「ホテルを宣伝するから無料で泊めて」を私もやっていた理由 / 英YouTuberの炎上事件は日本でいつ起きてもおかしくない



似たようなことを自分もやっていた──。正直に告白すると、私はそう思った。イギリス人YouTuber(ユーチューバー)が、世界的に炎上しているニュースを知ったときのことだ。

この時点ですでに、「お前何してんねん!」とお怒りの読者もいるかもしれない。そんな人にとっては火に油を注ぐようで恐縮だが、もう1つ正直に告白すると「イギリスのYouTuber がやったことは、日本でもよく起きているのでは?」とも感じるのだ。たまたま炎上しなかったから、目立たないというだけで……。

・イギリス人YouTuber 炎上事件
まず最初に、そのYouTuber 炎上事件について簡単に説明しておこう。全ては、イギリス人の女性YouTuber であるエル・ダービーさんがアイルランドのあるホテルに「無料で宿泊させて」とメールで依頼したことから始まる。

なぜ無料なの? と思う人も多いだろうが、ダービーさん側からすれば「私は有名人。ホテルの宣伝に協力する代わりにタダでどう?」という交換条件的な考えがあったようだ。いわゆるバーターというヤツ。ところが……

ホテルのオーナーはこの依頼にブチ切れ。送り主の名前を伏せつつもメールのキャプチャ画像をFacebookにさらし、皮肉たっぷりに反発を示した。

するとダービーさんがYouTube に動画を公開。「メールを送ったのは私」と名乗り出ると同時に「(ホテルの宿泊は)無料どころかお金をもらうのが普通」と自身の考えを主張……。それに対してホテル側は「ブロガーの出禁」を発表してさらに反発するという展開で、接近戦での殴り合いのような様相を呈している。

なおこの炎上騒ぎ、イギリス国内だけにとどまらず日本でも報じられ、ネット上ではダービーさんを批判する人もいればホテルを批判する人もいるといった状況だ。

・10年ほど前の個人的体験
ここで話を戻して、私が体験した「似たようなこと」を紹介したい。あれは約10年前のこと。当時の私は、某ガイドブック等を扱う編集プロダクションに勤めていた。そこは、入社した者が漏れなく3年以内に退社するバリバリのブラック企業。控えめに言っても、社長は真正のクズであった。

本サイトの記事で以前に紹介したので覚えている人がいるかもしれないが、あまりにも社長がクズなため、社員がクーデターを起こして会社を潰しかけたほど。

・クズ社長のクズな指示
さて、その会社では一応ガイドブックを扱っていたこともあり、時には社員が地方へ取材に行くこともあった。何を取材するのかというと、飲食店やホテル、旅館……などなど。そしてその際、社員は社長から “経費削減” という理由で、以下のような指示を受けていた。

「取材の予定を組むときは、ホテルか旅館の撮影を一日の最後に回せ。そして『掲載するので無料で泊めさせて下さい』と交渉しろ」

──つまり、「タダで泊めて下さい」とホテルや旅館にお願いすることは社長の指示であり、私たち社員の義務だったのだ。

・交渉時は当然 “したて”
ただし、私も含めてその会社の社員は、先述の英YouTuber と同じようなスタンスで交渉していたわけではないことは言っておきたい。当然ながら、話を持ちかけるときは徹底的に頭を下げる。「ホテルの宣伝になるでしょ?」的な目線で交渉する人なんて、少なくとも私の回りには1人もいなかった。

「素泊まりで十分です! 何なら、客室じゃなくてもロビーの隅とかでも十分です! 掲載させていただきますので!! 微力ではありますが、御ホテルの宣伝にもなるよう全力を尽くします! どうか! どうかぁぁーー!!」という感じだ。

・交渉が失敗した場合
ちなみに、「タダで泊めて下さい」という交渉がうまく行かなかった場合、そのときの宿泊費用(カメラマンなどの分も含む)は、社員が負担することも珍しくなかった。社長が領収書を突っ返してくるからだ。社長からすれば、「交渉に失敗したお前の責任だろ」というわけである

それで社員と揉めたときの社長の開き直りっぷりたるや……。思い出しただけで腹が立ってきたが、話が逸れるので今はやめておきたい。

とにかく私が言いたいのは、「掲載させていただくので無料で泊めてもらえませんか」とホテルや旅館に持ちかけることは、私が当時在籍した会社では当たり前に行われていたということ。それが良いとか悪いとかは置いておいて、仕事の一部だったのだ。

・その編プロだけの問題?
と、ここまで読んでくれた人の中には「それって、社長がクズだから起こったことでは? その会社だけの問題じゃないの?」と思うかもしれない。確かに、「社長がクズ」という点に関しては200%同意するが、「その会社だけで起きたレアなこと」としてしまうのは、少し違うようにも感じる。

なぜなら、カッッツカッッツの資金状況でギリギリのやり繰りを強いられることは、少なからぬ下請け制作会社が直面している問題だからだ。人件費を極限まで削りまくるの当たり前。マンパワーが足りなくて当たり前。社員のサービス残業当たり前。徹夜当たり前。時給換算したら学生時代のバイトより安くて当たり前……。そこまでやっても会社にはお金がない!

「だからと言って、『タダで泊めて下さい』とホテルに交渉していい理由にはならないだろ!」と言われればその通りだが、交渉せざるをえないほど財政的にキツイ会社が業界の中、とりわけ下請け会社に多いというのも1つの事実だと思う。

じゃあ何でそんなにお金がないかと言うと……何でだろうか? 自分でもよく分からない……。ただ1つ言えるのは「毎日サービス残業&取材先に宿泊代の無料交渉」等を義務化してまで会社の経費を削減するのは、健全な職場環境ではないということ。そして、「健全じゃないのが当たり前」だなんて言ってたら絶対にダメだということだ。

参照元:FacebookYouTubeMirror News(英語)
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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