芸人の「常識」を破壊しろ「MASKMEN」謎のピン芸人の正体にマジで愕然

エキレビ!

2018/1/15 09:45

てっきり野性爆弾くっきーのドキュメンタリーだと思っていたのだ。

テレビ東京系で1月12日より放送がスタートした『MASKMEN』。「野性爆弾くっきーが初めて芸人をプロデュース」「その名は“人印”と書いて“ピットイン”」「人印の成長を記録したドキュメンタリー」という触れ込みだった。

新人芸人をプロデュースするくっきーに密着するのだろうな。ぼんやりそう考えていた。番組開始から約10分。人印がそのマスクを脱ぐまでは。

※本稿はネタバレを含みます。人印の正体をここで知りたくない方はテレ東の見逃し配信を先にご覧ください。


謎のピン芸人・人印(ピットイン)
見上げるような高身長。全身黒タイツに緑の手袋。ロケットのような形のマスク。首には白いフリル。

2017年10月。芸能事務所・グレープカンパニーのタレント一覧に突如追加されたピン芸人“人印”。その正体は同じ事務所に所属するサンドウィッチマンや永野、カミナリにも知らされていなかった。楽屋ではずっとマスクをかぶり、一言も言葉を発さない。舞台を共にする芸人たちも「誰なんだ」とざわついていた。

サンドウィッチマン 富澤「マネージャーとかに『なんか変なマスクしてる奴いるんだけど』って聞いたんですけど、多くを語らないんで。なんなんだこいつって(笑)」
おかずクラブ ゆいP「リハの時も絶対に(マスクを)入念につけてて……」
ジャングルポケット おたけ「なんだコレはって。なかなか顔出さない芸人いないですからね」

何より不可解だったのは、人印のネタ(Youtubeで視聴可)に野性爆弾くっきーが関わっていること。ネタ中、人印は「シュコー」しか話さず、出囃子やナレーションは全てくっきーの声。そもそもグレープカンパニー所属の芸人に、よしもと所属のくっきーが携わることが異例だ。

くっきーは「人印からの依頼」と経緯を語り、衣装からネタまでトータルプロデュースしたと話す。

くっきー「私のドロッとした世界観というか、常軌を逸してる感じが好みらしくて。その世界観は人印には埋め込んでますけども」「(人印が生まれた時に聞いていた曲は)爆風スランプの『月光』ですわ」

多くの芸人は人印の正体を野性爆弾の相方・ロッシー(身長180cm)と予想していた。高身長であり、くっきーとも関係が深いからだ。しかしコロコロチキチキペッパーズ・ナダルは「くっきーさん、(人印に)敬語使っているのを見たんですよね」と首をかしげる。まさか先輩芸人なのか。オール巨人(180cm)か、大木凡人(180cm)か、ゆうたろう(184cm)か。

しかし、そのどれでもない。番組から人印の正体を告げられたロッシーは「え!」と驚いたのち、こう語った。

ロッシー「くっきーがもらった卵は、しかも○○○という卵。どう料理するねやろ?僕なら、目玉焼きを作りますけど、ゆで卵にするのか、溶き卵にするのか厚焼きにするのか。卵もらった人がプロデュースするということですから、だから……ふわっとオムライスにして頂けたら嬉しいなと思いますね僕はね」

言葉の意味がよくわからないまま、映像は人印の終演後に切り替わる。くっきーの「シュコーがちっちゃいですね」「見た目キモいじゃないですか。それを可愛いと思わすのが大事で」というアドバイスに、「はい」とうなずく人印。

くっきーが去り、人印はマスクに手をかける。マスクを脱ぎ、大きく息を吸い、「20点ぐらいですね……」と自己採点したその正体は……斎藤工だった。

芸人から自由を奪っているのは誰だ
ここまで番組開始から約10分。くっきーを初め、芸人たちにフォーカスしていた番組は、ここから斎藤工の密着ドキュメンタリーに変貌する。

時間軸は一ヶ月さかのぼり、2017年9月16日。仕事を終え、阿佐ヶ谷で仲間たちと飲むという斎藤工。ホルモン焼きの店に集まったメンバーは、ニッチェの二人とミラクルひかる、そしてニッチェが所属するマセキ芸能社のピン芸人・曇天三男坊。それぞれ斎藤工とは過去に仕事をきっかけに、親交を深めていたという。

密着のカメラに斎藤工と芸人たちの関係を説明したあと、斎藤工は決意表明を切り出す。きっかけは、映画監督の仕事に対す取材で、口からクリエイターぶった発言が出たこと。「お前ちょっと待てよ」と自分に問いただした。かっこつけじゃないのか。

斎藤工「僕はその議題に対してある決断をしまして……本気で、芸人になろうと思ってます」

斎藤工という看板を捨てるため、芸人活動は覆面でやるという。「えー」「なんの得にもならない」と理解が追いつかない一同。「芸人としての筋肉がほしい」と熱っぽく語る齊藤に、ニッチェ近藤が「俳優として笑いを取ってた部分を勘違いしていたかもしれない」と釘を刺す。

ネタも覆面もくっきーに作ってもらう、との発言には賛否両輪。特に浮かない顔をしていたのは曇天三男坊だ。場を察したニッチェ江上に「若手芸人を代表して、一言マジで言いな」と水を向けられる。

曇天三男坊「いやもうホントにね……邪魔ですよ!邪魔!だってこっちは、こっちは夢賭けてやってんすよ。夢賭けてやってるのを、そんな人間の成長のためにって感じでやられても。冗談じゃないですよ」

他人が書いたネタで舞台に立つのは、芸人ではなく俳優ではないのか。芸人で成功しなくても、俳優という逃げ道があるのは卑怯ではないのか。

曇天三男坊は芸歴11年目。そのモヤモヤを一言に濃縮するなら「遊びじゃないんだ」だろう。売れたくて、でも売れなくて、もがいている日々。そこに「成長したいから」という理由で売れている俳優が芸人をやろうとしている。しかも、テレビでサンシャイン池崎やにゃんこスター・スーパー三助に扮して拍手を受けていた俳優が。こっちは夢を賭けてやってるんだ。遊びじゃないんだ。

斎藤工は曇天三男坊の目を正面からまっすぐに見た。

斎藤工「でも、芸の道ってそういうことでいいんじゃないですか。それに負けるようじゃ、それまでってことじゃないですか。自由じゃないんですか、もっと。芸人になりたいって時に、審査ありました?」

「自由」という言葉にハッとする。常識や固定観念を破壊する存在が、芸人ではなかったか。「芸人は若いうちから苦労して成り上がるもの」というイメージに囚われるのもまた、固定観念ではないのか。「こんなものは芸ではない」と枠で囲うのは、本当に正しい態度なのか。

くっきーの世界観は、これまでの芸人の枠から大きく逸脱したものだ。唯一無二の存在に、斎藤工が自由を見た。二人が組むことは、芸人の「常識」を大きく破壊する試みかもしれない。ここまでの放送で、グレープカンパニー、よしもと、マセキ芸能社と、芸人の所属事務所が入り乱れていることも変化を示唆している。

ただ……この番組枠は過去に『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』を放送していた枠である。ドキュメンタリーの形を取りながらも、現実か虚構か判断できない展開を見せてきた。ここで気になるのが番組タイトルの『MASKMEN』。単数形のMASKMANではなく、複数形になっている。

仮面をかぶっている人物は、斎藤工以外にもいるようだ。

※『MASKMEN』(テレビ東京系) 1月19日の第2話は「誕生」。

(井上マサキ)

あなたにおすすめ