同僚へのメールの語尾に"ござる"で解雇!? 入社2カ月での理不尽減給に抵抗した社員を解雇したその驚愕の理由

リテラ

2018/1/11 21:00


 賃金減額、解雇の話をするでござる。最近担当した事件の中では、もっとも「トンデモ事件」だと思うでござる。

読者の皆さんは「この弁護士はふざけてるのか!『ござる』『ござる』言って!」とお怒りかもしれない。別にふざけていない。ご紹介する事件は、同僚に送ったメールの語尾に「ござる」と付たことが解雇理由の一つにされていたのでござる。

Aさんからの最初の相談は、賃金を減額されたことだった。Aさんは、とあるベンチャー企業Z社に月給30万円で入社したが、与えられた仕事ができていないとして、入社2カ月にして仕事を変えられ、月給も20万円に減額されたという。2カ月は早すぎる。......まぁ、早さはともかくとして、賃金を減額するには原則として労働者の同意が必要となる。同意がなければ、就業規則などの根拠が必要であり、その就業規則の内容も合理的なものでなければならない(たとえば、使用者が自由に減額できたり、大幅な減額をしたりすることを定めてもダメだ)。

Aさんから就業規則を見せてもらったが、特に賃金を減額する根拠は見当たらない。では、Aさんは「同意」したのか。Aさんの話によれば、賃金減額の話をされたとき、「分かりました」と答えたそうだ。......微妙である。Aさんとしては、「会社の考えは分かった」という趣旨だったそうだが、賃金減額に同意したとされる可能性もある。しかし、労働事件を扱う私たちの界隈では、ある大事な考え方がスタンダードとなっている。それは、労働条件を不利益に変更する際の労働者の同意については、その同意が労働者の自由な意思に基づいてされたであろう合理的な理由が客観的になければならない、という考えだ。不利益の内容や使用者の説明などからして、労働者がしっかりと不利益を理解したうえで同意したといえるのか厳しく判断する。労働者は使用者より弱い立場に置かれており、使用者からの不利益な提案を拒否するのは大変なことだ。そういう実態からすれば当然の考えである。Aさんの件も、よくよく考えると、2カ月しか働いていないのに10万円の大幅な減額である。そんなのに普通は同意しない。しかし、入社したばかりのAさんは、職を失うのが怖くてはっきり拒否できなかった。Z社はそこにつけこんだ。そんな賃金減額は認められない。私からのアドバイスを受けたAさんは、それから毎月、Z社に対して減額分の賃金を請求する内容証明郵便を送り続けた。

しかし、Z社は、減額分の賃金を支払わない。支払わないどころか、入社から半年も経っていないのに、なんと退職勧奨を始めた。早すぎる。話を聞いても、退職する理由などない。私は、Aさんに絶対に退職勧奨に応じてはダメだとアドバイスをして、Aさんも頑張った。

すると、Z社は入社して7カ月程度のAさんを解雇した。......早すぎる。......この会社は何でも早すぎる。解雇通知には「能力が不足しているため」としか書かれていない。私は、Aさんに、解雇理由について、具体的事実を示して明らかにするように解雇理由証明書の交付を請求するようにアドバイスした。しかし、Z社から示された解雇理由は「能力が不良で就業に適さない」「協調性を欠くことにより業務に支障がでている」という抽象的なものだった。よくあることである。このような会社は、裁判や労働審判になってから、解雇理由を具体的に出し始める。本当はそのような後出しジャンケンのようなことは許されるべきではないが、裁判所はなぜか許している(もっとも、訴訟などになってから出し始めても説得力がないことも多い)。

とにもかくにも、Aさんは、賃金減額と解雇は無効であるとして、裁判所に訴えた。Z社から答弁書が出された。「後出し」の解雇理由を見る。予想したとおり、抽象的な「能力不足」が書かれている。しかし、ひときわ輝く(?)解雇理由があった。「他の同僚に対し、語尾に『ござる』をつけたメールを送信して困惑させた」というものである。「え、同僚に『ござる』を使ったら解雇?」。こちらが困惑した。瞬間、私はこの事件を「ござる解雇事件」と名付けた。別にふざけているわけではない。そんな理由しかあげられない酷い解雇であることの象徴である。Aさんが賃金減額にもめげず、会社に「はむかってくる」ことへの報復ではないか、そんなふうに推測した。

訴訟のなかでZ社は、「ござる」をはじめとしてAさんにコミュニケーション力がないことを取り上げてきた。顧客でなく同僚に対するメールで「ござる」を語尾につけるのが、なぜコミュニケーション力がないことになるのか、なぜ「業務に支障が出る」のか全く分からない。嫌だったら、「『ござる』は付けないでください」と言えばいい。私なんて、同僚に対するメールで語尾に「~でやんす」とか普通に使う。もちろん「ござる」もだ。こんなのを解雇理由にすることに、ショックを受けた。むしろ、こんなので解雇するほうが、コミュニケーション力がない。実際、Z社の経営者は、Aさんに対してパワーハラスメントを行っており、Z社の経営陣のほうにコミュニケーション力がないことが明らかになった。

訴訟では尋問も行った。Z社はAさんを辞めさせたいという目的ばかりが先行して、解雇理由はその後付けに過ぎないことが浮き彫りとなった。私は、経営者に対する尋問の最後に「こんな解雇してはダメでござるよ!」と言っておこうと思ったが、裁判官が経営陣を十分にしかりつけたのでやめにした。

訴訟は和解で終わった。賃金減額も解雇も認められないことを前提に、未払い分の賃金全額に加えて、○年分の賃金を支払うという内容だった。やっぱり言わせて欲しい。こんな解雇してはダメでござるよ。

【関連条文】
賃金減額について 労働基準法24条 労働契約法8条
解雇について 労働契約法16条

(竹村和也/東京南部法律事務所 http://nanbu-law.gr.jp)

********************
■ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

あなたにおすすめ