“おじさん”が世間から疎まれるワケ――鈴木涼美が語る、二極化する男の実態と対処法


 くどくど小言を言ってきたり、つまらないギャグで場を凍らせたり……面倒くさい“おじさん”、あなたの周りにもいませんか? 『おじさんメモリアル』(扶桑社)の著者、鈴木涼美さんは、同書でさまざまな“おじさん”との20年間の思い出を綴っています。東京大学大学院卒、元キャバクラ嬢、元AV女優、元日経新聞記者という多彩な経歴を持つ鈴木さんだからこそ垣間見られた、さまざまな業界に生息するおじさんたちの、あぜんとする実態の数々。今回は鈴木さんに、その中から特に印象的だったおじさんの生態について話を聞いてきました。

●おじさんNo.1 “居酒屋スピーチおじさん”

「よし、今日は飲みにいくか!」の一声に情け心でついていったが最後、誰でも知っているようなことをドヤ顔で延々と語るのが、“居酒屋スピーチおじさん”だという。

「圧倒的にウザいのが、一方的に話し続けるおじさんですね。基本的におじさんって、相手が言われたいことじゃなくて、自分が言いたいことを話すんですよ。『安倍はバカだからさ……』って、いや、お前は誰なんだよと。おじさんの7割が言っているような政治家の悪口を、飲みの席でまで聞きたくないですよね。もう演説なんですよ。しかも、それがメディアで散々見聞きしたような意見だから、余計に退屈」(鈴木さん、以下同)

それはコミュニケーションと呼ぶには、あまりに一方的。もはや会話というより、演説であり、興が乗ったおじさんの独壇場。居酒屋スピーチおじさんと同席し、死んだ魚のような目をしながら「え~!」「すご~い!」「知らなかった~!」と感嘆符を連発するだけのマシンと化したことのある女性は少なくないだろう。

●おじさんNo.2 “純愛コンプレックスおじさん”

年齢を重ね、ある程度、財力を持った男性が陥りがちなのが、この“純愛コンプレックスおじさん”。彼らはお金以外の部分、外見や内面的な魅力でモテることを望み、自分に寄ってくる女性が金目当てではないかと常に不信感を抱いているとか。自分語りが大好きで、「お金じゃなく中身を見て!」「下心なしに僕のこと好きになってよ!」と、まるで10代女子のようなピュアでロマンチックな一面を、恥ずかしげもなくぶつけてきるんだそう。

「夜の世界に来る客で一番ウザいのは、『僕をお金として見ないで』って言う人。『結局、金目当てなの?』と、しつこく愛情を確かめようとするんです。そういう“内面見て見ておじさん”はうっとうしいですね。財力も魅力の1つ。それでいいのに。このタイプは、若い頃モテない暗い青春時代を送ったことがコンプレックスとしてあって、基本的に女性に対して卑屈なんですよ。ちゃんと青春してこなかったからこそ、いくつになっても若い女の子との純愛を夢見てる男性って、意外と多いんですよね」

海外の偉人や松下幸之助の名言を「ここぞ!」とばかりに盛り込んでくる、“名言引用おじさん”。今日も名言集を片手に「おっ、コレ使えそうだな」と考えていたりするんだとか。しかも引用するだけでは飽き足らず、自ら“名言風”な言葉を生み出すおじさんも存在するんだそう。

「やる気のある中小企業経営者とかに多いですね。社員への一斉送信メールの最後に、なんかそれっぽい格言くっつけたりして。私の祖父もこのタイプで、全然詳しくないのに、結婚式のスピーチで『中国の有名な詩で、こんなものがあります』とか言いだす。名言引用おじさんは、自分に自信はないけど威張りたい人。でもそれ以上にイタいのは、名言製造おじさんですね。キャバ時代の客で『多くの動物は宇宙の中で回らされている。そのループの中にいる』とか、なんか名言っぽいフレーズばかりメールしてくる人がいました」

空気の読めないそんな言動に、白けた視線が向けられていることには、1ミリも気づいていないのだろうか……。

●おじさんNo.4 “男はバカだよ”おじさん

「男ってバカだよな」「女は強い」といった言葉が大好きなおじさん、周りにいませんか? これって一見、女性の味方のようにも見えますが、とんでもない勘違いのようです。

「『男ってほんとバカで、単純で、どうしようもない生き物なんだよ』とか、『女の人は偉いよ』『母は偉大だよ』と男を嘆いてみせながら、実際そんな愚かしさを『愛してくれー、受け入れてくれー』と思っているタイプ。『愚かな男だいすき! さいこー!』って心で叫んでいる。こういう男は大抵マザコンですね」

まるで占い師かのように「君って意外と○○でしょ?」と、内面まで見抜ける鋭さをアピールしてくるのが、このタイプの特徴。

「“俺だけは、君の本当の魅力をわかってるからね”って感じがイヤらしい。『強がってるけど、繊細だよね』『社交的に見えるけど、実は1人が好きでしょ』とか、お前は占い師か? と(笑)。誰にでも当てはまるような逆張りで、ほかの男とは違うからとドヤ顔。そんな薄っぺらい手法で心開くような女はいませんよね」

なぜ、おじさんという人物は、こうも世間から疎まれるのか? その理由を、「男性は一般的に、相手が何を求めているのか察するのがヘタだから」と鈴木さんは話します。

「女性はずっと男性に“選ばれる側”だったので、『この人には知性的な面を』『このタイプにはセクシーな魅力を見せるのが効果的!』と、相手の好みや求めているものを察することに長けていますが、男性はいくつになっても“選ぶ側”から抜けきれてない。そのため、察することが苦手で、好感を持ってもらうための努力が見当違いの方向に行ってしまう(笑)。それが、女性からはウザいと捉えられがちなのではないでしょうか。また、おじさんは、『若造とは違う』っていうプライドと、『結局、若さにはかなわない』っていう敗北感の狭間で生きているので、より自信過剰になるか、自信をなくして卑屈になるかの、二極化する傾向にあると思います」

『おじさんメモリアル』の中で、そうしたおじさんの行動の数々を冷静に観察し、分析した鈴木さん。同書を発表したことに対する周囲のおじさんの反応は、どのようなものだったのでしょうか?

「『こんなやばい男って本当にいるんだね!』って、あくまで他人事ですよ。おじさんってイタい行動を指摘しても、なぜか絶対、自分のことだとは思わないんですよね。自分を顧みないというか。そこもまた、おじさんらしいですけどね」

そんなおじさんへの対処法は、“笑いのネタ”にして昇華することがポイントなんだという。

「基本の対処法は、ちょっと笑う。こっちが本気で怒っても、おじさんが変わることは絶対ないし、いがみ合うだけで平行線なので。うまくやっていくためには笑いながらも許すみたいな姿勢が必要かも。その代わり、Twitterのネタにするとか、女子会でネタにして笑うとか、そういうガス抜きが大事ですね」

私たちを苛立たせる、おじさんの行動の数々。日々更新されていくネタ帳だと思えば、少しは優しい気持ちになれる……とはいまいち思えないのだが……。
(ジョージ山田/清談社)

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