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歌詞が『物語』から『日記』になる時代 2018年にロマンチックを

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

『ロマンチック』が足りない時代に

振り返ればいつもそこに歌がありました。歌はタイムマシン、またはドラえもんの『どこでもドア』のように、聴くとその時代へ連れて行ってくれます。10代、20代のころに大好きだった歌は、いま聴いても古さを感じさせません。それはおそらく楽曲のクオリティの高さなのだと思います。時間も空間も超えてしまう歌という宇宙。楽しかったこと、悲しみやさびしさやせつなかったことと共にあった歌は、いつも人生と共にあるのです。

ここ最近、山上路夫、村井邦彦の作品を集めた「『翼をください』を作った男たち」という3枚組のCDを聴いています。おふたりは、1960年代から多くの名作を生みだし、音楽業界の色を塗り替えた作詞家、作曲家。おふたりの名前を知らなくても、国民的名曲といってもいい『翼をください』をご存知かと思います。

音楽の教科書にも載り、合唱でも歌われるこの歌は、1971年にリリースされた赤い鳥のシングルのB面曲でした。1971年というと、いまから47年前。半世紀近く前の歌です。若い人たちは、この歌を聴いてどんな感じがするのでしょうか。ポップスという領域を超えて、ほとんど唱歌のような感じかもしれません。また多くのアーティストがカバーしているので、馴染みがあるかもしれません。それも名曲の証です。

1960年代後半から70年代のおふたりの作品を聴いていて、あることに気付きました。とても『ロマンチック』なのです。ロマンチックという言葉は陳腐に響くかもしれませんが、そのサウンド、アレンジ、そして男と女の愛をめぐる物語、歌詞…フランス映画を観ているような感じがするのです。

ミシェル・ルグラン、フランシス・レイ、レーモン・ルフェーブルといった、フランスの映画音楽を彷彿とさせるようなエレガントで、甘美で、そしてどこか人生の悲しみのエッセンスを感じさせるような歌の世界。イメージの中のスクリーンには、差し向かいで座っている男と女の物語が言葉と共に浮かび上がります。

トワ・エ・モアの『或る日突然』など、わずか16行の歌詞の中に1本の映画になりそうな物語があるのです。「ある日突然 二人だまるの」…その瞬間までの2人と、その瞬間の先の2人が、このたった14文字と音楽で語られている。なんてエレガントな凄まじさでしょうか。

ああ、そうか。最近の歌には、『ロマンチック』が足りないのだ。ストリングスの音色が胸に広がっていくのを感じながら、そう気付きました。このロマンチックな空気感が感情を震わせて、イマジネーションを広げ、記憶の隅々までしみ入っていく。感性がふくらんでいくのです。

1984年に作詞家デビューをしました。アイドル全盛時代、そしてニューミュージックにも素敵な楽曲がたくさんありました。90年代に入ったころから、ディレクターから「リアルな歌詞」「ストレートな歌詞」というリクエストが多くなりました。

バブルが陰りを見せ始め、終わりを告げた時期。歌詞が『日記』になり、『物語』が少なくなりました。ロマンチックな世界は、人々にとって絵空事でしかなくなってしまったのかもしれません。

…しかし、そう嘆いてばかりいられない。感性を育むような2018年の『ロマンチック』を表現してみようと、素晴らしい先輩の作品を聴きながら密かに心に決めました。ずっと先に振り返った時、2018年の歌があるように。

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー


[文・構成/吉元由美]

吉元由美


作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」


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