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これは映画館で体感する超リアルな降霊実験だ!! 現世と異界とを結ぶ試み『霊的ボリシェヴィキ』

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 現代科学ではまだ証明されていないオカルトパワーによって社会革命を遂行し、新しい世界を創ろう。“霊的ボリシェヴィキ”という耳慣れない言葉を分かりやすく翻訳すれば、こんな感じだろうか。霊的ボリシェヴィキとは、人気オカルト雑誌「ムー」(学研プラス)に多大な影響を与えた神道霊学研究家・武田崇元が提唱した言葉であり、オウム真理教の麻原彰晃も感化されたのではないかと噂されている。古来より日本では言葉には霊力が宿るとされてきたが、そんな言霊感たっぷりな霊的ボリシェヴィキという言葉に魅了された映画人が、『女優霊』(95)や『リング』(98)の脚本家として著名な高橋洋だった。彼がメガホンをとった映画『霊的ボリシェヴィキ』は、ホラー映画界に革命をもたらしかねないほどの恐ろしさに満ちあふれている。

推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズやSF小説『失われた世界』で知られる作家アーサー・コナン・ドイルだが、晩年はオカルト研究に没頭した。発明王トーマス・エジソンは、霊界との通信機を開発することに熱中している。ナチスドイツを率いたアドルフ・ヒトラーも、オカルト研究に並々ならぬ興味を示した。知識人ほどオカルトにハマりやすく、人間の死後の世界、異界について調べたくなってしまう。高橋洋監督による『霊的ボリシェヴィキ』もまた、映画製作という手法を使って、あの世の存在について探ろうとする。劇場の照明が消え、暗闇が客席を覆い、やがてリアルな恐怖が我々の足元に向かってひたひたと迫り寄ってくる。

町はずれの廃工場らしい奇妙な施設に、7人の男女が集まってきた。この集まりを主宰した霊能者・宮路(長宗我部陽子)によって、招かれた“ゲスト”たちが身に付けていたお守りなどの宗教アイテムは回収される。会場にはICレコーダーではなく、アナログのカセットレコーダーが用意されていた。霊障があると、デジタル機器はすぐに使えなくなってしまうためだ。おごそかな空気の中、ひとりひとりがかつて遭遇した自身のオカルト体験を語り始める。ここに集まった男女は、みんな何らかの形で“あの世”に触れた過去があった。選ばれし者たちによって、濃度の高い「百物語」、こっくりさんを思わせる降霊実験が行なわれようとしていた。

最初の語り部となったのは、屈強そうな体格の男性・三田(伊藤洋三郎)。彼は元刑務官であり、何人もの死刑囚が死刑執行される様子を見送ってきた。その中でも忘れられない死刑囚がいるという。その死刑囚は自分の処刑日が来たことを察知するや、独房の中で頑なに抵抗を続けた。あまりにも暴れ回るので、催涙弾を独房の中に撃ち込み、警棒で殴りつけ、ようやく死刑台へと連れ出すことができたが、どうしてあの死刑囚はあそこまで死を恐れたのか分からないと三田はいう。三田がそう話し終わった瞬間、どこからか怪しい男の笑い声が廃工場内に響き渡る。ゲストが恐ろしい話をする度に、廃工場内の霊気が高まり、確実にあの世がこちらへと近づいていた。薄暗い劇場で観ている我々の足元、いや首筋にまで黒い影が忍び寄っているのではないか。そんな恐怖に駆られ、思わずぞっとしてしまう。

この集いの目的をよく知らずに由紀子(韓英恵)は恋人の安藤(巴山祐樹)に連れられて参加していたが、彼女は幼い頃に“神隠し”に遭ったという特殊な体験をしていた。無事に発見された由紀子だが、神隠し中のことはまるで覚えておらず、それ以来ずっと奇妙な違和感を感じながら生きてきた。鏡を覗くと、何か不思議なものが映っているような気がしてならないのだ。やがて由紀子が自分の体験を話す順番が訪れるが、それまで明るかった窓の外が急に暗くなってしまう。高まった霊気によって、廃工場内の時間の流れまで狂ったらしく、あっという間に日が沈んでしまった。由紀子たちは廃工場に隣接する宿泊所に泊まり、不気味な夜が過ぎていく。翌日、由紀子はいよいよこの集いの本当の目的、霊的ボリシェヴィキを体験することになる。

Jホラーブームを巻き起こした『女優霊』や『リング』シリーズの脚本を手掛けた後、高橋洋は自身で監督も務め、より先鋭化されたホラー映画を撮るようになった。藤井美咲、中村ゆりが出演した『恐怖』(09)では、人間の脳の側頭葉にあるシルビウス裂に刺激を与えることで人為的に遊体離脱を起こすという実験に取り憑かれた脳科学者(片平なぎさ)の狂気が描かれた。本作もまた、常規を逸した心霊実験をシミュレーションしたものとなっている。刑務官だった三田や神隠しに遭った由紀子たちがそれぞれ語るエピソードは、実際にあった出来事や高橋監督自身の記憶をベースにしたものばかりだ。キャストが集まっての初めてのホン読み(脚本の読み合わせ)は、「まるでそれ自体が降霊実験のようだった」とスタッフが語るほどの緊張感に満ちていたという。

本作は映画ではない。あの世とは何か、生きた人間が異界を知覚することができるものなのかを証明しようとする、観客参加型の心霊実験となっている。上映時間は72分と短いが、身の毛のよだつ一夜を過ごしたかのような濃厚な恐怖体験を味わうことになる。人間が感じる恐怖とはどこから生まれてくるものなのか? その恐怖の源泉を、高橋監督は映画を通して探ろうとする。本作が製作された2017年は、奇しくもロシア革命から100年というメモリアルイヤーだった。多大な血が流れた社会革命から101年、高橋監督は映画館の暗闇の中で、新しい革命を試みている。
(文=長野辰次)

『霊的ボリシェヴィキ』
監督・脚本/高橋洋
出演/韓英恵、巴山祐樹、長宗我部陽子、高木公佑、近藤笑菜、河野知美、本間菜穂、南谷朝子、伊藤洋三郎
配給/『霊的ボリシェヴィキ』宣伝部 2月10日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
C)2017 The Film School of Tokyo
https://spiritualbolshevik.wixsite.com/bolsheviki

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