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広瀬すずは『anone』で開花する──“大先輩”田中裕子の芝居にも呑まれない「影の魅力」

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 広瀬すずが連続ドラマで初主演を務めたのは、2015年の学園ドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系)だった。あれから3年を経て、女優としてみるみる成長しており、人気・実力ともに10代の若手女優の中ではダントツの存在だと言っても過言ではない。

すでに19年上半期のNHK連続テレビ小説『夏空-なつぞら-』のヒロインも決定しており、女優としての彼女をとりまく環境が、今後、より大きなものとなっていくことは間違いないだろう。

おそらく所属事務所が長期的な視点で彼女を女優として成長させたいと考えているのだろう。彼女の出演作を見ていると、女優としての将来を考えた上で、役が選択されていると感心する。

映画では『ちはやふる』(16~18年)や『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17年)のような若者向け青春映画に出演する一方、『海街diary』(15年)や『怒り』(16年)のような、作家性の強い文学的なドラマにも出演している。

中でも、是枝裕和監督の『海街diary』に出演したことは、彼女にとって大きかったように思う。それ以前も女優としての勘の良さや華やかさはあったのだが、『海街diary』以降は、役に没入する力が以前よりも深くなった。その意味で、女優としての大きなターニングポイントだったと言える。こういう作品に定期的に出会えるのは、彼女にとって、とても幸福なことだ。

そして、次の幸運な作品となりそうなのが、現在、日本テレビ系で水曜夜10時から放送中のドラマ『anone』である。

本作は『最高の離婚』(フジテレビ系)や『カルテット』(TBS系)で知られる坂元裕二が脚本を手がけるドラマだ。チーフ演出は、作り込んだ重厚な映像に定評のある水田伸生。

坂元と水田は、同枠で過去に芦田愛菜の出世作となった『Mother』、満島ひかりが貧困に苦しむシングルマザーを演じた『Woman』の2作を手がけている。重厚な社会派ドラマとして高い評価を受けるこのシリーズは、広瀬すずもファンだったそうだが、まさか自分が出演することになるとは思っていなかったらしい。

広瀬すずが演じるのは、辻沢ハリカという少女。

両親のいないハリカは、特殊清掃員のアルバイトをしながら、ネットカフェで暮らしていた。

ハリカには、スマホのゲームアプリで交流している病気の友達がいた。入院中の少年・カノンが手術するには、多額のお金が必要だが、ハリカには何もしてあげることができない。

そんなある日、ネットカフェで暮らす女友達が、海辺で現金の入ったカバンを見つけたという。ハリカたちはお金を探しに海辺へと向かうのだが、そこから物語は大きく転換していく。

舞台は日本だが、映像自体はどこか無国籍感があるためか、リアルでありながらもどこかファンタジックな作品だ。物語も二転三転しており、まだ全貌は見えないのだが、この続きがまったく読めない不穏なムードが、物語に強い緊張感を与えていて目が離せない。

ハリカを演じるにあたって、広瀬は髪をばっさりと切った。ハリカの姿は少女にも少年にも見える中性的なたたずまいだ。まるで、彼女の持つスケボーに描かれている天使のようで、ファンタジックな本作の象徴のような存在である。

その意味でも、今までにも増して難しい役柄である。彼女自身、どう演じていいのか迷ったらしいが、次屋尚プロデューサーから「今までの広瀬すずでいい」と言われたことで開き直り、今の演技になったという。

華やかなキャリアを重ねている彼女だが、実は広瀬すずの魅力は光よりも影の部分、今にも消え去ってしまいそうな弱々しさの中にあるのではないかと思う。

『anone』は、そんな彼女の影の部分がとても際立っていて、無表情でぽつんと立っているだけで見ている側を切なくさせる。

それがよく出ているのが、ハリカの今にも消え去ってしまいそうな自信なさげに語られるか細いナレーションだろう。

弱々しい声で切ないナレーションをさせると一番上手いと思う女優は深津絵里だと思っていたが、本作の広瀬すずの声は、深津に匹敵する切なさがある。

カノンとチャットで会話するゲーム場面で、文字を読み上げるダイアローグに感情移入できるのは、彼女の今にも消え去りそうな声があってのものだ。

『anone』が広瀬すずにとって幸運なのは、阿部サダヲ、小林聡美、瑛太、田中裕子といった実力のある先輩俳優と共演できることだろう。

特に田中裕子との芝居は、彼女にとって大きな経験となるのではないかと思う。

田中の芝居は圧倒的で掴みどころがないため、我の強い俳優ほど、自分のリズムを崩して田中の世界に呑み込んでしまうところがあるのだが、第2話で広瀬が絡んだ際には、田中の芝居に対し善戦していたように見えた。これは、広瀬の演技が、いい意味で主張が弱いからだろう。

広瀬を見ていると、主演女優に必要なのは自分を押し通す我の強さではなく、全体を包み込むような、おだやかな輝きだと実感する。ハリカを演じることで、その資質はより開花するはずだ。

本作で彼女が女優としてどこまで成長するのか? 注目である。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

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