優れた嗅覚や聴覚を活かし、警察官が入れない小さな場所にも潜入して行方不明者を探し、容疑者をみつければひたすら近づいて吠える―各種の捜査において警察官が“K9”こと警察犬の活躍に頼る部分はとても多くなっているが、追われて心の余裕をなくしている容疑者はどんな手を使ってもそれに抵抗するもの。そうなれば警察犬は果敢な性格が災いし、命の危険にさらされてしまうことになる。犯人にナイフで刺されてあやうく命を落とすところであったイギリスの警察犬“フィン号”。その話題が人々の関心を集めているもようだ。

ロンドンの北に位置する英ハートフォードシャーで、警察が里親から譲り受けた時はちょうど生後9か月であったというジャーマンシェパードの“フィン号”。数々の訓練を経てハートフォードシャー州警察のデイヴ・ウォーデルさんとチームを組むようになって以来、フィン号は6年の任務のなかで犯罪者200名以上を追跡してきた。類まれなる捜査の才能ゆえ、認知症で徘徊する女性を探し出したこともあるという。

ところが2016年10月、強盗事件を起こして警察に追い詰められたある犯人が、8歳であったフィン号を隠し持っていた刃渡り25.4cmのナイフで刺した。ウォーデルさんを守ろうとしたフィンは頭を切りつけられ、腹を十字に切り裂かれ、瀕死の重傷を負った。今もその夜の出来事を鮮明に覚えているというウォーデルさん。彼は『MailOnline』の取材にこのように語っている。

「私は容疑者に言いました。『どうか話を聞いてくれ。この犬と争うのは無駄な抵抗というものだぞ』と。ところが…暗いなかで私の目に飛び込んできたのは大きな金属性のものでした。さらに犯人はフィンの胸部から下に向けてそれをぐいっと引き、フィンの体は血で覆われました。狩猟用を思わせる実に巨大なナイフだったのです。」

「私の大事な犬が刺された―この野郎、なんということを…と動揺する私に代わり、フィンは力を振り絞って男の脚に噛みつき、激しくその体を振り回したのです。」

警察犬としての使命にあくまでも忠実であったフィン号。バックアップの警察官が現場に到着し、すでに息も絶え絶えであったフィン号は24時間営業の獣医のもとに運ばれた。ところがそこでは手術ができず、設備の整った別の医師のところに運ばれた時には翌朝4時にもなっていた。このニュースは世界中に流れ、フィン号の命が助かるようにと誰もが祈りを捧げてくれたが、ウォーデルさんはとにかくやるせなかったという。

「動物への虐待や傷害行為は、動物保護法(Animal Welfare Act)により最も重いものでも6か月の懲役が科せられるだけだ。さらに命懸けの捜査の前線にありながら、警察犬への攻撃に対しては『器物損壊罪』が適用されるのみだ。なぜ警察犬は犠牲になっても軽視されてしまうのか。そんなバカなことがあってよいのだろうか。」

なんと彼を刺した犯人は、裁判では窃盗罪についてのみ問われて服役生活はたった4か月で刑期満了となっていた。ウォーデルさんはその事件をきっかけに、警察犬に攻撃する者があればそれについても罰することができるような新たなる法の制定を求める動きに出た。その法案の名は「フィン法(Finn’s Law)」。オンラインでの嘆願書には数日間で13万人以上が署名し、議会に大変なプレッシャーをかけた結果、フィン号が瀕死の重傷を負ったわずか5週間後の2016年11月14日、国会でフィン法についての議論がなされた。

その結果、K9は警察の所有物ではなく痛みや苦しみの感覚を持った生き物として扱われることが議決された。しかし動物虐待に関しては最高6か月の懲役刑に処するという刑期のままであることに、法としてあと一歩の前進を求める働きかけが王立動物虐待防止協会(RSPCA)など多方面からあり、更なる交渉が続けられた結果、ついにその懲役刑が最高5年に引き上げられようとしている。

同年12月20日、再び捜査チームのメンバーとして任務に復帰したフィン号であったが、昨年3月末にはK9としての現役を引退した。警察犬として素晴らしい実力を発揮してくれたフィン号を送り出し、片腕をもがれたかのような喪失感を味わっているハートフォードシャー州警察の人々。しかし人間のエゴのせいで大変な使命を負わされたフィン号には、本当に痛々しい思いをさせてしまい、さぞかし申し訳ない気持ちでいっぱいなのであろう。

画像は『Metro 2018年1月28日付「Hero police dog stabbed with 10inch blade while on duty」(Picture:Facebook)』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 Joy横手)

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