『最強の裏方』無敵のナスDも引退宣言? タレント化するディレクターの是非

grape

2018/1/28 05:00


圧巻のサバイバル力で視聴者を釘付けにした“ナスD”こと友寄隆英ディレクター (C)oricon ME inc.
 ここ最近、バラエティ番組では裏方であるはずのディレクターなどが出演し、体を張る芸人以上のインパクトを残す場面が散見される。本来は制作側のいちスタッフなわけだが、素人がゆえの素朴さや、プロっぽくない振る舞いが逆に受けているのかもしれない。今やテレビ業界では定番となっている“裏方の表(番組)進出”は、今後もその傾向は加速する可能性が高い。だが、果たしてそれは“アリ”なのだろうか?

■今、最も露出の高い裏方と言えば、破天荒の”ナスD”

人気を博した裏方の代表格と言えば、“ナスD”ことテレビ朝日の友寄隆英ディレクターが筆頭にあげられるだろう。そもそもナスDは、同局の冒険バラエティ番組『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』の「部族アース」という企画で、お笑いコンビ・U字工事のアマゾンロケなどに同行する担当ディレクターだった。「美容にいい」と言われ、刺青にも使用される染料“ウィト”を塗ったはいいが、全身がナスのような墨色に染まってしまい、そのまま色が落ちなくなったことから注目を集めた。

ナスDの“破天荒ぶり”はそれだけにとどまらない。アルコール度数50度のお酒を大量に飲んだり、生の川魚、巨大カタツムリ、イタチの丸焼きなど、普通なら躊躇してしまうものを「うまいうまい」と食し、ときには「すっごい臭い」と笑う。その姿は、現地のガイドにまで「先住民や馬でも食べない」と引かれるほど。芸人以上に型破りな行動を見せるナスDは、規制だらけのテレビの網目をかいくぐり、一矢を報いた感もあり、視聴者に衝撃を与えると同時に瞬く間に人気に火が点いたのである。

■番組ディレクターより残せなかった爪痕、敗北宣言の芸人たち

そうなると窮地に立たされるのが、ナスDに食われた形になった本職の芸人たちだ。本来はコーナーの主役であるはずのU字工事も、過去のインタビューで「僕らができないことを自分でやっちゃう。何かあったらヤバいっていうことは全部自分で受け持ってやっちゃうから、その根性はスゴいなと」、「向こうのほうがスゴイことやっているから、そっちが目立つのは正直仕方ないなって」と、素直に敗北宣言をした。

また、昨年12月29日に放送された『いきなり!黄金伝説。』のスペシャル番組、『よゐこの無人島0円生活2017 元祖無人島芸人・よゐこVS破天荒ディレクター・ナスD』では、構成的には完全にナスDのほうが“格上”扱い。いきなり漂流物のペットボトル内の謎の飲み物(あきらかに腐っている)を飲み干し、視聴者をドン引きさせた後、拠点を建てる、素手で魚を捕まえるなど、持ち前のサバイバル力を発揮し、圧勝した。よゐこ・濱口も、ナスD出演のVTRを見ながら「ケガをするとほかの番組に迷惑をかけるし、危険な行動は避けてしまう」と、自在に動き回るナスDの姿に嫉妬。「俺もコケよ、コケなあかんわ」などと反省する始末だった。

ただ、視聴者に「芸人が体を張るのは当たり前」という先入観がある中、芸人ではない素人のスタッフが過激なことをやれば、必要以上に凄く見えるのも仕方がない。そういう意味では、プロの芸人たちにも気の毒な側面もありそうだ。

