『anone』今期ベスト話題作の予感…懸念は『カルテット』二番煎じ感、脚本も俳優も秀逸


 広瀬すずが主演を務める今クールの連続テレビドラマ『anone』(日本テレビ系)の第1話が10日、放送された。

身寄りがなく清掃員として働く辻沢ハリカ(広瀬)は、同世代の美空と有紗と共にインターネットカフェで寝泊まりする生活を送っていた。ある日、有紗は男性に連れられて行った柘(つげ)という街の海岸で大量の一万円札が入った袋を発見したと言い、3人はそれを盗み出すため柘に向かうと、運良くその袋を発見。そのお金を独り占めしようと企んだ美空は、スタンガンで有紗を攻撃する。美空は袋を抱えて駅に着き電車に乗り込むが、発車ギリギリのところで初老の林田亜乃音(田中裕子)に袋を奪い取られてしまう。そのお金は、亜乃音が偶然に自宅兼元印刷工場で見つけたもので、ある事情で亜乃音が海岸に隠していたものだったのだ。

一方、医師から余命半年だと告げられたカレー屋の店主・持本舵(阿部サダヲ)が店を畳もうとしていると、中年を過ぎたくたびれた風貌の青羽るい子(小林聡美)がフラッと店内に入ってきて、追い払おうとする舵を無視して焼きうどんを注文する。これから死のうとしていた2人は意気投合し、“死に場所”を探す旅に出て柘にたどり着き、まさに金の入った袋を奪還した直後の亜乃音、そしてハリカと鉢合わせ、再び袋の争奪戦が始まり、ハリカが手中に納める。

その足でハリカは、8~12歳の頃を祖母と2人で過ごしたツリーハウスにたどり着くが、“夢のような時間”だと思い込んでいたそこでの生活が実は“記憶違い”であることに気が付き、そこは両親に捨てられて入れさせられた全寮制の更生施設で、“ハズレ”という名前を付けられ虐待同然の扱いを受けていた“暗い過去”を思い出すのだった。そこにハリカを追跡してきた亜乃音が現れ、呆然と立ち尽くすハリカから袋を奪い返すと、亜乃音はその場から去って行った。

絶望的になったハリカは柘からの帰り道、日頃スマホでメッセージをやり取りし心の支えになっている男性、カノンが入院する病院を偶然にも見つけ、ベッドに横たわったカノンの姿がわずかに見える窓の外から、カノンにメッセージを送る。すると、なんとカノンは少年時代にハリカと一緒に柘の更生施設で生活をしていた紙野彦星であると明かされ、ハリカはカノンに会いたいと告げるが、重いがんに侵され死が近いカノンに拒絶される。

その頃、柘では舵とるい子が、亜乃音が海岸で袋に入っていたお金をすべて燃やす場面に遭遇し驚く――、というところまでが第1話で放送された。

●秀逸な脚本と演出

同ドラマの脚本は、ちょうど1年前の2017年1月期の連ドラで話題を呼んだ『カルテット』(TBS系)を手掛けた坂元裕二氏で、過去にも『Mother』(日本テレビ系)、『最高の離婚』(フジテレビ系)など数多くのヒット作を生み、根強いファンを持つベテラン脚本家だ。

第2話の予告ではハリカは亜乃音の家に住むようになり、舵とるい子とも接点を持ちながらドラマが展開されていくことがうかがえるが、“心に陰を抱えた4人が偶然にも知り合い、心を通じ合わせながら共に人生を歩み始める”という展開は、『カルテット』を踏襲しているといえる。

さらに『カルテット』との共通点としては、軽妙だが意味深で心に響くセリフの掛け合いという特徴も挙げられるだろう。

たとえば、ファミリーレストランで“最後の晩餐”を終えたあと、舵はるい子に自殺を思いとどまるよう説得する場面で、こう語りかける。

「それって、死にたい、死にたい、って言っていないと、生きられないからですよね。生きたいから、言うんですよね」

また、柘の更生施設でつらい記憶を蘇らせ立ち尽くすハリカに向かって、亜乃音はこうやさしく、ささやく。

「誰だってね、過去に置いてきた自分っています。今さらもう、過去の自分は助けてあげられないんだから、せめて今を……」

このほかにも、カノンはハリカの正体を知り、ハリカに会いたいとメッセージを送ると、ハリカはこう返信する。

「君に会ったら、死ぬのが怖くなってしまいます。君に会ってしまったら、一人きりが当たり前じゃなくなってしまいます」「ハリカちゃん、できれば今までどおり『あのね』って言って、外の話を聞かせてくれたら、僕はもう十分です」

“唐揚げとレモン”論争のような『カルテット』で散りばめられていた“言葉遊び”的要素は薄く、直接的な内容ではあるが、今後多用されるであろう、こうした心に訴えかけるセリフは、ドラマの見所になっていくのは間違いないだろう。

●若干の懸念

第1話を見た印象としては、ハリカ、亜乃音、舵、るい子という4人の主要な登場人物それぞれの物語がパラレルで展開され、後半で“袋の奪い合い”というかたちで“初対面”を果たして第2話につながっていく一連の流れは秀逸で、優れた脚本と演出に支えられた良作だと感じた。

また、若手からベテランまで出演する俳優陣の演技もみな素晴らしく、それぞれの個性に合った配役がなされているためか、見ていて違和感がなく自然な演技なので、見ている側が物語に没頭できるのも嬉しい。坂元氏が具体的に一人ひとりの俳優陣のキャクターを頭に入れつつ、丁寧に脚本を書いていったことがうかがえる。

そういう意味では、前日に第1話が放送された亀梨和也(KAT-TUN)主演の『FINAL CUT』(フジテレビ系)とは大違いで、ドラマの出来としては格の違いが際立っている。

ただ、やや『カルテット』の二番煎じ感は否めず、第1話では重いシーンや特にハリカのツリーハウス時代の回想シーンなどファンタジー色の強い場面も多く、そうしたドラマを受け付けない視聴者が離れてしまったのではないかと懸念される。また、大衆受けを狙った『ドクターX』(テレビ朝日系)のようなドラマとは対極的な“視聴者を選ぶ作品”であり、“面白味”という点でも少し弱いという印象を持った。とはいえ、あくまで私個人の感想だが、『カルテット』も第1話では正直それほど心惹かれなかったが、回を重ねるごとにハマっていったという前例があるので、全体を通して期待できる作品だと思いたい。

いずれにせよ、早くも今クールの連ドラのなかでは“話題作ベストワン”になる可能性を秘めた作品といえ、次回以降にも期待したい。
(文=米倉奈津子/ライター)

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