”妄想” ではなかったと思う。統合失調症で数か月外に出られなかった日々

ananweb

2018/1/22 15:00



統合失調症は、幻覚や幻聴、被害妄想といった症状が出るため、数多くある精神疾患のなかでも偏見が強いものでもあります。「関わりたくない」と思われてしまうのでしょうか。以前私は統合失調症と診断されたことがありますが、しばらく落ち着いていました。しかし、去年になって再発。リアルな体験記としてお伝えできればと思います。

文・七海

■ 実は、記憶が曖昧なんです。しんどかったという感情だけが残っている

去年、数か月間統合失調症を再発していました。快方に向かってからしばらく経った今、そういった症状は出なくなってきました。今、あの頃のことを思い出そうとすると、しんどかったという感情と涙が先に出てきます。しかし、実際には記憶が曖昧であるところがあります。家族との会話や知人に泣きながら電話をかけたことなど、言われても思い出せないものが多くあります。今ではたくさんの人に迷惑をかけたと強く思っているけれど、その当時の心持ちがあまり定かでなく、自分自身でも怖くなる部分があります。

知人や家族に言われたことを前提に、覚えている記憶を辿っていこうと思います。きっと、統合失調症で苦しんでいる人はたくさんいます。「関わりたくない」という偏見が、当事者に寄り添う気持ちへと変わっていけば、と一縷の希望を持って、今、執筆しています。

■ 「暗闇が怖い」、「声が聞こえる」。”被害妄想”という言葉では片付けられない恐怖感

まず感覚的におかしいな、と思ったのは、暗闇への恐怖感でした。ベッドに入って電気を消すと、とても怖かったのを覚えています。電気の色や明るさでも恐怖感があったらしく、長い時間調節していたと聞きました。寝るときも、起きているときも、真っ暗にはできなくなりました。やがて、カーテンの隙間から見える暗闇が怖くなり、ドアについている覗き穴までもが怖くなっていきました。暗闇が見えうるところは全て紙や段ボールで覆い、部屋に引きこもりました。それからは、暗闇に限らず「外が怖い」と思うように。常に誰かから見られているような気がして、一切外出ができなくなりました。

それからほとんど寝たきりの状態が続きました。ベッドから起き上がることはほとんどなく、なにかを食べることもほとんどなくなりました。そのうち、誰かの声が聞こえるようになりました。直接声が聞こえるのではなく、脳に響いてくる感じです。夜中になにかを喋ったり突然泣きわめいたりということがよくあったそうですが、その辺りはあまり覚えていません。

しかし、はっきりと覚えている言葉があります。「優しさを僕にくれたら、強くしてあげる」。誰かはそう言いました。当時私は寝たきりの状態を情けなく思っていたので、うなずいたのを覚えています。私は比較的穏やかだと言われることが多いのですが、その声を聞いた日からとても凶暴になったと聞きます。些細な物音がしただけでも、その物音を立てた人に攻撃したくなったような、そんな感情は覚えています。

これらは統合失調症の主たる症状で、”被害妄想” などにあたります。しかし、記憶にある恐怖感は、”被害妄想” という言葉では片付けられない怖さでした。

■ 外に出られるようになってから、ぶつかった壁

運良く周囲の理解と協力があって、数か月後には起き上がれるように、そして外出できるようになりました。ただし、ひとりで外出するまでには時間がかかりました。

外出して、以前のような生活を送りたいと強く願いました。しかし、次に困ったのは体力と筋力の低下でした。寝たきりの生活をしていた私は、あまり歩くことができなくなってしまっていたのです。少し歩くたびに疲労感があり、過呼吸になったりパニック発作を起こしてしまったりすることもありました。そういった発作が怖く、また外出を避けようとした時期もあります。しかし、補助してもらいながら外出するようにして、近所のスーパーまでは行けるように。ただ、以前は15分程度で行けていた場所ですが、そのときは1時間かけて行っていました。

少しずつ体力をつけるようにし、外出する練習もしました。今ではひとりでも外出できるように。ただ、以前のように速く歩いたり遠出したりというのはまだ難しいのが現状です。

■ しんどい時期を乗り越えられたのも、周囲の理解があったからこそ

電気を消せないところから始まり、暗闇を隠す行動、”誰か” と話す行動、衝動的な凶暴性。そして、ひとりで外出できるまでの道のり。正直、”奇異な行動” に見られてしまうことはわかります。だけど当時、本当にしんどかったのです。

私が今の生活を取り戻せているのは、周囲の理解と協力があったからこそです。きっと、私ひとりでは今でもしんどいままだったのではないかと思います。迷惑をかけて申し訳ないという気持ちと、心からの感謝があります。

”奇異な行動” に見えてしまうからこそ、「関わりたくない」と思われてしまうのかな、と感じます。しかし、本人は本当に苦しんでいるのだというのを、私の実体験を通して知ってもらえれば、と思います。幸いにも、私は周囲に恵まれていました。でも、そうでない人だってたくさんいるのではないかと危惧します。「関わりたくない」と一蹴するのではなく、寄り添う気持ちを少しでも持ってもらえれば、と願います。しんどい思いをしている人が、ひとりでも多く救われますように。

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