■ナスDだけじゃない! バラエティ番組を盛り上げた裏方の活躍

こうした裏方のディレクターやプロデューサーがテレビ番組に出てくるのは、何もナスDが初めてではない。1980年代には、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の「テレフォンショッキング」のコーナーで“ブッチャー”として親しまれた小林豊ディレクター、一世を風靡した『オレたちひょうきん族』(同)の「ひょうきん懺悔室」では、故・横澤彪プロデューサーや2代目プロデューサー・三宅恵介氏(番組クレジットでは「三宅デタガリ恵介」)が神父役で出演したほか、今では定番の“外野スタッフの笑い声”なども同番組が元祖と言える。

また、とんねるずの番組でも“スタッフいじり”をネタにすることが多く、「AD(アシスタント・ディレクター)」などの業界用語を一般に浸透させた。最終的には「野猿」という、大道具や衣装、ディレクターなどの裏方をメンバーにした音楽ユニットまでを結成させ、ついには紅白出場まで果たしたのである。

はっきりと露出はしないものの、『進め!電波少年』(日本テレビ系)の土屋敏男プロデューサーなども、その恐怖の指令(ムチャぶり)を出すプロデューサーとしてキャラを確立させていたし、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(同)の元チーフプロデューサーの“ガースー”こと菅賢治氏や、演出家の“ヘイポー”こと斎藤敏豪氏なども、そのキャラだけで1本“冠企画”が作れるほどで、名物スタッフの代表とも言える存在だろう。

ただ、こうした裏方の活躍はどこか“内輪ウケ”のようなところもあり、単なる出たがりのスタッフだと言えなくもなかった。しかし最近では、番組の制作コスト削減のためにスタッフが出演せざるを得ないと思わせる節もある。『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)や『ゲームセンターCX』(フジテレビ系)、『マツコ会議』などの主要メンバーもスタッフだが、これらの番組の場合は、タレントとスタッフとの親密さからくる“身内ネタ”が、逆にお茶の間に親近感を与える効果があるようだ。

一方、『シルシルミシル』(テレビ朝日系)でグルメリポーターを務めていた“AD堀くん”など、その朴訥すぎるキャラが受けてMCのくりぃむしちゅーよりも人気となり、ドラマやアニメに出演するなど番組の枠を超えて活躍するディレクターもいる。その最強版がナスDとも言え、本職のタレントをしのぐ彼のキャラクターは、番組1本作れるほどの破壊力を持つに至ったのである。

■実は本職に戻りたい? ナスDの意味深発言の真相とは

こうした現状についてはナスD自身も危機感を持っているようで、1月13日に放送された『陸海空 地球征服するなんて 2時間スペシャル』では、「たぶん、最後なんですよ」という意味深な発言をしている。 表面上はナスDとして、“ディレクター”という視聴者にもなじみのある名称で呼ばれてはいるものの、本来の肩書きは“ゼネラルプロデューサー”。ざっくり言えば、テレビ朝日の“超絶偉い人”なのだ。過去には、『SMAP☆がんばりますっ!!』や『「ぷっ」すま』、『もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!』などの番組を手がけており、テレ朝バラエティ番組の“最大の功労者”とも言える存在なのである。

そんなナスDにしてみれば、ヒットする番組を次々とプロデュースすることこそが本職。今のままでは芸人も育たないし、いつまでも自分がメインになって“体当たり”番組に出演しているわけにもいかないと考えるのは当然。そんな葛藤があっての「たぶん、最後」発言だったのかもしれない。

果たして、裏方が番組に出るのは是か非か? テレビマンであれば誰でも、少しでも数字(視聴率)が取れるのであれば、裏方であろうが何であろうが、自分が出演することで実現できるのなら出演するであろう。それだけ彼らが真剣である証拠だろうし、責任もある。しかし本来はやはり、何もディレクターが体を張らなくても、タレント陣の頑張りで人気を博すことこそがバラエティー番組の本懐なはず。

規制のほうはと言えば、ますます厳しくなる一方で、何かと炎上しがちなテレビ業界ではあるが、今後は彼ら“タレント化したディレクター”たちが安心して“引退”できるような、スターたちの出現に期待したいところである。

『記事提供:ORICON NEWS』

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