米政府の「5Gネットワークの一部を国営化」という内部文書に対し連邦通信委員会の議長も「それはダメ」

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中国が脅威なので、ネット国営化はどうかな。

アメリカにおける安全保障と外交の司令塔のような役割を果たしている国家安全保障会議(NSC)。大統領、副大統領がメンバーとなっているトップレベルの意志決定機関となっています。そこにおけるスタッフの間で「5G高速無線ネットワークをアメリカは国営化して進めるべき」といった内容の内部メモが交わされている、とAxiosReutersで報道され大きな話題となっています。おそらく、まだまだ初期段階のアイデアをスタッフ間でやりとりしていたものであり、トランプ大統領の承認を得る、といった段階までは達していないと考えられます。

アメリカにおける5G回線の開発はすでに通信会社によって進められており、この提案にはさまざまな分野から反対意見が噴出しています。そんな中、アメリカの放送通信事業の監督を行なう連邦通信委員会(FCC)のAjit Pai議長もすぐに反対意見を表明しました。NSCスタッフの国営化プランを「アメリカ合衆国が5G回線の未来を達成するために本当に必要としている政策に対する、非生産的かつ高コストな障害となる」と表現しており、「そのプラン、絶対ダメ」の強い意思が伝わってきます。

5Gネットワークが、自動運転車やモバイルにおける高速インターネット回線といった未来の技術を実現するために必要不可欠なのは事実です。しかし国営化がたとえ一部の周波数帯であっても、すでに巨額の投資を行なって開発を進めているAT&Tやベライゾンといった民間企業がいるわけです。彼らの自由市場における競争を阻害する形で、アメリカ政府がネットワークを所有・運営する意義とは何なのでしょうか。

匿名でロイターの取材に応えた政府関係者は「中国が通話を盗聴できないようなネットワークを作りたいと思っている」と語っています。そうです、このプランの背後には急速にネットワーク・インフラを発展させている中国が脅威として存在しているのです。

政府がネットワークを開発しコントロールすれば、中国やロシアといった他国によってネットワークがスパイ行為に利用される可能性を減らすことができる、と言う議論なんですね。実現しても政府によって開発された5Gネットワークは民間企業に貸し出されて利用されることになるわけですが、これがどうしてセキュリティーを高めるのかは不透明です。

しかし他にもモチベーションはあるようです。それはスティーブ・バノンなどの保守派が「経済ナショナリズムの観点からの懸念」として考えるものです。外国企業がアメリカ市場に対する投資を増やし、さまざまな業界の大部分をコントロールすることを防がなければいけない、という考えです。中国で発表されているいくつかの調査によると、中国の通信会社は中国内の5Gネットワークに対し4430億ドル(約48兆円)の投資を、米国の5Gネットワークにも数十億ドルの投資を2020年から2030年の間に行なうと予測されています。アメリカの通信会社が中国からの資金によってコントロールされてしまう、という懸念を持っているわけですね。

前述の通り、アメリカでは5G回線の周波数帯の大部分はすでに入札されており、必要なインフラも大手通信会社たちによって建設されている最中です。AT&Tに至っては今年中に、少なくとも十数都市において5Gのサービスをローンチする計画を発表しています。もちろん、アメリカ政府が周波数帯の一部を取得し、完全にアメリカによってコントロールされているエリアを作ることは可能です。

Axiosが確認している暫定的な計画によると、アメリカ政府によって管理されるネットワークは(実現すれば)今後3年間で実現するというスケジュールになっているようです。これはかなり楽観的な展望と言わざるを得ません。

アメリカと中国、アメリカと北朝鮮、アメリカ/NATO・EUとロシアといった国家間の緊張状態は「新しい冷戦」という名称を代わるがわる受け取っています。国家安全保障という観点でのサイバーセキュリティの重要性は今後も高まるでしょう。中国に対する警戒心は全く新しいものではありません。2012年にアメリカ議会は、T-モバイル、スプリント、AT&Tを通して販売されている中国のハードウェア製造会社のファーウェイ、ZTEコーポレーションによるヘッドセットが、アメリカ人を対象としたスパイ活動に利用されている可能性があると警告しています。ファーウェイとZTEコーポレーションはこのような主張には何の根拠もなく、ただ孤立主義的な経済上の懸念からアメリカのマーケットから締め出されようとしていると主張しています。

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Source: Axios, Reuters

Matt Novak - Gizmodo US[原文
(塚本 紺)

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